種類株式

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種類株式(しゅるいかぶしき)とは、株式会社が、剰余金の配当その他の権利の内容(会社法第108条1項各号参照)が異なる2種類以上の株式を発行した場合、その各株式をいう。普通株式以外のものを指すこともある。

会社法上で、「種類株式」という用語自体は用いられておらず、したがって、その定義もない。もっとも、2条13号は「種類株式発行会社」について、「剰余金の配当その他の108条1項各号に掲げる事項について内容の異なる2以上の種類の株式を発行する株式会社」と定義しており、ここから上記のような定義で用いられる。

  • 会社法は、以下で条数のみ記載する。

実務上の種類株式の呼称例[編集]

以下は実務で使われる種類株式の呼称例である。しかし会社法の制定に伴い、法律上はそのような呼称がなくなったものもある。

  • 多数議決権株式
    議決権につき優先的地位を認められている株式で優先株式の一種である。一般的には、常時または一定時に他種の株式よりも多数の議決権が与えられる。これは、第一次大戦後のドイツにおいて、外資資本による支配から企業を守るために考案されたが、現在では、ドイツでもこの制度は禁止されており、日本でも公開会社では認められていない(議決権株ともいう)。フランス、アメリカなどでは公開会社においても認められている。
  • 功労株
    株式会社の設立・発展などに功績のあった者に対して発行される株式。
  • 普通株式
    剰余金及び残余財産の配当(配分)に関して標準的な地位が与えられた株式。実務上での詳細は優先株式の項を参照。会社法上の規制等については、下記の剰余金の配当及び残余財産の分配の規定参照。
  • 混合株式
    剰余金の配当に関しては優先株式であるが、残余財産の分配で(劣後)後配株式であるような、ある規定に対しては他の株式よりも優越し、別の規定に関しては他の株式よりも劣後するような株式を混合株式と呼ぶ。旧商法下と同様に,法定の手続を踏む事で発行する事ができる。
  • 償還株式
    旧商法下で用いられていた分類で、会社や株主の請求など特定の事由が起こる事を条件に会社が株式と現金を交換する旨の規定のある株式。会社法では取得条項及び取得請求権規定に吸収。会社法での解釈では、償還株式は「取得請求権付株式または取得条項付株式で取得対価を現金と定めたもの」となる。
  • 転換予約権付株式(転換株式)
    旧商法下にあった分類で、株主の請求で、当該株式を会社の発行する別種の株式と交換できる旨の規定がある株式。会社法で#取得請求権規定(5号)に吸収された。会社法での解釈では、転換予約権付株式は「取得請求権付株式で取得対価を当該会社の発行する他の種類株式と定めたもの」となる。
  • 強制転換条項付株式
    旧商法下にあった分類で、会社の都合で、当該株式を会社の発行する別種の株式と交換できる旨の規定がある株式。会社法では取得条項の規定に吸収された。会社法での解釈では、転換予約権付株式は「取得請求権付株式で定款で取得事由を株主の取得対価を当該会社の発行する他の種類株式に定めたもの」となる。強制転換条項付株式(今の取得条項付株式)は企業防衛の見地から効果があるとされ導入された。
  • 議決権制限株式(108条1項3号)
    下記の#議決権制限規定(3号)を参照。
    • 全部議決権制限株式(無議決権株式)
    • 一部議決権制限株式
  • 全部取得条項付株式(108条1項7号)
    会社が株主総会決議に基づいてその全部を取得できる旨の定めのある株式をいう。スクイーズアウト(少数株主の追い出し)において用いられることが多い。
  • 新株予約権付株式
    会社に新株を発行させる、または会社の自己株式を移転させる権利付きの株式の事。新株予約権付株式は、従来認められていなかったが、新株引受に関する規定が緩和され、平成14年の商法改正以後この名で導入された。詳しくは新株予約権の項を参照。会社法上、新株予約権を株式と一体のものとして発行することはできず、同時に双方を発行することができるに留まる。

種類株式の内容の具体例[編集]

株式に付与することのできる権利の内容は、108条1項各号に掲げる事項で法律によって限定的に定められているが、掲げられた事項を自由に組み合わせて、その会社独自の種類株式を発行する事が出来る。
しかし、108条1項9号、いわゆる役員選任権規定だけは、委員会設置会社及び公開会社はその株式に付す事が出来ない様になっている。以下の見出しは108条1項各号の条文の順に記載している。

剰余金の配当規定(1号)[編集]

