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アイスランドにおける禁酒法 は、1915年に発効したアルコール飲料を禁止する法律。当初はすべてのアルコール飲料が禁止されていたが、1922年にワインが解禁され、1935年にビール(アルコール度数2.25パーセント以上)を除くすべての酒類が合法となった[1][2]。ただし、他の酒を禁止した国の例と同様に、禁酒法の施行下でもアルコール飲料の密輸が横行していた[1]

アルシング(アイスランド議会)において強硬にビールを拒んでいたのは、農村地帯出身の議員や伝統的な社会主義政党であった。ビールは思春期の青年を特に誘惑しやすいからというのが彼らの主張の主な根拠であった。対するビール解禁派は、よりアルコール度数が高い酒が解禁されているのに、それより弱いビールを禁止するというのは法律として異常だと主張していた。酒類の規制が緩和されるにつれて、アイスランド人の酒類消費量は増加していった[1]。最終的に、ビール規制も1989年3月1日には廃止された。そのため、アイスランドでは3月1日が「ビールの日」とされている。

歴史

20世紀初頭のアイスランドでは、ビールなどのアルコール飲料に対する風当たりが強くなった。その中心にあったのは、周辺諸国と同様に勃興した、道徳的観点から酒類を忌避する禁酒運動であった。また政治的にもアイスランド独立運動英語版が起こり始め、宗主国デンマークのイメージと結び付けられたビールは「選ぶべき愛国的飲料ではない」とされるようになったのも、ビール忌避が広がった一因となった[3]

アイスランドが自治権を獲得した4年後の1908年に行われた国民投票英語版で、60.1パーセントがアルコール飲料の禁止に賛成した。投票権を持っていなかった女性も、アルコール禁止を支持した。その結果、アイスランドでは1915年1月1日から全面的な禁酒法が発効した。しかし1921年、スペインやポルトガルからの経済的圧力を受け、規制が一部緩和された。両国は、自国のワイン輸出をアイスランドが承認しなければ、アイスランドの主力輸出品である塩漬けタラの輸入を停止すると脅したのである。その結果、1921年に両国からの赤ワインおよびロゼワイン輸入が合法化された。アイスランド人の間でも禁酒法に対する支持が弱まり、1933年の国民投票英語版で57.7パーセントが酒類の解禁を支持するに至った[3]

しかしビールに限っては、アルコール度数2.25パーセントを上回るものが禁止され続けた。なお一般的なフル・ストレングス・ビールのアルコール度数は4-5パーセント程度である。ただし、こうした禁令をかいくぐったビール密輸入や自家醸造も横行していた。また、合法でよりアルコール度数が高い合法な蒸留酒ブレンニヴィーン英語版をビールに加えて規制を回避しようとする者もいた。歴史家のウンナル・イングヴァルソンは、このカクテルについて「面白く、まったくもって不愉快」な味だったと述べている[3]

1979年、アイスランドの実業家ダヴィード・シェヴィング・トルステインソンが帰国時にビールをアイスランドへ持ち込もうとした。ビールは押収されたものの、ダヴィードは航空関係者や外国人観光客が免税店でビールを買うのを認められているのと同じ権利を認めるべきだと主張し、罰金の支払いを拒否した。裁判でダヴィードは敗訴したものの、この事件が報道されたことでアイスランド内でも酒類規制への関心が高まり、法改正でアイスランド人も外国のビールを6リットル(12.2パイント)まで国内に持ち込めることになった[3][4]

1988年、アルシング(アイスランド議会)で2.25パーセント以上のビールも合法とする法案が可決された。これにより、ビールに対する規制も1989年3月1日をもって廃止された[4]

ビールの日

アイスランドでは、禁酒法が廃止された3月1日を「ビールの日」として祝う人々もいる[5]。 Some people may take part in a "rúntur" (bar crawl), with a few bars staying open until 4:00 a.m. the next day.[6] ビールの解禁がアイスランド文化に与えた影響は大きく、ビールはアイスランドで最も人気があるアルコール飲料となっている[7]

関連項目

脚注

  1. ^ a b c Gunnlaugsson, Helgi (2017). “Iceland's Peculiar Beer Ban, 1915–1989” (英語). Dual Markets. Springer, Cham. pp. 237–248. doi:10.1007/978-3-319-65361-7_15. ISBN 9783319653600 
  2. ^ An extreme case of lifestyle regulation: The prohibition of beer in Iceland (PDF Download Available)” (英語). ResearchGate. 2017年11月18日閲覧。
  3. ^ a b c d “Why Iceland Banned Beer”. BBC News. (2015年3月). https://www.bbc.com/news/magazine-31622038 
  4. ^ a b “Beer (Soon) for Icelanders”. The New York Times. Associated Press. (1988年5月11日) 
  5. ^ "Yet another reason to love Iceland" from the Iceland Tourist Board
  6. ^ Beer Day Archived 2009-02-01 at the Wayback Machine. from worldeventsguide.com
  7. ^ "Iceland Gets the Beer Back" Archived 2008-11-29 at the Wayback Machine. from the Reykjavik Grapevine

External links

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