日本の太極拳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本の太極拳(にほんのたいきょくけん)では、主に日本国内で発祥した太極拳について述べる。

従って、現代中国から伝来した制定拳や伝統拳については記述しない。

概要[編集]

日本に太極拳が伝えられた明確な時期は、不明である。おそらく近代になり中国との交流が盛んになり、昭和の初期には日本に伝来していたと考えられる。

その後、戦争事変があり、中国では内戦も発生したことから太極拳のみならず、両国の文化的な交流は一旦は途絶えた状態となった。

昭和の中期に中国で編纂された簡化二十四式太極拳をアレンジした太極拳を広めたのが、現在の健康太極拳の創始者である楊名時である。

開放改革路線で中国の市場が開放されると、日本から武術を学ぶために中国へ留学する者や、日本に太極拳を広めようと考え来日する中国人が増え、今や中国の太極拳の流派のほとんどが日本国内に道場を持つまでになった。

そうした状況の中で、中国のそのままの太極拳ではなく、日本人の体格・精神あるいは国情に応じた太極拳が日本でも編纂されつつある。

そういった太極拳のすべてではないが、現在広く普及活動や出版がなされている流派について記述する。

特徴[編集]

日本で発祥した太極拳には競技性あるいは武術性がない。

中国の制定拳には競技性、あるいは伝統拳には武術性が強く保持されている。

日本における太極拳の受容は、健康の保持という側面が強く、このために日本で編纂された太極拳の形についても、その面が強調される傾向にある。

もともと空手家であった楊名時が編纂した楊名時太極拳においても、武術性はない。

また、試合などもなく、大会等はあっても、それは自分が所属する団体が演武を披露する場となっており、優劣をつけたり、得点を争うようなことはない。

流派及びご当地太極拳[編集]

流派[編集]

健康太極拳[編集]

楊名時が日本で創始した太極拳である。1956年に中国国家体育委員会が編纂した簡化二十四式太極拳の動作表を見て、自分自身の故郷である山西省五台県で学んだ武術と日本で学んだ松涛館流空手道の術理で解釈したものである。これを楊名時太極拳あるいは、単に二十四式太極拳と称している。

制定拳に比べると動作がよりゆっくりとしている。

健康太極拳と言う場合は、二十四式太極拳と八段錦を合わせて呼称している。

体を締め付けることなく、ゆったりとしているという理由で空手着を着て稽古を行う。

現在の教室では、多くの場合、音楽を流して形を行うが、楊名時自体は、音楽を用いることには非常に批判的であった。

現在、日本国内でもっとも多くの会員がいる流派であり、日本武術太極拳連盟の会員よりも多い。

NPO法人日本健康太極拳協会に属する団体とNPO法人太極拳養心会に属する団体があるが、同じ形を稽古している。

NPO法人帯津良一場の養生塾でも、楊名時太極拳の教授を行っている。

NPO法人帯津良一場の養生塾では、楊名時太極拳のほかに、らくらく十式太極拳の教授も行っている。

メディカル気功太極拳[編集]

外山恵美子が編纂した太極拳である。

中国の北京中医薬大学で保健気功及び医療気功を学んで帰国した。

帰国後、気功を臨床に生かす活動をしている。

日本の住環境や生活のリズムに合わせたメディカル気功太極拳を編纂し、普及に努めている。

メディカル気功太極拳は、5分間で畳一畳できるように編纂されており、無理なく高年齢になっても継続できるように配慮されている。

NPO法人心とからだの研究会に所属する団体で稽古することができる。

ご当地太極拳[編集]

地方公共団体が主に高齢者の健康維持や介護予防を目的として編纂したものである。

介護予防太極拳(ひまわりタイチ)[編集]

北九州市が、北九州市武術太極拳連盟の協力を得て編纂した北九州市独自の太極拳である[1]

十二式太極拳とも称する。

愛称のひまわりタイチの「ひまわり」は北九州市の花からきている。

太極拳の代表的な動作のうち、高齢者にも無理なくできる動作を取り出し編纂されている。

立って行っても座って行ってもいいようになっている。

太極拳の風格を大切に編纂したとの文言が北九州市のホームページにある。

太極拳ゆったり体操[編集]

福島県喜多方市が福島県立医科大学公衆衛生学講座の安村誠司教授及び福島県立会津保健所と協働して編纂した太極拳である[2]

やや高齢者の身体機能の衰えの予防や機能の回復を目的として平成19年から普及活動を行っている。

太極拳ゆったり体操1(入門編)・太極拳ゆったり体操2(ステップアップ編)及び太極拳ゆったり体操(短縮版)の三種類の形あり、それぞれ立位と座位がある。

喜多方市では、太極拳ゆったり体操の指導員の養成のための講習会を実施している。

喜多方市在住者の場合には、「サポーター」→「サブリーダー」→「リーダー」という段階で認定試験を経て昇格するようになっている。

また、喜多方市以外での普及活動に従事する場合には、「サポーター」→「エリアパートナー」という昇格になる。

エリアパートナーになるためには、サポーターステップアップ講習を喜多方市で受講する必要がある。

このような制度があるために、東京都内の健康太極拳や武術太極拳の教室では、太極拳ゆったり体操の稽古を行うところが存在する。

ふくまる太極拳[編集]

大阪府池田市が編纂した太極拳である[3]

座位の初心者用・初級編・中級編及び上級編の4つの形がある。

カラコロ太極拳体操[編集]

島根県松江市が松江市太極拳協会の協力を得て編纂した太極拳の形である[4]

座位及び立位のどちらでも行えるように工夫されている。

ご当地健康体操100選の49番に登録されている。

脚注[編集]

  1. ^ ひまわり太極拳”. 北九州市. 2021年8月5日閲覧。
  2. ^ 太極拳ゆったり体操 - 喜多方市ホームページ”. www.city.kitakata.fukushima.jp. 2021年8月5日閲覧。
  3. ^ 運動不足解消のための体操等の動画について|池田市”. www.city.ikeda.osaka.jp. 2021年8月5日閲覧。
  4. ^ ご当地健康体操49「カラコロ太極拳体操」島根県松江市 | 日本健康応援サイト「KENKOHUB.JP」”. www.kenkohub.jp. 2021年8月5日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]