東京大学アタカマ天文台

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東京大学アタカマ天文台(とうきょうだいがくアタカマてんもんだい、Tokyo-Atacama Observatory Project)とは、口径6.5m光学式光赤外線望遠鏡を南米チリ共和国北部アタカマ砂漠チャナントール山山頂に建設する計画のこと。略称はTAO計画。世界最高地点の天文台でギネス世界記録になった。

概要[編集]

ダークエネルギー銀河惑星系の起源などの解明を目的とし、東京大学天文学教育研究センター国立天文台などの協力を基に進めている。2007年11月現在、口径1m光学式反射天体望遠鏡が完成に向かいつつある。

口径1m光学式赤外線望遠鏡によって、全天の赤外線探査を行う。同時に、地元の協力を得ながら周辺の整備を行い、最終的には口径6.5m反射式赤外線望遠鏡を設置する予定。機材によっては、国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡で用いられた観測機器を整備しなおすなどによって活用する予定。

計画全体のマスタープラン[編集]

  • 赤外線観測に特化した天体観測所として、1m口径の自動制御型天体望遠鏡を設置。
  • 可視光・赤外線観測を行う天体観測所として、6.5m口径の常駐型天体望遠鏡を設置する計画。
  • 精密電波観測を行う天体観測所として、VST-2及び、その後継機にあたる電波望遠鏡を設置する予定。

付記)6.5m口径となると、チャナントール山周辺の集落内に管理事務所を設置し、現地スタッフ、本学スタッフからなる合同チームによって、運用を行う必要があるため、これについても検討を進めている。特に、光学観測にしても、電波観測にしても補修・保守・点検などの作業は重要であり、天文台という天体観測拠点を開設するための準備計画として1m口径の占有型望遠鏡を設置する事になった。これによって成果を挙げることで、寄附や投資を募り、将来の天体観測所としての機能を目指している(最終目標は、天文学教育研究センターを国際共同利用研究所とすることである。なお、既に宇宙線研究所は数物連携宇宙研究機構などの設置により国際共同利用研究所を目指している)。

現在の状況[編集]

現在までにシーイング(望遠鏡の視界の揺らぎ評価)を行ない、中央値0.6秒角台の値を得た。この値は、国立天文台で実施したマウナケア山頂のシーイング評価値とほぼ同じ値である。よって、光学式天体望遠鏡の設置にも適した箇所である。

2007年春より、地元の協力を得てチャナントール山へアクセス道路の整備を開始し、望遠鏡の設置の準備を進めている。

今後の予定[編集]

  • 2007年10月現在、マグナム望遠鏡に近い形で、口径1m反射式赤外線望遠鏡が完成に向かいつつある。
  • 2008年夏頃、この望遠鏡を、海路にてチリの同地に運搬。
  • 2008年度中、ファーストライトを目指す。
  • 2009年5月5日、開所式を予定していたが、新型インフルエンザの影響により延期された。
    • 搭載機器は、中間赤外線分光器となる予定(精密分光観測によって、銀河誕生の謎を解明することが目的)。
    • 口径が小さいため、カセグレイン焦点系のみの使用予定。

仕様[編集]

以下は、1m反射式赤外線望遠鏡の仕様である。

  • 光学系 :リッチークレチアン型反射式赤外線望遠鏡
  • 有効口径:1000mm
  • 鏡材質 :低膨張ガラスULE
  • 副鏡口径:100mm
  • 焦点距離:2000mm(F2.0)
  • 合成焦点:120000mm(F12.0)
  • 焦点系 :カセグレイン焦点
  • 観測波長:近赤外線~可視光(特に重視しているのがK-Band)
  • 架台  :経緯台式
  • 駆動  :フリクションドライブ
  • 制御  :自動制御
  • 観測機器:冷却中間赤外線分光計

用語解説[編集]

付記として、冷却中間赤外線分光計とは、ハイレンジ(広い波長)の赤外線のスペクトルを撮影する装置。それに対して、高分散分光計は、精密なスペクトルを撮影する装置。低分散分光計は、望遠鏡が捉えた天体の光のスペクトルを全て撮影する装置。

今後の計画[編集]

口径1m光学赤外線天体望遠鏡のファーストライト後、運用を行いながら、更に周辺の整備を行い、将来設置計画の大型望遠鏡の開発と同時に進める計画である。

  • 現在の時点では、2013年頃を目処にして、口径6.5m反射式赤外線天体望遠鏡の設置を予定している。

なお、口径6.5m反射式赤外線望遠鏡に関しては、国立天文台と共同開発を進めている超軽量鏡を用いて、すばる望遠鏡等で培ったAO(最適光学系)によって、軽量かつ精度の高い光学系並びに観測装置を整備し搭載する予定である。

以下は、基本仕様(計画中)[編集]

  • 光学系 :リッチークレチアン型反射式天体望遠鏡
  • 有効口径:6.5m
  • 鏡材質 :薄型低膨張ガラス
  • 鏡面支持:多点支持補償光学駆動
  • 観測補助:リアルタイム補償光学制御
  • 焦点系 :4箇所
    • 主焦点系、ナスミス焦点2箇所、カセグレイン焦点
  • 主焦点 :F2.0程度(これまでの試験による技術限界)
  • 合成焦点:F12.0程度
  • 架台  :経緯台式
  • 制御  :自動制御
  • 観測装置:以下に記載

主焦点カメラ、高分散分光計、中間赤外線分光計、コロナグラフ撮像装置など。

  • 以下、技術説明

主焦点系のF値が高いのは、薄型低膨張ガラスを用いた軽量鏡(裏面にハニカム構造で、更に薄いため、超軽量鏡)を用いるため、F値を低くしすぎると、裏面のハニカム構造が表面に影響を与えるためである。このハニカム構造を構成する六角形の各頂点に多点支持補償光学駆動装置を取り付け、鏡面を双曲面に保つことで、天体望遠鏡の光学系の精度を保つ仕組みになる予定。 すばる望遠鏡の場合には、ガラスをハニカム構造の裏面を持つ形では製造できなかった(正確には、パロマー山天文台の5m望遠鏡で苦労しているが、現在の技術「ガラス鋳型の保温・緩慢冷却」ができなかったため)ため、ハニカム構造の鏡ではない。なお、アリゾナ大学では、すばる望遠鏡開発の頃、実施されており、その技術協力により可能になった。

関連項目[編集]

推進組織[編集]

技術指導など[編集]

設備[編集]

先行研究[編集]

関連観測装置[編集]

設置場所[編集]

研究分野[編集]

外部リンク[編集]