造波抵抗
造波抵抗(ぞうはていこう、Wave drag)は水の上を動く物体が受ける抵抗の1つである。
水の上を動く物体とは多くが船であるため、以下では簡単のために船で説明する。
船が航走する時の抵抗は次の3つに分解出来る。
- 造波抵抗
- 粘性圧力抵抗
- 粘性摩擦抵抗
船が低速で航走している時は船が受ける抵抗の主体は粘性摩擦抵抗であるが、速度が上がれば造波抵抗が主体となってくる。粘性摩擦抵抗は船体周囲の水流と船体表面の摩擦による抵抗である。粘性圧力抵抗は後部で渦を作る時の圧力差によって後ろに引かれる抵抗である。造波抵抗は船の航走時に波を作るエネルギーの分だけ失われる抵抗であり、船の速度の2乗に比例して増す [1]。
造波抵抗は、英国の流体力学の科学者で船舶設計者でもあったウイリアム・フルード(William Froude、1810~1879)が考案したフルード数によって分析される[2]。
大気中を飛行する航空機においては、飛行速度が音速に達する場合、大気の圧縮により衝撃波が形成され、それにより造波抵抗が発生する。航空機における造波抵抗は、その値が音速付近で急速に増大するため、音速前後で発生するその他の問題(境界層剥離など)も含めて「音の壁」「音速の壁」と呼ばれることもある。
フルード数
フルード数(Froude number)は以下の数式で表される。
V :船の速度、g:重力加速度(9.80665m/sec2)、L:船の長さ[2]
造波抵抗係数
造波抵抗係数は以下の数式で表される。
Rw:造波抵抗、:水の密度、S:船体の浸水表面積、V:船の速度
フルード数が0.5を越えると造波抵抗係数は最大値から減少する[2]。
出典
- ^ 池田良穂著 「船の科学」 BLUE BACKS 講談社 2007年12月20日第1版発行 ISBN 978-4-06-257579-9
- ^ a b c d ハイテク兵器の物理学 (財)防衛技術協会編 2006年3月発行 ISBN4-526-25644-8