TEMPO

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TEMPO
TEMPO の構造式
IUPAC名 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル
分子式 C9H18NO
分子量 156.25
CAS登録番号 [2564-83-2]
形状 茶褐色固体
融点 36—38 °C

有機化合物TEMPO とは、ニトロキシルラジカル (R2N-O•) の一種、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル (2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl) の略称である。安定な有機フリーラジカルの代表例であり、試薬として市販されている[1][2]有機合成において、再酸化剤とともに酸化反応の触媒として用いられる。また、ラジカル捕捉剤として、反応系中のラジカル発生を探知するプローブとなる。一般に「テンポ」と読まれる。


TEMPO は1960年、Lebelev と Kazarnowskii により開発された。彼らは 2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを酸化し、TEMPO を得た[3]

TEMPO は有機合成において、1級アルコールアルデヒドに変える酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムとともに用いられる。

\rm R'CH_2OH + NaClO + TEMPO (catalyst) \longrightarrow R'CHO

ヒドロキシ基を酸化する真の活性種は、TEMPO が次亜塩素酸で酸化されて発生する N-オキソアンモニウムカチオン (R2N+=O) である。触媒サイクルの中では、N-オキソアンモニウムカチオンがアルコールを酸化しながら自分は TEMPO に戻り、再び次亜塩素酸により N-オキソアンモニウムカチオンとされる。すなわちこのサイクルで、次亜塩素酸ナトリウムは犠牲試薬、再酸化剤としてはたらいている。

この反応の例として、(S)-(−)-2-メチル-1-ブタノールの酸化による (S)-(+)-2-メチル-1-ブタナールの合成を挙げる[4]


次亜塩素酸ナトリウムに加えて亜塩素酸ナトリウムも共存させ、1級アルコールをカルボン酸とする手法も知られる。

\rm R'CH_2OH + NaClO + NaClO_2 + TEMPO (catalyst) \longrightarrow R'CO_2H

4'-メトキシフェネチルアルコールを 4'-メトキシフェニル酢酸へと酸化する例を挙げる[5]


TEMPO酸化は 1級アルコールに特異的に作用する。基質が 2級アルコールの部位を持っていてもそこへは影響を与えない。

再酸化剤を使うと副反応が起こる場合では、化学当量の TEMPO をあらかじめ系中で N-オキソアンモニウムに変換しておき、そこへ基質を加えて酸化させる。例として、TEMPO の 4-アセトアミド置換体を用いたゲラニオールからゲラニアールへの酸化を挙げる[6]

参考文献[編集]

  1. ^ Barriga, S. Synlett 2001, 563. DOI: 10.1055/s-2001-12332
  2. ^ Zanocco, A. L.; Canetem, A.; Melendez, M. X. Bol. Soc. Chil. Quím. 2000, 45, 123-129. オンライン版
  3. ^ Lebelev, O. L.; Kazarnovskii, S. N. Zhur. Obshch. Khim. 1960, 30, 1631.
  4. ^ Anelli, P. L.; Montanari, F.; Quici, S. Org. Synth. Coll. Vol. 8, p. 367; Vol. 69, p. 212. オンライン版
  5. ^ Zhao, M. M.; Li, J.; Mano, E.; Song, Z. J.; Tschaen, D. M. Org. Synth. Vol. 81, p. 195. オンライン版
  6. ^ Bobbitt, J. M.; Merbouh, N. Org. Synth., Vol. 82, p. 80. オンライン版