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「小行列」の版間の差分

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de:Untermatrix 16:10, 14. Sep. 2015
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[[数学]]において、'''部分行列'''(ぶぶんぎょうれつ、英:submatrix)と、大きな[[行列]]から特定の行列を抽出するこ作られる行列のこである。
[[file:Submatrix_qtl1.svg|thumb|小行列は行列から特定の行および列を取り除いて得られの図は第二と第四を落している。]]
[[線型代数学]]における'''部分行列'''(ぶぶんぎょうれつ、{{lang-en-short|''submatrix''}})または'''小行列'''(しょうぎょうれつ、{{lang-de-short|''Teilmatrix''}}<ref name='karpfinger'>Christian Karpfinger: ''Höhere Mathematik in Rezepten.'' Springer Verlag, Berlin 2014, ISBN 978-3-642-37865-2, S.&nbsp;95.</ref>)は、与えられた[[行列]]に対してその行または列を取り除くことで作られる行列を言う。特に[[正方行列]]に対して同じ番号の行と列を取り除くことで得られる小行列は'''主小行列''' (''principal submatrix'') と呼ぶ。小行列は、[[小行列式]]や[[余因子行列|余行列]]の定義に用いられ、それらは[[行列式]]の[[余因子展開]]において重要である。


== 定義 ==
例えば、以下の行列'''A'''が与えられた時、
{{math|1=''A'' = (''a{{sub|ij}}'') ∈ Mat(''m'', ''n''; ''K'')}} を[[可換体]] {{mvar|K}} 上の[[行列]]とするとき、{{mvar|A}} の'''小行列''' {{mvar|A{{sub|IJ}}}} は、行[[添字集合|添字]]の部分集合 {{math|1=''I'' &sub; {{mset|1, …, ''m''}}}} と列添字の部分集合 {{math|1=''J'' &sub; {{mset|1, …, ''n''}}}} を選んで{{underline|除いた}}行列
:<math>
: <math>A_{IJ} := (a_{ij})_{i \in \{ 1, \ldots , m \} \smallsetminus I,\atop j \in \{ 1, \ldots , n \} \smallsetminus J}</math>
\mathbf{A}=\begin{bmatrix}
を言う。この小行列 {{mvar|A{{sub|IJ}}}} は {{math|''m'' &minus; {{abs|''I''}}}} 本の行および {{math|''n'' &minus; {{abs|''J''}}}} 本の列を持つ行列である。取り除く添字の部分集合が各々一元集合であるときには、例えば {{math|''A''{{sub|{{mset|''i''}}{{mset|''j''}}}}}} は単に {{mvar|A{{sub|ij}}}} と書く。
a_{11} & a_{12} & a_{13} & a_{14} \\
{{mvar|1=''m'' = ''n''}} で {{math|1=''I'' = ''J''}} のときの小行列
a_{21} & a_{22} & a_{23} & a_{24} \\
: <math>A_I = A_{II},\quad A_i = A_{ii}</math>
a_{31} & a_{32} & a_{33} & a_{34}
を'''主小行列'''とも呼ぶ。
\end{bmatrix}.
</math>
次の行列は1、2行目および1、3、4列目を抽出した'''A'''の部分行列である。
:<math>
\mathbf{A}[1,2; 1,3,4]=\begin{bmatrix}
a_{11} & a_{13} & a_{14} \\
a_{21} & a_{23} & a_{24}
\end{bmatrix}
</math>
この部分行列は3行目と2列目を削除した行列とみなして、'''A'''(3;2)と表記することもある。


これとは異なり、選んで{{underline|用いる}}添字を指定することによって小行列を記述することもある。この立場では
この2種類の部分行列の作り方は一般的なものであるが、部分行列を表記する標準的な方法というのは確立されてはいない。
: <math>A_{IJ} = (a_{ij})_{i \in I, j \in J}</math>
のように書く<ref>{{Literatur|Autor=Überhuber|Titel=Computer-Numerik 2|Seiten=212}}</ref>。ただし、以下本項ではこの記法は用いないこととする。連続する番号の行および列を用いて得られる小行列は、もとの行列の[[区分行列|ブロック]]と呼ばれる。


== 例 ==
[[行列式]]の理論において部分行列に対応する概念として、正方部分行列の行列式である[[行列式#小行列式|小行列式]]がある。
例えば、以下の行列
: <math>A = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 5 & 6 & 7 & 8 \\ 9 & 10 & 11 & 12 \end{pmatrix} \in \R^{3 \times 4}</math>
に対して、その小行列の一つ
: <math>A_{23} = A_{\{2\}\{3\}} = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 4 \\ 9 & 10 & 12 \end{pmatrix} \in \R^{2 \times 3}</math>
は第二行および第三列を取り除いて得られる。


