作話
作話(さくわ)は、記憶障害の一種である。過去の出来事・事情・現在の状況についての誤った記憶に基づく発言や行動が認められる点が特徴的である。作話は、「正直な嘘」と呼ぶべきものであり、通常は本人は騙すつもりは全く無く、自分の情報が誤りであるとは気がついていないので、この点で嘘とは区別される。
概要 [編集]
作話とは、宣言的記憶の欠如した記憶を、その他の記憶や周囲の情報で埋め合わせようとした際に、文脈を取り違え、覚えていないことを覚えているような感覚になり間違った事を話してしまう心理現象である。概念的には健忘の対極にある現象。軽度のものは、いわゆる「記憶違い」と呼ばれる。コルサコフ症候群の患者などに見られる。
記憶というものは、保持された記憶を機能的に文脈を用いることで想起する事が出来るが、記憶に言葉で表現出来ない喪失部分がある場合、その部分を断片的な記憶をもとに埋め合わせようとする。この際に、非随意的に間違った話をしてしまう事がある。記憶の組み立て方の手法がどのようであるかについては議論があるが、喪失した記憶の埋め合わせという面では一致している。
作話症 [編集]
作話症の患者は、見え透いた誤った情報(空想的作話)を提供するのだが、その作話の内容自体は、筋が立ち、内部的には一貫性があり、比較的まともである場合が多い。多くの証拠は作話の内容が真実でないことを証明するのだが、作話をする人は、自分の記憶には自信を持っていることが多い。作話を来たすよく知られた状況は、後天的な脳の障害(例えば、脳動脈瘤や脳浮腫)や、精神的・心理的障害(例えば、統合失調症、双極性障害、アルツハイマー病)である。
通常、二つの異なったタイプの作話症が区別される。すなわち、「自発的作話症」と「誘導された作話症」である。
自発的作話症(一次的作話症)は、何らかのきっかけに反応して作話が行われるのではなく、自発的に無意識的に作話が行われる。自発的作話症は、比較的まれであるが、前頭葉の病変と機能的虚血が相互作用する症例に起きる。また認知症の症例にしばしば起きる。
誘導された作話症(二次的作話症)は、誤った記憶に対する正常な反応であり、健忘症や認知症の場合にしばしば起きる。誘導された作話症は、記憶テストを行うと明瞭になる。
作話症について、発言と行動に着目して分類する方法もある。言語的作話症とは、誤った記憶を話すものであり、頻度が高い。行動的作話症とは、誤った記憶に基づいて行動するものである。
全てのタイプの作話症において、作話の基になる記憶の誤りは、自分に起きた出来事の記憶(自伝的記憶)に起きることが多い。記憶の誤りは、複雑で難解な過程であり、記憶の書き込み・貯蔵・想起のどの段階でも障害が起こり得る。このタイプの作話は、コルサコフ症候群においてよく見られる。
文献 [編集]
- Brain Fiction: Self-deception and the riddle of confabulation Hirstein, William (2005), Brain Fiction, Cambridge, Massachusetts: MIT Press, ISBN 0-262-08338-8
- Models of confabulation: A critical review and a new framework Cognitive Neuropsychology Volume 24, Issue 1, 2007
- Mechanisms of spontaneous confabulations: a strategic retrieval account Brain (2006) 129 (6): 1399-1414.
- Fales memories and confabulation Trends in Cognitive Science Vol.2, No.4, April 1998
- 作話と遠隔記憶 失語症研究 第18巻3号 兼本浩祐ら
- 記憶障害と作話 BRAIN and NERVE 60巻7号 2008年 船山道隆ら
- 作話について Clinician、Vol.33、No.353 原田憲一
- 記憶障害ならびに関連症状(p24、2.4 作話)、原田睦雄、神経心理学の道しるべ 11章