シュニレルマン密度

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シュニレルマン密度 (Schnirelmann density) は、整数列の密度の概念の一種である。この概念を定義・研究した数学者L.G.シュニレルマンに因む。

目次

定義 [編集]

A を自然数からなる集合とし、 A(n)A の元のうち 1 以上 n 以下のものの個数とする。このとき、実数

\sigma A := \inf_{n} \frac{A(n)}{n}

が必ず定義され、これを A のシュニレルマン密度という。

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  • 自然数全体の集合のシュニレルマン密度は 1 である。
  • 奇数全体の集合のシュニレルマン密度は 1/2 である。
  • 偶数全体の集合 E のシュニレルマン密度は 0 である (E(1)=0 であるため)。
  • 1 と偶数全体からなる集合のシュニレルマン密度は 1/2 である。
  • 1 と素数からなる集合のシュニレルマン密度は 0 である。
  • 1 と2つの素数の和で表される整数からなる集合のシュニレルマン密度は 正 である(後述)。

性質 [編集]

次の性質は定義から明らかである。

  • 0 \le \sigma A \le 1.
  • すべての n に対して A(n)\ge n \sigma A.
  • \sigma{A} = 1\quad ならば A = \mathbb{N}.\quad
  • k \notin A ならば \sigma A \le 1-1/k.
特に、 A が 1 を含まなければ、 \sigma A = 0 である。また、 A が 2 を含まなければ、 \sigma A \le 1/2 である。
  • \sigma A=0 ならば、任意の正の ε に対して、  A(n) < \epsilon n となる n が存在する。
  • A が 1 を含んでおり、正の下極限密度を持つとき、 \sigma A>0 である。

加法的整数論への応用 [編集]

シュニレルマン密度は A の小さな部分に強く依存する。しかし、比較的容易に加法的整数論に関する定理を得ることができるため、シュニレルマンによって早くから研究がなされた。

以下、 a+b (a\in A, b\in B) と表されるもの全体の集合を A + B と記す。また、a_1+a_2+\ldots+a_n (a_i\in A) と表されるもの全体の集合を nA と記す。 nA が自然数全体の集合と一致する最小のn に対して A を位数 n加法的な基 (additive basis)もしくは単に基であるという。たとえば四平方定理より 0 と平方数からなる集合は位数 4 の基である。 どのような整数列が基であるか、また基であるときにその位数がいくつかを知ることが加法的整数論の中心的な課題である。

定理 AB を自然数の集合で、共に 0 を含むものとする。 C=A+B とすると、

\sigma C \geq \sigma A + \sigma B - \sigma A \cdot \sigma B

が成り立つ。

このことは次のようにして分かる。0<a_1<a_2< \ldots A の元全体とする。 \sigma A=0 ならば 上の不等式の右辺は \sigma B に等しいから \sigma A>0 (よって  a_1=1 である)の場合を考える。 b\in B かつ 1\leq b\leq a_{i+1}-a_i-1 ならば、 a_i+bC の元であるが A の元ではない。 B が 0 を含んでいることより CA の元を含んでいるから、 r=A(x) とおくと、

C(x)\ge r+\sum_{i=1}^{r-1} B(a_{i+1}-a_i-1)+B(x-a_r),

ここで \sigma B\leq B(x)/x が常に成り立つことから

C(x)\ge r+\sigma B (x-a_r+\sum_{i=1}^{r-1} (a_{i+1}-a_i-1))\ge x\sigma B + r(1-\sigma B)

となる。 r=A(x)\ge x\sigma A が常に成り立つから、

C(x)\ge x\sigma B + x\sigma A (1-\sigma B)=x(\sigma A+\sigma B-\sigma A \cdot \sigma B)

である。これより定理が示された。


この定理を変形すると

(1-\sigma (A+B)) \leq (1-\sigma A)(1-\sigma B)

となる。これを帰納的に適用して、

1-\sigma (A_1+A_2+\ldots A_n) \leq \prod_i(1-\sigma A_i)

を得る。

また、

定理 \sigma A+\sigma B>1 かつ A が 0 を含んでいるならば A +B はすべての整数を含んでいる

ことがわかる。実際、 n\notin A+B ならば、 n および n-a_i の形の数は B に含まれないから、 B(n)\leq n-1-A(n-1)\leq n-A(n)となり、よって \sigma A+\sigma B\leq (A(n)+B(n))/n\leq 1となる。

上記の二つの定理から、A が 0 を含んでおり、正のシュニレルマン密度を持つならば、ある自然数 n に対して  \sigma (n-1)A >1/2 となり、よって nA はすべての整数を含んでいることがわかる。

ある種の整数列はシュニレルマン密度 0 を持つが、その整数列の一定数の元の和で表される整数の集合が正のシュニレルマン密度を持つ。 したがって、上の結果からそのような整数列は基であることが分かる。

シュニレルマンがこの概念を研究したのはゴールドバッハの予想の研究のためであった。P を 0, 1 と素数からなる集合とすると、これはシュニレルマン密度 0 を持つが、シュニレルマンはブルンの篩を用いて P + P が正のシュニレルマン密度を持つことを示した。よって P は基である。すなわち、ある定数 c が存在し、全ての整数は 高々c 個の素数の和で表される。シュニレルマンは c\leq 300000 を示している。このことに因んで、「1 より大きい全ての整数が高々 c 個の素数の和で表される」が正しくなる最小の cシュニレルマン定数と呼ぶ。ゴールドバッハの予想が正しいなら c=3 となる。


1942年にH.B.マンは、L.G.シュニレルマン自身が夙にランダウとの討論から予想し、「アルファ-ベータ予想」として有名になっていた以下の定理を証明した。

定理 AB を自然数の集合で、共に 0 を含むものとする。 このとき A + B は全ての自然数を含むか、または

\sigma (A + B) \ge \sigma A + \sigma B

が成り立つ。

よって、 A が 0 を含んでおり、また \sigma A \ge 1/n ならば A は位数が高々 n の基であることが分かる。

参考文献 [編集]

  • L. G. Schnirelmann, Über additive Eigenschaften von Zahlen., Math. Ann. 107 (1932/33), 649--690.
  • H. Halberstam and K. F. Roth, Sequences, Clarendon Press, Oxford, 1966, revised edition, Springer-Verlag, New York, 1983.
  • Melvyn B. Nathanson, Additive number theory : the classical bases, GTM 164, Springer-Verlag, New York, Tokyo, 1996.