グアニジンチオシアン酸塩

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グアニジンチオシアン酸塩
識別情報
CAS登録番号 593-84-0 チェック
PubChem 65046
ChemSpider 58557 チェック
特性
化学式 C2H6N4S
モル質量 118.16 g mol−1
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
EU分類 有害 Xn 環境への危険性 N
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

グアニジンチオシアン酸塩(またはチオシアン酸グアニジニウムイソチオシアン酸グアニジニウムGITC)は、チオシアン酸グアニジン塩である。

タンパク質変性剤(カオトロピック剤)として利用される化合物の一つである。細胞からDNARNAを抽出する際に、核酸保護として機能する[1]

グアニジニウムカチオン[CH6N3]+を含むグアニジン共役酸であるため、グアニジンチオシアネートとも呼ばれる。

用途[編集]

グアニジニウムチオシアネートは、1918年の「スペイン風邪」の原因となったインフルエンザウイルスなどのウイルスの不活性化に利用できることが知られている。

チオシアン酸グアニジニウムは、RNAおよびDNA抽出で細胞およびウイルス粒子を溶解するためにも使用される。溶解作用に加えて、RNase酵素およびDNase酵素の変性によりそれらの活性を妨げる機能もあり、これらの酵素による抽出物の損傷を防止できる。

一般的に使用される方法は、 チオシアン酸グアニジニウム-フェノール-クロロホルム抽出である。ただし、DNAサザンブロット法やRNAノーザンブロット法では、メンブレンへの転写後のゲル電気泳動によりタンパク質とRNA/DNAは分離されるため、フェノールまたはクロロホルムの使用は厳密には必要ない。さらに、これらの方法はプローブを使用してコンジュゲートに結合するため、ペプチドがRNaseまたはDNaseあるいは酵素が再生する場合でない限り、プロセスを通過するペプチドは問題にならない。高温極限環境に生息する生物種が持つ一部の酵素のように、異常な状況下でも安定した状態を保つ酵素については、例外的に利用できない可能性がある[2]

脚注[編集]

  1. ^ The hydration structure of guanidinium and thiocyanate ions: Implications for protein stability in aqueous solution”. 2008年7月7日閲覧。
  2. ^ Shimomura, O; Masugi, T; Johnson, FH; Haneda, Y (March 1978). “Properties and reaction mechanism of the bioluminescence system of the deep-sea shrimp Oplophorus gracilorostris.”. Biochemistry 17: 994–8. doi:10.1021/bi00599a008. PMID 629957.