クネーザーの定理 (組み合わせ論)

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加法的組合せ論におけるクネーザーの定理(Kneser's theorem)は部分集合の加法的性質に関する定理で、整数列のシュニレルマン密度に関するマンの定理(シュニレルマン密度の記事を参照)に対応する定理である。 マルティン・クネーザーによって(整数列の下極限密度に関する定理と共に)1953年から1956年にかけて証明され[1][2][3]、Kempermanによって下のわかりやすい形にまとめられた[4]

定理[編集]

Gアーベル群A, BG の空でない有限部分集合とする。

とおく(この HG部分群である)。 ならば

となる[5]

弱い形の定理[編集]

となる G の非自明な部分群 H が存在することは比較的簡単に証明できる[2][6] に関する数学的帰納法で証明する。

のとき、どのような部分群 H をとっても

である。

として、定理が となるような空でない有限部分集合 に対して成り立つとする。 任意の に対して

が成り立つとする。このとき Hb2-b1 の形の元から生成される G の部分群とする。 B の元 b0 を1つとれば H の形の要素をすべて含むから かつ に対して

となる がとれる。 また より A + H = A であるが、 B が空でないことから より A + HG とは一致せず、特に HG とは一致しない。よって HG の非自明な部分群であり

が成り立つ。

次に

が成り立つ がとれるとする。 とおく。

かつ

となる。そこで

とおく。

より

が成り立つ。また ならば となることから つまり

が成り立つ。

ところで

より だから である。よって帰納法の仮定より

となる G の非自明部分群 H がとれる。上記の不等式を使って

がいえる。よって帰納法により弱い形の定理が証明される。


脚注[編集]

  1. ^ Kneser, Martin (1953). “Abschätzungen der asymptotischen Dichte von Summenmengen” (German). Mathematische Zeitschrift / 58: 459-484. doi:10.1007/BF01174162. MR0056632. 
  2. ^ a b Kneser, Martin (1955). “Ein Satz über abelsche Gruppen mit Anwendungen auf die Geometrie der Zahlen” (German). Mathematische Zeitschrift 61: 429-434. doi:10.1007/BF01181357. 
  3. ^ Kneser, Martin (1956). “Summenmengen in lokalkompakten abelschen Gruppen” (German). Mathematische Zeitschrift 66: 88-110. doi:10.1007/BF01186598. 
  4. ^ Kemperman, J. H. B. (1960). “On small sumsets in an abelian group”. Acta Mathematica 103: 63-88. doi:10.1007/BF02546525. MR0110747. 
  5. ^ Tao & Vu 2010, Theorem 5.5 および Nathanson 1996, Theorem 4.3
  6. ^ Nathanson 1996, Theorem 4.1

参考文献[編集]

  • Tao, Terence; Vu, Van H. (2010). Additive Combinatorics. Cambridge studies in advanced mathematics. 105. Cambridge: Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-17012-3 
  • Nathanson, Melvyn B. (1996). Additive Number Theory, Inverse Problems and Geometry of Sumsets. Graduate Texts in Mathematics. 165. Cambridge: Springer Verlag. ISBN 978-0-521-17012-3