コンテンツにスキップ

死滅放射性核種

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

2019年1月22日 (火) 02:29; コーキー (会話 | 投稿記録) による版(日時は個人設定で未設定ならUTC

(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)

死滅放射性核種(しめつほうしゃせいかくしゅ)とは、放射能を持った不安定な原子、すなわち、放射性核種の分類の1つである。

放射性核種は、核種ごとに決まった半減期で崩壊して消失し、別な核種へと変化してゆく。その核種が核融合反応や中性子捕獲などによって自然に生成された後、地球上に現在まで存在し続けるには不充分な短い半減期を持っており、かつ、その核種が存在していた影響を現在の地球上でも検出できる程度には長い半減期を持った核種が、この死滅放射性核種である。したがって、この定義から、現在の地球上には人工的に合成したり、宇宙線などに影響などによって生成しない限り、死滅放射性核種は存在しない。なお、その核種が存在していた影響を検出する方法としては、例えば、同位体存在比の変化を見る方法などがある [1] 。 参考までに、資料によって違いがあるものの、死滅放射性核種であるための半減期の要件は、3千万年程度以上、かつ、3億年程度以下の長さを持っている必要があるとする文献も存在する [1]

死滅放射性核種の例

[編集]
死滅放射性核種 半減期 娘核種
プルトニウム244 8080万年 ウラン240(ただし、自発核分裂の生成物として、キセノンなどが生ずることもある。)
サマリウム146 6870万年 ネオジム142(安定核種)
ニオブ92 3470万年 ジルコニウム92
ヨウ素129 1570万年 キセノン129(安定核種)
キュリウム247 1560万年 プルトニウム243
鉛205 1530万年 タリウム205
ハフニウム182 891万年 タンタル182
パラジウム107 653万年 銀107
テクネチウム98 420万年、または、660万年 ルテニウム98
ジスプロシウム154 301万年 ガドリニウム150
鉄60 262万年 ニッケル60
テクネチウム97 260万年、または、420万年 モリブデン97
セシウム135 233万年 バリウム135
ガドリニウム150 179万8千万年 サマリウム146
ジルコニウム93 153万年 ニオブ93
アルミニウム26 71万7千年 マグネシウム26 (安定核種)

補足

[編集]

地球に天然に現存する、短寿命核種として、例えば、以下のようなものがある。

  • マンガン53(半減期370万年)やベリリウム10(半減期138万7千年)は、地球の上層大気に含まれる原子が宇宙線によって核破砕されるために、現存する。
  • ウラン236(半減期2348万年)は、充分に半減期が長いために天然に存在するウラン235が、中性子を捕獲することで、わずかに生成しているために現存する。
  • ヨウ素129は、現存する核種であるテルル130に宇宙線が当たったり、大気中に含まれるキセノンに宇宙線が当たることによって生成する場合がある。
  • 炭素14は、半減期がわずか5730年ながら、地球の大気中に大量に含まれる窒素14宇宙線が当たることで次々と生成しているため、炭素年代測定が可能なほどに存在する。

出典

[編集]
  1. ^ a b 化学大辞典編集委員会 編集 『化学大辞典 (縮刷版) 4』 p.540(左中央部) 共立出版 1963年10月15日発行 ISBN 4-320-04018-X