ブルーシールド
ブルーシールド(英: Blue Shield)とは、文化遺産の不動産や、文化財保護に従事する要員を識別するために付与される特殊標章の通称。国際連合教育科学文化機関(通称:ユネスコ)で採択された「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」(通称:1954年ハーグ条約)に基づき、武力紛争や災害によって損害、損失、および流出の危機に面している、「特別保護」下にある文化財保護のための標章で、青と白の盾(シールド)が描かれている[1][2][3][4]。また、同条約とその理念に基づいて武力紛争や災害時、およびそれらに備えて文化遺産を保護する活動をブルーシールド活動と呼ぶ[5]。
ブルーシールド活動を遂行するために1996年に設立された非政府組織ブルーシールド国際委員会(英: International Committee of the Blue Shield)は、2006年にその名称をブルーシールド(英: Blue Shield)と改めたため、ブルーシールドはその国際組織を指すこともある[6]。
「特別保護」下にある文化遺産の不動産は特殊標章を表示することによってその文化遺産は識別されるほか、文化財を保護する要員は特殊標章を身分証明証などに記載できる[1]。
条約調印国家は武力紛争の際には特殊標章を付与された文化遺産や保護要員を攻撃対象から外して保護に努めることが求められるほか、破壊や損害が確認された場合に破壊者側は戦争犯罪を含む責任を追及される[7]。また、国際刑事裁判所で罪が問われた際には、前述の国際組織ブルーシールドが諮問機関として機能する[5]。
赤い十字や月のシンボルのもと国際的人道支援活動を行っている赤十字・赤新月を参考にしており、青い盾のシンボルのもと文化財の国際的保護活動を行っているのがブルーシールドで、「文化の赤十字」にたとえられている[5][8]。
課題
[編集]1990年代前半のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では民族的対立が激しく、精神的な浄化を狙い、むしろブルーシールドを掲げた施設を標的にする事態が起きた[5]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b “武力紛争の際の文化財の保護に関する条約” (PDF). 外務省 (2007年3月6日). 2022年4月3日閲覧。
- ^ 可児英里子 (2002). “「武力紛争の際の文化財の保護のための条約 (1954年ハーグ条約)」の考察 ―1999年第二議定書作成の経緯―” (PDF). 外務省調査月報 (外務省) (3): 2-32 2022年4月3日閲覧。.
- ^ “武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(略称:武力紛争の際の文化財保護条約)”. www.mofa.go.jp. 外務省 (2020年1月31日). 2022年4月3日閲覧。
- ^ 藤岡麻理子, 平賀あまな, 斎藤英俊「1954年ハーグ条約に基づく履行状況報告書とその内容 : 「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」の履行状況とその課題 その1」『日本建築学会計画系論文集』第73巻第626号、日本建築学会、2008年、897-903頁、doi:10.3130/aija.73.897、ISSN 1340-4210。
- ^ a b c d ブルーシールドと文化財緊急活動-国内委員会の役割と必要性- (PDF). 第11回文化遺産国際協力コンソーシアム研究会. 文化遺産国際協力コンソーシアム. March 2014. pp. 15–17. 2022年4月3日閲覧。
- ^ “History” (英語). Blue Shield International. 2022年4月3日閲覧。
- ^ Shivaram, Deepa (2022年4月2日). “UNESCO says 53 cultural sites in Ukraine have been damaged since the Russian invasion” (英語). NPR 2022年4月3日閲覧。
- ^ 坂本, 博「文化の赤十字 : ブルーシールドの現状と課題」『レファレンス』第694号、国立国会図書館、2008年11月、doi:10.11501/999639、2022年4月3日閲覧。