ルーエリン・セッター

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ルーエリン・セッター(英:Llewellin Setter)は、イギリスイングランド原産のセッター犬種のひとつである。ルヴェリン・セターとも表記される。

その存在はイングリッシュ・セッターと深いかかわりを持つ。

歴史[編集]

犬種誕生から「一時消滅」まで[編集]

19世紀ごろに、パーセル・ルーエリンという人物により作出された。このころのイギリスでは多くのセッター犬種、ポインター犬種が作出されていたが、ルーエリンはその中でも特に優秀な犬種であった。外見よりも猟犬としての能力を重視した繁殖が行われていて、人気を集めていた。主にセッターとして鳥を捜索し、発見すると伏せをして主人に鳥のいる場所を教えるのに使われた。

ルーエリンの誕生後、しばらくしてイギリスのセッター犬種をまとめてひとつの犬種を作るという計画が行われることが決定し、同じく人気の高かったセッター犬種であるラヴァラック・セッター(英:Lavarack Setter)とルーエリン・セッターをベースとして多くのセッター犬種が統括され、新たなセッター犬種が誕生した。これにより一旦、ルーエリンは犬種としての姿を消した。

新犬種へのいざこざ[編集]

新たなセッター犬種の愛好家ははじめ、その犬のことも本種と同じく「ルーエリン・セッター」と呼んでいた。これは旧ルーエリンの愛好家がとても多く、イングリッシュ・セッターには本種のように優秀なセッター犬種になってほしいという願いを込めてつけられた名称であった。しかし、この名称はラヴァラックをはじめとする他の統括されたセッター犬種の愛好家たちの憤慨を買うという結果を招いてしまった。特にラヴァラックの愛好家の批判は強く、その犬をルーエリンと呼ぶことを禁止し、ラヴァラックと呼ぶべきだして一歩も譲らなかった。これによりラヴァラックの愛好家とルーエリンの愛好家は激しく対立してしまい、更に統括されたほかの犬種の愛好家からもさまざまな問題が発生し、新しく生まれた犬種は消滅の危機に陥ってしまった。

しかし、全ての統括された犬種の愛好家が反発や独立を願っていたわけではなく、およそ半数の愛好家は新たなセッター犬種に好意を持ち、この騒動の鎮圧を願っていた。そこで、そう思う愛好家たちの間で話し合いが行われ、ルーエリンやラヴァラックといった名称ではない別の犬種名が考案された。決定した名前はイングリッシュ・セッターで、この名は単に「英国産のセッター」という意味合いを持ち、非常にシンプルで中立的な名前になった。この名前が正式に採 用されるようになると、この争いは押さえ込まれるように収束した。

ルーエリンの再来[編集]

新たなセッター犬種の名前が決定されると、統括されたセッター犬種の愛好家は論争をやめた。ところが、イングリッシュ・セッターがショードッグとして大成し、美化が進んでいくと、かつての狩猟能力が徐々に失われてゆく危険性が危惧された。そこで再びルーエリンの愛好家が結成し、イングリッシュ・セッターの実猟タイプの犬を改良して狩猟能力と実両性を保つための修正が行われ、ルーエリンの復元が行われた。復元されたルーエリンはかつて存在していたものの姿が忠実に再現され、狩猟能力も保つことに成功したが、その姿がイングリッシュ・セッターとあまりにも似ていないことから混乱が生じた。それに関して国際的な話し合いなどが行われた末、結局ルーエリンはFCIに実猟用のイングリッシュ・セッターの変種であるとみなされることになり、独立した固有種ではないと位置づけられるようになった。そのことが決定されると、ルーエリンはだんだん話題に上ることも無くなり、注目されにくくなっていってしまった。

現在[編集]

現在ルーエリンはイングリッシュ・セッターの変種のひとつであるとみなされているが、実猟犬としての人気は今も昔も大差ないと言われている。イギリスだけでなくアメリカドイツ日本などにも輸出が行われ、猟犬として使用されている。

しかし、既出の通りルーエリンは国際的には独立種でないとみなされているため、ルーエリンとは呼ばずに「実猟用のイングリッシュ・セッター」と呼ばれることが多い。実際のところルーエリンと実猟用のイングリッシュ・セッターは別の犬ではあるが、互いに実猟用の犬であることからひっくるめてそう呼ばれることが多いようである。

ルーエリンを犬種として公認しているのは、アメリカンケネルクラブだけである。

特徴[編集]

イングリッシュ・セッターに比べると、より筋肉質で脚も少し太めの犬種である。首や脚、尾も長く、走るのも早い。コートはウエーブがかったロングコートであるが、体の下部の飾り毛は無い。これは美しさよりも実用性を重視した結果得られた特徴で、汚れたりや障害物に引っ掛けたりするのを防ぐためのものである。毛色はホワイトを地としてブラックやブルー、墨色やブラウン、レモンなどのうちのいずれかの斑若しくはブチの入った「ベルトン」と呼ばれる、変わった色である。入っている色によってブルー・ベルトン、レモン・ベルトンなどといった具合に色の呼称が変わる。耳は垂れ耳、尾はサーベル形の垂れ尾。体高60〜65cm、体重25〜32kgの大型犬で、性格は忠実で仕事熱心、狩猟本能も旺盛である。明るく温和で、普段は人懐こく、他の犬や子供に対しても友好的である。落ち着きがあり、しつけの飲み込みや状況判断力もよい。しかし、小動物や鳥類を見つけると本能の引き金を引かれ、猛烈に追いかけたくなる性質を持つため、その点には注意 が必要である。セッティングの仕方を教えておけば、(主人の目の届く範囲であれば)伏せをして静止することが可能である。運動量は多めで、水に飛び込んで泳ぐことも好きである。かかりやすい病気は先天的な聴力関係の疾患で、ブルー・ベルトンの毛色の犬同士の交配はそれにかかった犬やアルビノ犬が生まれる危険性が高まるため、絶対に行ってはいけない。

参考文献[編集]

  • 『デズモンド・モリスの犬種事典』デズモンド・モリス著書、福山英也、大木卓訳 誠文堂新光社、2007年
  • 『日本と世界の愛犬図鑑2010』(辰巳出版)藤原尚太郎編・著

関連項目[編集]