英国山岳会
英国山岳会(The Alpine Club、アルパインクラブ、略称AC)は1857年にロンドンで創設され、150年の歴史を誇る世界最古の山岳会であり、イギリスの登山家の名士会である。世界には数多くの山岳会が存在するが、国名をつけずに定冠詞をつけて「The Alpine Club」と言えば、英国山岳会のことを指す。1920年代以降のエベレスト遠征においては重要な役割を果たした。現在の本部の所在地はロンドン市シャーロットロード55番地。
歴史
1857年12月22日、イギリスの登山家たちがロンドンのアシュレーズ・ホテル(Ashley's Hotel)に集まった。このメンバーたちは当時の一流登山家たちであり、「登山の黄金時代」(1854年~1865年)に登山技術を生み出した人々であった。ここで「英国山岳会」が生まれ、ジョン・ボール(John Ball)を初代会長に選出し、会を主催したE.S.ケネディ(E.S.Kennedy)が副会長となった。ケネディは後にボールのあとをついで二代会長(1860年~1863年)となった。150年後の今日でも山岳会は存続しており、会員たちはやはり現役の登山家としてアルプスだけでなく、世界各地の山に登り続けている。
英国山岳会にはロンドンの名士会という側面もあったが、会員の基準には(「満足できる程度の山に登っていること」など)あいまいな部分もあった。それが20世紀の中ごろまでには、英国山岳会は「英国上級山岳会」へと発展し、男女ともに明確な会員基準を示しことになった。これにより「初心者」は正式会員の資格取得目指して努力することになった。
同会はもちろんイギリスに本部が行われているが、その登山対象はヨーロッパのみならず全世界におよび、単なる山登りにとどまらず探検登山活動にも活動の重点がおかれている。(クラブの初期には登山もせず、低地ばかり歩いているという理由で一度解散したこともあった。)これに関しては1952年に創設された「アルパイン・クライミング・グループ」(ACG)と統合したことで技術を向上させたという部分もある。
山岳会は登山ガイドを発行しており、長い歴史の中でたくわえられた登山記録や写真、書籍のコレクションを誇っている。山岳会の歴史は近年ジョージ・バンドの手によって「頂点:英国山岳会150年史」(Summit: 150 Years of the Alpine Club)にまとめられ、写真家や芸術家たちに関してはピーター・マレイユが「英国山岳会のアーティスト」(The Artists of the Alpine Club)をまとめている。会の広報誌「アルパイン・ジャーナル」も有名である。
2009年現在、年会費は39~60ユーロ、年齢の若い会員たちは27ユーロであり、入会費はない。
歴代会長
- 1857–1860: ジョン・ボール(John Bal])
- 1860–1863: E.S.ケネディ(E. S. Kennedy)
- 1863–1865: アルフレッド・ウィルス(Alfred Wills)
- 1865–1868: レスリー・ステファン(Leslie Stephen)
- 1868–1871: ウィリアム・マシューズ(William Mathews)
- 1871–1874: ウィリアム・ロングマン(William Longman)
- 1875–1877: トマス・ウッドバイン・ヒンクリフ(Thomas Woodbine Hinchliff)
- 1881–1883: トマス・ジョージ・ボニー(Thomas George Bonney)
- 1884–1886: フローレンス・クロフォード・グローブ(Florence Crauford Grove)
- 1886–1890: クリントン・トマス・デント(Clinton Thomas Dent)
- 1890–1893: ホレース・ウォーカー(Horace Walker)
- 1893–1896: ダグラス・フレッシュフィールド(Douglas Freshfield)
- 1896–1899: チャールズ・ピルキントン(Charles Pilkington)
- 1899–1902: ジェームズ・ブライス(James Bryce, 1st Viscount Bryce)
- 1902–1904: マーティン・コンウェイ(Martin Conway, 1st Baron Conway of Allington、later Lord Conway of Allington)
- 1904–1906: ジョージ・フォレスト・ブロウン(George Forrest Browne)、ブリストル主教
- 1908–1911: ハーマン・ウーレイ(Hermann Wooley)
- 1911–1914: W.E.デヴィソン(W. E. Davison)
- 1914–1917:
- 1917–1919: ジョン・パーシー・ファラー(John Percy Farrar)
- 1920–1923: J.ノーマン・コリー(J. Norman Collie)
- 1923–1926: チャールズ・グランヴィル・ブルース(Charles Granville Bruce)
- 1926–1929: ジョージ・ヘンリー・モース(Sir George Henry Morse)
- 1929–1932: クラウド・ウィルソン(Claude Wilson)
- 1932–1934: ジョン・ウィザース(Sir John Withers MP)
- 1935–1938: エドワード・リーズル・ストラット(Edward Lisle Strutt)
- 1938–1940: クラウド・シュスター(Claud Schuster, 1st Baron Schuster、later Lord Schuster)
- 1941–1943: ジェフリー・ウィンスロップ・ヤング(Geoffrey Winthrop Young)
- 1944–1947: レオ・アメリー(Leo Amery)
- 1947–1949: トム・ロングスタッフ(Tom George Longstaff)
- 1950–1953: クラウド・アウレリウス・エリオット(Claude Aurelius Elliott)
- 1953–1956: エドウィン・サヴァリー・ハーバート(Edwin Savary Herbert)
- 1956–1959: ジョン・ハント(John Hunt, Baron Hunt、later Lord Hunt)
- 1959–1962: ジョージ・フィンチ(George Finch)
- 1962–1965: ハワード・サマーヴィル(Howard Somervell)
- 1965-1968: エリック・シプトン(Eric Shipton)
- 1968–1971: チャールズ・エヴァンス(Charles Evans)
- 1971–1974: A.D.M.コックス(A. D. M. Cox)
- 1974–1977: ジャック・ロングランド(Jack Longland)
- 1977–1980: ピーター・ロイド(Peter Lloyd)
- 1980–1983: J. H. エミリン・ジョーンズ(J. H. Emlyn-Jones)
- 1983-1986: R. R. E. コーリー(R. R. E. Chorley)
- 1986: A. K. ローリンソン(A. K. Rawlinson)
- 1986–1987: ニー・エヴァンス(Nea Evans)
- 1987–1990: ジョージ・バンド(George Band)
- 1990–1993: H. R. A. ストレーサー(H. R. A. Streather)
- 1993–1996: マイク・ウェストマコット(Mike Westmacott)
- 1996–1999: クリス・ボニントン(Sir Chris Bonington)
- 1999–2001: ダグ・スコット(Doug Scott)
- 2002–2004: アラン・ブラックショー(Alan Blackshaw)
- 2005–2007: ステファン・ヴェナブルス(Stephen Venables)
- 2008- :ポール・ブレイズウェイト(Paul Braithwaite)