株式に付される規定の一種で剰余金の配当に関する地位の優劣を定めたもの。詳しくは優先株式の項を参照。この規定により、配当において他の株式より優越的な地位が認められる株式が、いわゆる優先株式と呼ばれる。ちなみに、標準的な地位に置かれるものが普通株式、劣後的な地位に置かれるものを劣後(後配)株式と呼ばれる。

残余財産の分配規定(2号)[編集]

株式に付される規定の一種で、会社の清算をした後、残った残余財産の分配に関する地位の優劣を定めたもの。これに関しても、優先株式や劣後株式と呼ばれる為、何に対して優先又は劣後なのか注意が必要である。

運用の一例として、「残余財産の分配に関し、当該株式の払込金相当額を限度として普通株式に優先する」と定めることが考えられる。これにより当該種類株主は投下資本の回収をより確実にすることが可能になる。

議決権制限規定(3号)[編集]

株式に付される規定の一種で株主総会での議決権の、全部又は一部を制限する事を内容とするもの。無議決権株式も可能であるが、その場合でも、その株主は種類株主総会では議決権を行使する事が出来ると解されている。通常は、配当に対して優先株式である事の代償として、議決権制限がつけられる。こうする事で、株式の流通性を高めると同時に、買収防衛策にもなるからである。

ちなみに公開会社においては議決権制限株式が発行済株式総数の二分の一を超えたとき直ちに発行済株式総数の二分の一以下にする措置を取らなければならないとされている(115条)。しかし非公開会社においては、旧有限会社と同一視する傾向から、このような規制はなされていない。

譲渡制限規定(4号)[編集]

譲渡に関してその会社の承認が必要である旨を一部の株式について定める規定(108条1項)。

会社法制定以前までは株式の種類とは位置づけられていなかったが、会社法から種類の株式と位置づけられた。今まで、種類の株式に譲渡制限をつける事ができるか否かは疑義があったがこれにより、株式の一部に譲渡制限をつける事ができる事が明らかとなった。なお、非公開会社では元々強固な信頼関係で株主同士が結び付いているものとされる為、議決権制限株式の発行枠は撤廃された。これは、旧有限会社と非公開会社が実質は同じものである事から、有限会社制度の廃止に伴って有限会社に認められていた制度が、非公開会社に引き継がれたものであると解される。

  • 株主からの承認の請求(136条
  • 株式取得者からの承認の請求(137条)
  • 譲渡の承認をするには、株主総会又は、取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めを設けることが出来る(139条)。
  • 株式会社又は指定買取人による買取り(140条)
  • 指定買取人による買取りの通知(142条
  • 売買価格の決定(144条)
  • 相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め(174条)

取得請求権規定(5号)[編集]

全部の株式の内容について付す事の出来る取得請求権とほぼ同じであるが、取得対価として、その会社の別の種類株式を設定できるという部分が異なる。このような取得対価の設定が全部の株式に附す取得請求権規定に設定出来ないのは、取得対価としての「別の種類株式」が観念出来ないからである。ちなみに、取得対価として設定できるものに制限は無いものと解されており、現金、新株予約権社債等様々なものを設定する事が可能である。この規定を株式発行後に設定する場合、定款変更である事から特別決議を要する事になる。また、新株予約権等と異なり、取得請求権のみを他人に譲渡することはできない事とされている。
なお、平成17年商法改正以前の転換予約権付株式や株主の請求で行える償還株式は、取得請求権付株式の一種と言える。

運用の一例として、議決権の制限された優先株式に取得請求権を付し、取得の対価として普通株式を交付すると定めることが考えられる。これにより優先株主は、必要に応じて保有優先株式を(議決権のある)普通株式に転換し、会社経営に参加する、ということも可能になる。

取得条項規定(6号)[編集]

全部の株式の内容について付す事の出来る取得条項とほぼ同じであるが、取得対価として、その会社の別の種類株式を設定できるという部分が異なる。理由は上記の取得請求権と同様である。取得請求権は、取得に関してアクションを起こすのが「株主」であるのに対し、取得条項は、取得についてアクションを起こすのが「会社」である事に注意が必要である。また、前節でも述べた通り、対価の柔軟性が図られている為従来の原則であった金銭以外に、他の株式、社債、新株予約権等も取得対価として交付が可能である。

全部取得条項規定(7号)[編集]

株主総会の決議より、会社がその全部を取得することが出来る定めのある株式である(171条)。

拒否権規定(8号)[編集]

