平炉

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平炉(へいろ、Open Hearth furnace, OH)とは、蓄熱室を有する反射炉の一種の平型炉で、主に精錬に用いられる。蓄熱炉とも呼ばれるが、蓄熱室を蓄熱炉と呼ぶこともあるため注意を要する。

原料としては銑鉄と鉄スクラップを用い、酸化剤として鉄鉱石を用いる。脱リンが容易であり、良質な鋼を得ることができたことから、長い間製鋼法の主流であったが、転炉電気炉の発展により、現在では東欧などで生産が見られるだけである。

シーメンス兄弟による平炉の設計図

1856年カール・ウィルヘルム・シーメンスフレデリック・シーメンスのシーメンス兄弟により炉の構造が発明され、ピエール・ マルタンエミール・マルタンのマルタン父子により製鋼法が確立したことから、平炉による製鋼法はシーメンス・マルタン法と呼ばれている。製鋼法としてはシーメンス兄弟は銑鉄(銑鉄・鉱石法)を、マルタン父子は銑鉄に多量のくず鉄を加えたものを原料として用いているだけであり、相違はほとんどない。

概要[編集]

製鋼用平炉は蓄熱室上に平型の溶解室がある構造をしている。蓄熱室では加熱空気で燃料を燃焼させ、その排気を炉の全体に回して溶解室中の原料を溶解するようになっている。

平炉精錬の大きな役割は原料中の炭素の希釈・除去である。高炉では還元剤としてコークスおよびコークスを燃焼して作る一酸化炭素が用いられるため、銑鉄中の炭素濃度は高く4%近くにも達し、硬いが脆い。これを炭素濃度の低い鉄スクラップで希釈、あるいは、平炉排気ガスで炭素を燃焼させることによって、粘りのあるを得ることができる。

また、平炉精錬のもうひとつの大きな役割として不純物除去が挙げられる。鋼中の不純物の存在は延性や耐食性といった鋼の性能を低下させる原因となる。平炉精錬において、ケイ素リンマンガンといった不純物元素と酸化剤中の酸素が反応して酸化物スラグを形成することで、不純物元素を鋼中から除去することができる。

従来、転炉や電気炉が用いられなかったのは、可動である炉体に耐衝撃性に劣るアルカリ性耐火物を利用できなかったためである。そのため酸性の耐火物が使われたが、酸性耐火物では脱燐に必要なアルカリ性スラグと反応してしまう。一方、平炉には可動部がないため容易にアルカリ性耐火物を用いることができた。

しかしながら、転炉用のアルカリ性耐火物の実用化、第二次世界大戦後の製鋼時間の短い電気炉の普及、エネルギー効率の良い純酸素上吹転炉(BOF)の発展により、平炉による鉄の精錬はごく一部で行われるだけである。

関連項目[編集]