レーザーターンテーブル

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Elp-rme-02.jpg

レーザーターンテーブルレーザー光を従来のダイヤモンド針の代わりにピックアップとして使用するレコードプレーヤーである。 この再生装置はレコードの再生において物理的な接触を無くしたユニークなものである。代わりに集光された光が表面の信号起伏を読み取るので、ビニル製のLP盤を再生した場合、理論上は溝の磨耗によって劣化することはない。但し、ソノシートのようなレーザー光を透過するような素材の再生には適さない。

現在レーザーターンテーブルは大半のレコード (45rpm、33.3rpm LP、78rpm) の再生に対応しており忠実に再生する。非常に高価ではあるがレコードライブラリーや放送局や大規模なコレクションを持つオーディオファンによって収蔵されている古いレコードを再生したりデジタルメディアに移す時等に愛用される[1]

歴史[編集]

レーザーターンテーブルは当時スタンフォード大学院生だったRobert S. Reisによって考案された(彼の修士論文は"光学式ターンテーブル"である)。1983年、Reisとスタンフォードのフェロー技術者であるRobert E. Stoddardはベンチャーキャピタルから7百万ドルを出資してもらいFinial Technologyを設立した。1年後サーボコントロールの専門家であるRobert N. Starkが加わった。

1984年のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー (CES) で実際には作動しないモックアップが展示され特許がまだ付与されていなかったので詳細は秘密で多くが謎であるにもかかわらず多くの来場者の注目を集めた。最初の実働機であるFinial LT-1は2年後に完成して1986年のCESで発表された。試作機は興味深い欠陥があった。それは正確すぎるために通常のレコードプレーヤーであれば針で押しのけてしまうような盤面の埃やごみなどあらゆる粒子を再生した。小売価格は2500ドル(1988年には3786ドルに上昇)が予定され限られた熱心なオーディオファンへの潜在的な市場を対象にした。しかし、コンパクトディスクが発売されたことによりLP盤の市場は縮小し計画は頓挫した(CDプレーヤーの価格帯は当時300ドルだった)。その結果ビニル製レコードの販売は急落し、多くのターンテーブル製造会社が廃業した。Finial社のターンテーブルの生産作業は遅延し、当時はレーザー発光器が安くなかったことから部材が入手難であり、販売の失策と高い開発費用から、結果的に量産化される事はなかった。2000万ドル以上がベンチャーキャピタルによって投資されており、Finialは多くの顧客には高すぎる値段で発売するか大量生産により低価格で景気後退により急激に縮小する市場に参入する事に賭けるか二者択一を迫られていた。

1989年末、Finialの投資家達は最終的に会社を清算して特許を日本のターンテーブル製造会社であるBSRの日本法人であったCTI Japanに売却[2]し、開発を継続した。最終的に1997年にELP LT-1XAとして発売され値段は20500ドルだった(2010年時点では12000ドルから)。ラジオ放送局のようなプロの顧客がビニル製のレコードを全てデジタル化する用途の市場を対象としていた。アメリカ合衆国議会図書館や他の機関では2次元 (IRENE) や3次元スキャナーを機械的な記録から音声情報を回収する為に開発を資金援助していた。それらは一般向けの製品というよりも歴史的な記録を回収する為の受注生産の機械だった。

ELPJ レーザーターンテーブル: 技術仕様[編集]

  • ELPJ レーザーターンテーブルは3方式に対応している。(雑音低減と真空清浄化器具は別)[3]
    • LT-1LRC - US$12,000 - 33, 45 - 7", 10", 12"
    • LT-1XRC - US$15,300 - 33, 45, 78 - 7", 10", 12"
    • LT-2XRC - US$16,400 - 33, 45, 78 - 7", 8", 9", 10", 11", 12"
  • レーザーピックアップは5本のビームを使用する。それぞれのチャンネルの溝の端をなぞる為に2本。それぞれのチャンネルから音声を拾う為に2本(ちょうど追跡ビームの下)5本目は盤面の厚みやうねりによる対策としてレコードの表面をなぞりピックアップの高さを一定に保つ。
  • 溝の上のレーザーの焦点は従来のレコードの針が接触する部分よりも上の部分で通常の擦り傷の深さよりも下なのでたとえ磨り減った盤面でもあたかも新しく再生産されたような状態が得られる。
  • ピックアップの出力はアナログで決してデジタル化されない。
  • レーザーピックアップを使用する事によって物理的磨耗に起因するレコードの劣化、水平方向のトラッキング角エラー、ターンテーブルのうなり、調整の誤差を平準化、溝内部の劣化、チャンネルバランスエラー、ステレオクロストーク、対滑補償、音響フィードバック、スキッピング、溝詰り問題、トラッキング外れ、破損や偏心レコードやカートリッジハムピックアップ等の多くの問題が解消される。
  • レーザーターンテーブルは掃除されていないレコードに対して繊細で盤面に埃などがあると読み取ってしまう。
  • LPがトレイに乗せられて挿入された時ターンテーブルはLPの表面を読みトラックの数を表示する。使用者はどのトラックを順番に再生するか繰りかえすかあたかもCDプレーヤーのように扱える。
  • レーザーダイオードの一般的な寿命は1万時間でダイヤモンド針が500時間でサファイヤ針は50時間である。
  • ELPJのレーザーターンテーブルには回転速度を毎分30から90回転 (+/- 0.1 rpm) の任意の速度で再生できる機種もありサイズは7から12インチ (180から300mm)のどれでもかまわない。
  • レコードは黒でなければならず半透明や透明の盤は再生不可である[4]
  • ELP は2007年度時点で1300台売った[3]

IRENE 計画[編集]

IRENEシステムが物理学者であるCarl Haberによって開発され2006年末に合衆国国会図書館に導入された。2次元カメラで回転するレコードの溝の詳細写真を撮影する。ソフトウェアを使用してデジタル画像から音声を再構築する。IRENEはしばしば記録時大量の雑音を生じるが盤面の擦り傷によって作られたポップスとクリックは除去される。

IRENEは側面の情報だけ(モノラル)しか読まないが3次元スキャナーの計画ではステレオや4チャンネルのレコードやさらに歴史的な溝の縦方向に刻まれた記録も扱えるようになる[5]。IRENEのウェブサイトから詳細を説明したポスターをダウンロードできる。これらは販売目的に開発されたものではない。IRENEは歴史的な音声の記録のコレクションを読み取りの困難の危険性の問題を解決する。光学計測技術を利用してレコード表面のデジタル地図を作成し、破損を修復して仮想の針で再生する。3次元スキャナ計画は同様に3次元の光学的分析を使用する事で盤面のデジタル地図を作成し破損を修復して仮想の針で再生する事により問題を解決する。

脚注[編集]

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  1. ^ Orban, Robert. “"Maintaining Audio Quality in the Broadcast Facility - 2008 Edition"”. 2008年6月25日閲覧。 “PAGE 39 - Production facilities specializing in high-quality transfer of vinyl to digital media should consider supplementing their conventional turntable with an ELP Laser Turntable(9). Instead of playing disks mechanically, this pricey device plays vinyl without mechanical contact to the disk, using laser beams instead.”
  2. ^ 後に社名が変更され現社名であるエルプとなった。
  3. ^ a b "ELP Laser Turntable: Price Information"”. 2010年3月10日閲覧。
  4. ^ レーザーターンテーブル 詳細仕様
  5. ^ IRENE project website

外部リンク[編集]