この規定も上記の譲渡制限と同じく従来(会社法以前)は株式の種類とは位置づけられていなかったが、会社法から種類株式の一種とされた。前述の通り、いわゆる黄金株はこの一種とされている。

役員選任権規定(9号)[編集]

株式の株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任する定めのある株式である。委員会設置会社及び公開会社は、発行することができない。

法定種類株主総会の排除既定[編集]

株主総会の決議によって、特定の種類株式の株主にだけ不利益を及ぼす恐れがある場合、会社法は、種類株主総会の決議をも要求する。これを法定種類株主総会という。この法定種類株主総会を開く権利を一定の種類株式だけ定款規定で排除することができる。この規定の有無も、広い意味では種類株式の内容と考えられる。ただし、会社法はこのような法定種類株主総会の排除規定が必ずしも種類株式の内容となるとは考えていない。たとえば、種類株式発行会社がする一定の行為(322条1項2号から13号)が、ある種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類の種類株主総会の決議が必要となるが、この場合の法定種類株主総会を排除する規定を定款に設けることができる。(322条2項) そして、この規定は同条で、「株式の内容」であるとされており、911条3項7号で、「株式の内容」とされているものは登記事項となることから、上記の株式の内容の規定と同様に株式会社の登記簿に登記される。しかし、他の法定種類株主総会を排除する規定(199条4項 200条4項 238条4項 239条4項 164条2項など)は、条文中で「株式の内容」とはされておらず、従って登記もされない。ちなみに、この違いは、ある種類の株主に損害を及ぼす場合の法定種類株主総会を排除する規定のほうが、他の法定種類株主総会の排除既定よりも、株主に強い制限をもたらすものであるためその公示が必要とされることに由来する。また、この趣旨から、322条の定款規定をもってしても、以下の行為(322条1項1号)の際には法定種類株主総会を排除することが出来ない。これらの行為に制限を及ぼすのは種類株主に回復不能な損害を与える可能性があるからである。

  • 322条の法定種類株主総会排除既定をもってしても種類株主総会の決議を排除できないもの
  1. 株式の種類の追加
  2. 株式の内容の変更
  3. 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加

種類株式の設定[編集]

定款に定めないとその効力を有しないため、定款変更が必要となり株主総会で特別決議が必要となる(309条2項)。
しかし、種類株式発行会社が任意の発行済種類株式に新たに別の権利内容の規定を設ける場合は、当該種類株主による種類株主総会特別決議を要し、設定する規定によっては、種類株主総会の特殊決議や該当する種類株主全員の同意が必要になる場合もある。

条文[編集]

会社法108条 異なる種類の株式
1項 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行する事が出来る。但し、委員会設置会社及び公開会社は、第9号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行する事が出来ない。
1号 剰余金の配当
2号 残余財産の分配
3号 株主総会において議決権を行使する事が出来る事項
4号 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する事
5号 当該種類の株式について、株主が当該会社に対してその取得を請求する事ができる事
6号 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じた事を条件としてこれを取得する事が出来る事
7号 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得する事
8号 株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議の他、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がある事を必要とするもの
9号 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること


2項 株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
1号 剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容
2号 残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容
3号 株主総会において議決権を行使することができる事項 次に掲げる事項
イ 株主総会において議決権を行使することができる事項
ロ 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件
4号 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項
5号 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項
イ 当該種類の株式についての前条第二項第二号に定める事項
ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
6号 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項
イ 当該種類の株式についての前条第二項第三号に定める事項
ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
7号 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること 次に掲げる事項
イ 第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の価額の決定の方法
ロ 当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件
8号 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 次に掲げる事項
イ 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項
ロ 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件
9号 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること 次に掲げる事項
イ 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数
ロ イの定めにより選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数
ハ イ又はロに掲げる事項を変更する条件があるときは、その条件及びその条件が成就した場合における変更後のイ又はロに掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、法務省令で定める事項
3項 前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。
条文上では漢字になっている箇所あり。8号の括弧書きは省略。

種類株式の評価[編集]

中嶋克久野口真人棟田裕幸共著「種類株式・新株予約権の活用法と会計・税務」(中央経済社)では、市場価格がある種類株式は、市場価格で評価し、市場価格のない種類株式は金融工学を利用した評価モデルによる評価方法を原則すると書かれている。また、例として、普通株式転換オプションがついたプレーンバニラの優先株式(議決権に制限あり、普通株式より配当順位が優先)の評価については、議決権を経済価値とみなして評価するのは実務上困難であり、普通株式普通株式オプションの価値を加算したものとなると記されている。

参考文献[編集]

関連項目[編集]