==関連項目==
== 応用 ==
行列 {{math|''A'' ∈ Mat(''m'', ''n''; ''K'')}} が[[行列の階数|階数]] {{mvar|r}} を持つならば、正方小行列 {{math|''A{{sub|IJ}}'' ∈ Mat(''r''; ''K'')}} が存在して {{math|1=rank(''A{{sub|IJ}}'') = rank(''A'')}} かつ {{math|[[行列式|det]] ''A{{sub|IJ}}'' &ne; 0}} とできる<ref>{{Literatur|Autor=Bosch|Titel=Lineare Algebra|Seiten=146}}</ref>。そのような小行列は、例えば[[ガウス消去|ガウスの消去法]]などを用いて計算できる。正方小行列の行列式は[[小行列式]]と呼ばれ、主小行列の行列式は主小行列式と呼ばれる。正方行列 {{mvar|A}} の {{mvar|A{{sub|ij}}}} の形の小行列の行列式に交代符号を与えれば、もとの行列の[[余因子]]
* [[区分行列]]
: <math>\tilde{a}_{ij} = (-1)^{i+j} \det(A_{ij})</math>
が得られ、[[余因子行列]] {{math|1={{tilde|''A''}} {{coloneqq}} ({{tilde|''a''}}{{sub|''ij''}})}} は {{mvar|A}} の[[逆行列]]を陽に計算するために用いることができる。また行列式の計算に関する[[余因子展開|ラプラス展開定理]]や二つの行列の[[行列の積|積]]の行列式に関する[[ビネ&ndash;コーシーの定理]]などにおいても小行列式は重要な役割を果たす。


== 参考文献 ==
{{DEFAULTSORT:ふふんうれつ}}
* {{Literatur|Autor=[[Siegfried Bosch]]|Titel=Lineare Algebra|Verlag=Springer|Jahr=2006|ISBN=3-540-29884-3}}
* {{Literatur|Autor=Christoph W. Überhuber|Titel=Computer-Numerik 2|Verlag=Springer|Jahr=1995|ISBN=3-642-57794-6}}

== 注 ==
<references />

== 外部リンク ==
* {{EoM|Autor=T. S. Pigolkina|Titel=Submatrix|Url=https://www.encyclopediaofmath.org/index.php/Submatrix}}
* {{MathWorld|title=Submatrix|id=Submatrix}}
* {{PlanetMath|author=Mathprof|title=Submatrix notation|urlname=submatrixnotation}}

{{DEFAULTSORT:しよううれつ}}
[[Category:行列]]
[[Category:行列]]
[[Category:数学に関する記事]]
[[Category:数学に関する記事]]

2017年1月27日 (金) 19:47時点における版

小行列は行列から特定の行および列を取り除いて得られる。この図では第二行と第四列を落としている。

線型代数学における部分行列(ぶぶんぎょうれつ、: submatrix)または小行列(しょうぎょうれつ、: Teilmatrix[1])は、与えられた行列に対してその行または列を取り除くことで作られる行列を言う。特に正方行列に対して同じ番号の行と列を取り除くことで得られる小行列は主小行列 (principal submatrix) と呼ぶ。小行列は、小行列式余行列の定義に用いられ、それらは行列式余因子展開において重要である。

定義

A = (aij) ∈ Mat(m, n; K)可換体 K 上の行列とするとき、A小行列 AIJ は、行添字の部分集合 I ⊂ {1, …, m} と列添字の部分集合 J ⊂ {1, …, n} を選んで除いた行列

を言う。この小行列 AIJm − |I| 本の行および n − |J| 本の列を持つ行列である。取り除く添字の部分集合が各々一元集合であるときには、例えば A{i}{j} は単に Aij と書く。 m = nI = J のときの小行列

主小行列とも呼ぶ。

これとは異なり、選んで用いる添字を指定することによって小行列を記述することもある。この立場では

のように書く[2]。ただし、以下本項ではこの記法は用いないこととする。連続する番号の行および列を用いて得られる小行列は、もとの行列のブロックと呼ばれる。

例えば、以下の行列

に対して、その小行列の一つ

は第二行および第三列を取り除いて得られる。

応用

行列 A ∈ Mat(m, n; K)階数 r を持つならば、正方小行列 AIJ ∈ Mat(r; K) が存在して rank(AIJ) = rank(A) かつ det AIJ ≠ 0 とできる[3]。そのような小行列は、例えばガウスの消去法などを用いて計算できる。正方小行列の行列式は小行列式と呼ばれ、主小行列の行列式は主小行列式と呼ばれる。正方行列 AAij の形の小行列の行列式に交代符号を与えれば、もとの行列の余因子

が得られ、余因子行列 ~A ≔ (~aij)A逆行列を陽に計算するために用いることができる。また行列式の計算に関するラプラス展開定理や二つの行列のの行列式に関するビネ–コーシーの定理などにおいても小行列式は重要な役割を果たす。

参考文献

  • Siegfried Bosch (2006), Lineare Algebra (ドイツ語), Springer, ISBN 3-540-29884-3 {{citation}}: 不明な引数|Comment=が空白で指定されています。 (説明)
  • Christoph W. Überhuber (1995), Computer-Numerik 2 (ドイツ語), Springer, ISBN 3-642-57794-6 {{citation}}: 不明な引数|Comment=が空白で指定されています。 (説明)

  1. ^ Christian Karpfinger: Höhere Mathematik in Rezepten. Springer Verlag, Berlin 2014, ISBN 978-3-642-37865-2, S. 95.
  2. ^ Überhuber, Computer-Numerik 2 (ドイツ語), p. 212 {{citation}}: 不明な引数|Comment=が空白で指定されています。 (説明)
  3. ^ Bosch, Lineare Algebra (ドイツ語), p. 146 {{citation}}: 不明な引数|Comment=が空白で指定されています。 (説明)

外部リンク