βバルジ

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βバルジ(beta bulge)は、βシート水素結合が部分的に破壊されたもので、具体的にはβシートの水素結合にらせんの一部を挿入したものである。

タイプ[編集]

βバルジは、妨害部分の長さ、即ちβシートに挿入された残基部分の長さによって分類される。平行か逆平行かということや、二面角の大きさは分類には関係しない。

構造による効果[編集]

例えばリボヌクレアーゼAの長いβヘアピン部分にあるβバルジのように、全体として見ればβバルジはβシート上にある単純な瘤にすぎない。しかしβヘアピンの相対する側に左巻きと右巻きのαヘリックスがそれぞれ挿入された場合などにはβシート自体を折り畳むこともある。

タンパク質の機能への影響[編集]

βバルジが保存された領域では、タンパク質の機能にとって重要な役割を果たしていることもある。βバルジの最も基本的な機能は、突然変異などによって生じた余分な残基を収容し、タンパク質の機能を保つことである。また免疫グロブリンタンパク質などでは、lgドメインの二量化を助けている。さらにジヒドロ葉酸レダクターゼスーパーオキシドディスムターゼでは、βバルジを含むループが活性部位を基質に近づける働きを担っている。

参考文献[編集]

  • Richardson JS, Getzoff ED and Richardson DC. (1978) "The β-bulge: A common small unit of nonrepetitive protein structure", Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 2574-2578.
  • Richardson JS. (1981) "The anatomy and taxonomy of protein structure", Adv. Protein Chem., 34, 167-339.
  • Chan AWE, Hutchinson EG, Harris D and Thornton JM. (1993) "Identification, classification, and analysis of beta-bulges in proteins", Protein Sci., 2, 1574-1590.