ハイツの法則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハイツの法則の図。横軸は時間、縦軸はLEDパッケージあたりの光出力である(縦軸は対数)。

ハイツの法則 (Haitz's law) は、発光ダイオード (LED) の長年にわたる安定した改良についての観察と予測である。

ある波長の光に対して10年ごとに1ルーメン(放出される有効な光の単位)あたりのコストが10分の1になり、LEDパッケージあたりに発光量が20倍になるという内容である。これはムーアの法則のLEDに対応するものと考えられている[1]。どちらの法則も半導体デバイス製造のプロセス最適化に依存する。

この法則の名前は、アジレント・テクノロジーの科学者であるRoland Haitz (1935–2015)[2]にちなむ。Strategies Unlimitedによる年次会議の最初のものであるStrategies in Light 2000で初めて広く発表された[3]。ルーメンあたりのコストとパッケージあたりの光量の指数関数的増加の予測に加え、発表ではLEDベースの照明の発光効率は2010年に100 lm/W(ワットあたりのルーメン)となり、2020年には200 lm/Wに達するという予測もしている。これは十分な産業資源と政府資源がLED照明の研究に使われた場合あてはまるであろう。照明の電力消費の50%以上(全消費電力量の20%)は200 lm/Wに達することで節約できるだろう。この見通しやその他のLEDの飛び石的な応用(例えば携帯電話のフラッシュやLCDバックライト)によりLEDの研究に大きな投資をもたらしたため、2010年にLEDの効率は実際に100 lm/Wを超えた。もしこの傾向が続くならばLEDは2020年までに最も効率的な光源となるであろう。

連続波長白色光源(5800K色温度で400nmと700nmの間の可視領域に限られる)の理論的な最大値は(離散波長光源の組み合わせで構成されたものとは対照的に)251 lm/Wである[4]。しかし、いくつか非連続波長複合「白色」LEDは300lm/ Wを超える効率を達成している[5][6]

2010年、Cree Inc.は100 lm/Wの効率で1000lm、350 mAで160 lm/W、700 mAで150 lm/WのXM-L LEDを開発し販売した[7]。彼らは350mAで208lmを作り出すプロトタイプの研究開発により200lm/Wの壁を破ったと主張した[8]。 2011年5月、Creeは350 mAで231 lm/Wの効率を持つ別のプロトタイプを発表した[9]。2014年3月には350 mAで303 lm/Wという記録的な有効性を持つ別のプロトタイプを発表した[5]

2017年、フィリップスライティングはハイツの法則で予測する3年前にフィラメント技術を利用して200 lm/Wの効率で消費者向けのLEDライトの提供をドバイで始めた[10]

脚注[編集]

  1. ^ “Haitz's law”. Nature Photonics 1: 23. (2007). doi:10.1038/nphoton.2006.78. http://www.nature.com/nphoton/journal/v1/n1/full/nphoton.2006.78.html. 
  2. ^ Wright, Maury. “In Tribute: Recognizing the life and work of LED pioneer Roland Haitz”. ledsmagazine.com. 2015年8月19日閲覧。
  3. ^ Haitz, R.; Tsao, J. Y. (2011). “Solid-state lighting: 'The case' 10 years after and future prospects”. Phys. Status Solidi A 208: 17–29. doi:10.1002/pssa.201026349. 
  4. ^ Murphy (2011年). “Maximum Efficiency of White Light”. Dept. Physics, UC San Diego. 2011年7月31日閲覧。
  5. ^ a b “Cree First to Break 300 Lumens-per-Watt Barrier”. (2014年3月26日). http://www.cree.com/News-and-Events/Cree-News/Press-Releases/2014/March/300LPW-LED-barrier 2014年5月7日閲覧。 
  6. ^ “White LEDs with super-high luminous efficacy could satisfy all general lighting needs”. https://phys.org/news/2010-08-white-super-high-luminous-efficacy.html 2017年5月15日閲覧。 
  7. ^ “Cree’s New Lighting-Class LEDs Shatter Industry Performance Standards”. (2010年11月10日). オリジナルの2011年9月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110927051559/http://www.cree.com/press/press_detail.asp?i=1289396994146 2011年7月27日閲覧。 
  8. ^ “Cree Breaks 200 Lumen per Watt Efficacy Barrier”. (2010年2月3日). オリジナルの2011年7月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110720122730/http://www.cree.com/press/press_detail.asp?i=1265232091259 2011年7月27日閲覧。 
  9. ^ “Cree 231 Lumen per Watt LED Shatters LED Efficacy Records”. (2011年5月9日). オリジナルの2011年7月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110716211122/http://www.cree.com/press/press_detail.asp?i=1304945651119 2011年7月27日閲覧。 
  10. ^ Dubai Lamp data sheet”. 2018年8月1日閲覧。[リンク切れ]

外部リンク[編集]