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極限定理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

極限定理(きょくげんていり,: limit theorems)とは塑性変形における極限解析の基礎となる定理で、上界定理(じょうかいていり、Upper bound theorem)と下界定理(かかいていり、Lower bound theorem)がある。また、確率・統計学では、中央極限定理がある。中央極限定理の特別な場合が、Laplaceの極限定理(ラプラスの定理)である[1]

上界定理と下界定理により定式化された極限解析から、極限荷重の上界値と下界値をそれぞれ求めることができる。もし、極限荷重の上界値と下界値が一致すれば、それが真の極限荷重となる。構造が複雑になり、極限荷重の上界値と下界値が一致しなくても、真の極限荷重はそれらの間にあることが分かるので、およその値は推測できる。

上界定理

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物体力fi応力境界面の表面力Ti 、変位速度をひずみ速度をとする。

外力(fi , Ti )との仕事率が正となる、変位速度境界条件と変形の適合条件を満たす(運動学的に許容な)について、以下の式を与える。

このとき、αは真の崩壊荷重係数α* の上界値を与える。すなわち、

となる。ただし、応力σij は、与えられたひずみ速度に対して、直交則を満たす応力場である。

上界定理による極限解析は、運動学的制約条件(変形の適合条件と流れ則)と外力仕事率が 1 であるという条件の下で、内部消散率を最小化する最適化問題に帰着する。

下界定理

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与えられた荷重系について、釣り合い式と応力境界条件を満たす(静力学的許容な)応力場が、降伏条件を破らない(静力学的可容な)とき、荷重係数は真の崩壊荷重係数の下界値を与える。すなわち、

となる。ここで、αは荷重係数、α* は真の崩壊荷重係数である。

下界定理による極限解析は、静力学的制約条件(力の釣り合い式と降伏条件)の下で、荷重係数を最大化する最適化問題に帰着する。


脚注

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  1. ^ 伏見康治「確率論及統計論」,1948 復刻版 1998 ISBN 978-4874720127 p.186

参考文献

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  • 小林昭一『構造力学(上)』培風館、1990年。 
  • 岡二三夫『土質力学』朝倉書店、2003年。 
  • 田村武「数値解析法総論」『地盤力学数値解析-“限界状態”の予測手法を中心として』、(社)土質工学会関西支部、1986年。 
  • 田村武「剛塑性有限要素法の基礎と適用」『地盤力学数値解析-“限界状態”の予測手法を中心として』、(社)土質工学会関西支部、1986年。 
  • 伏見康治確率論及統計論』河出書房、1942年。ISBN 9784874720127 

関連項目

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