グラスウール

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グラスウール断熱材

グラスウール (glasswool) とは、ガラス繊維でできた、綿状の素材である。住宅の壁・天井・床・屋根の断熱材として広く用いられるほか、工場・体育館の断熱材としても用いられる。吸音材としても機械室の内装吸音用や防音室の素材として用いられている。さらに空調ダクトや配管保温用などにも用いられる。不燃材料なので防火性にも優れている。


特徴

  • 断熱性能あたりのコストパフォーマンスに優れる。
  • 切断・曲げなど、自由に加工することができる。
  • 厚さ・サイズが豊富である。住宅用の厚さは、壁用で 50 mm・89 mm・100 mm・105mm・140mm などがあり、床用で 42 mm・80 mm ・120mmなどがある。サイズは、壁用で 395 mm・430 mm幅などがあり、床用で 263 mm×1820 mm・415×1820 mm・820×1820 mm などがある。その他に、天井用等で、ロール状に巻かれている長物もある。
  • 密度も豊富である。住宅用の密度は 10 kg/m3・16 kg/m3・24 kg/m3・32 kg/m3 などがある。このほかに細繊維でできた高性能グラスウールシリーズがある。
  • 建築時の雨漏れ等の場合、水を含むと一時的に変形するが、その後乾燥すれば形状と体積はほぼ回復し、断熱性能・吸音性能は概ね低下することはない。最近では、床用断熱材として発泡系断熱材を使用すると建築中に床合板が雨濡れした場合、合板と断熱材の間で水分が長期間保持され蒸れることにより、合板のカビ・腐朽等の発生につながることが嫌われ、透湿性・乾燥性の良い撥水性グラスウールが好まれる方向にある。
  • 住宅用のパッケージとしては、袋入りのものと裸のものがある。裸のものは、室内の湿気が壁の中に入り込むのを防ぐために、防湿気密シートを貼る必要がある。袋入りのものは、袋の室内側が防湿層になっているので、袋の耳を柱・間柱や枠組みの見付け面にステープルで正しく留めることにより、室内の湿気が壁の中に入り込むのを防ぐことができる。なお海外では袋入りのものは流通していない[1]
  • 断熱材はすべての素材共通で、隙間の出来ない正しい施工方法を遵守することが大事である。このため正しい施工方法を習得していただくための施工マニュアルが作成され、マイスター制度によりその普及に努めている。
  • 吸音効果がある。このため、断熱以外の目的で、住宅の階床充填等に使われたり、病室ホテルの個室・放送室スタジオの壁に使われる。また新幹線や高速道路の防音壁に使われている。

防火性能

  • 国土交通省告示「平12建告第1400号」で不燃材料として示され、避難上有害な煙・ガスを発生させないことが特徴である。外装材の内側に使われ防火・耐火に貢献している。
  • 不燃材料として、国土交通大臣から認可されている。

製法

建築物や自動車に使われていたガラス、ビンガラス、ブラウン管、蛍光灯などの廃ガラスが主な原料で、溶かしたガラスを遠心法で綿状とする。このときの状態は白色であるが、その後バインダーとしてフェノール樹脂等を添加して、板状・ロール状などに成形したものが製品となっている。

遠心法

スピナーと呼ばれる、側壁に小さな穴があいた容器を高速回転させ、上から溶かした原料を入れ、遠心力で側壁の穴から吹き出させた繊維を集めて作る製法(綿菓子の製法とほぼ同じ)。繊維径はおおむね 3〜9 μm。現在、すべての断熱材・保温保冷材・吸音材がこの方法で製造される。

安全性

  • グラスウールは、人造鉱物繊維であるので、労働安全衛生法第57条の2(文書等の発行いわゆるMSDS(製品安全データシート)の発行)の対象物質である。粘膜や皮膚への刺激症状が出やすい人は保護具などを装着して取り扱うことが勧められる。
  • ガラス繊維を集めて製品として成形する際に、バインダーや撥水剤が使用される。このため炎にかざすと若干の煙や臭いがでる。しかし断熱材としてグラスウールを使用した家が火災になった場合、不燃材のため避難上有害な煙・ガスを発生させない、また避難の時間を延長し助けとなる。工場などの高熱部分に施工する際、180度以上に過熱される部位については、初期に煙が発生する場合があるので、初期の熱入れのときにはこのことを理解しておくことが望ましい。工業用の高熱用のグラスウールにはノンバインダー製品が使用される。
  • ホルムアルデヒドの放散の区分では、F☆☆☆☆である。
  • WHO(世界保健機関)傘下のIARC(国際がん研究機関)による発がん性分類では、第3群「ヒトに対して発がん性に分類されない」である。ただし、グラスウールの一種で特に細かい形状のマイクログラスウール[2]は、「ヒトに対してがん原性となる可能性がある」とされ、依然「第2B群」に分類されている[3]

廃棄方法

廃棄物として発生したグラスウールは、グラスウール単体に分別された場合は、環境省の「広域認定制度」によりリサイクルできる。分別されていない場合は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく「ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず」に該当し、安定型産業廃棄物として適切に処理することが必要で、埋め立て等によって処分される。

グラスウールを製造している国内企業

脚注

  1. ^ グラスウール”. 2015年12月11日閲覧。
  2. ^ マイクログラスウールは,主にフィルタに用いられる細かいガラス繊維を指す
  3. ^ 森本,「人造鉱物繊維の発がん性について─国際がん研究機関(IARC)の報告─」,『産業医学ジャーナル』,Vol.3,No.3,2002年

関連項目