内田美術書肆

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内田美術書肆(うちだびじゅつしょし)とは、大正時代から昭和時代戦前京都市で営業していた出版社新版画版元である。

概要[編集]

創業者は内田基一といい、大正8年(1919年)に京都市上京区竹屋町間之町東入ルに「内田美術書肆」という美術専門店を開店したのが始まりで、創業当初は主に他社の美術図書を販売していた。その後、徐々に自社による出版に着手していったようである。大正12年(1923年)頃から、最初に志していた美術書出版にいよいよ進出、その世界において独自の境地を開拓した。大正13年(1924年)、書籍雑誌商組合の定期総会にて常設調査委員(書籍雑誌商組合規約実行有無)に就任した。そして、昭和2年(1927年)から昭和3年(1928年)には短期間ではあったが、幹事(理事)に就任、書籍雑誌商組合行政に関与した。昭和2年(1927年)11月には牧寿雄木版画による冊子『新希臘派模様』(町田市立国際版画美術館所蔵)を出版する。また、長らく古書組合の幹事も兼ねていた。昭和6年(1931年)に徳力富吉郎亀井藤兵衛浅野竹二麻田弁自による木版画集『創作版画花尽』を出版する。昭和8年(1933年)頃、竹屋町高倉東へ移転する。しかし、次第に緊迫していく戦時下では、「美術書」の出版販売は不可能であることを知り、昭和19年(1944年)3月、折からの企業整備を契機に廃業脱退している。

戦後直ちに丸太町通河原町西入ルにおいて「内田アート(株)」と社名を改めて事業を再開した。

出版物[編集]

  • 『きじゃく』 松村翠鳳
  • 『連続模様千種』 内田基一
  • 『模様雛形都の春 乾、坤』 モトカヅ文様研究部編 1925年
  • 『草華図案 完』 モトカヅ文様研究部編 1926年 ※彩色木版全30図
  • 『割附ト更紗 上』 モトカヅ文様研究部編 1926年 国立国会図書館所蔵
  • 『かつとト輪廓』 モトカヅ文様研究部編 1926年 国立国会図書館所蔵
  • 『紫葉第1』 紫葉会編
  • 『試作図案第1』 大原松雲編

参考文献[編集]

  • 『出版文化の源流 京都書肆変遷史』 京都府書店商業組合、1994年 ※59頁
  • 町田市立国際版画美術館編 『浮世絵モダーン 深水・五葉・巴水…伝統木版画の隆盛』 町田市立国際版画美術館、2005年
  • 大久保久雄 『出版・書籍商人物情報大観-昭和初期』 金沢文圃閣、2008年