空気遠近法
空気遠近法(くうきえんきんほう、英: aerial perspective)、または大気遠近法(たいきえんきんほう、英: atmospheric perspective)は、遠くから見た物体の外観に大気が与える影響を指す。物体と観察者との距離が離れるにつれて、物体と背景のコントラストが低下し、物体内のマークや細部のコントラストも低下する。物体の色も彩度が低下し、空の色に近づく。空は通常は青みがかっているが、日の出や日の入りの前後は赤みがかる。
歴史
[編集]大気遠近法は、紀元前30年ごろに遡るポンペイ四様式の1つであるポンペイ第二様式のフレスコ画で使用されている。注目すべき例としては、イタリアのプリマポルタにあるリウィアのヴィラの庭園の部屋のフレスコ画や、1世紀のパリのイダ山にあるポンペイ様式のフレスコ画などがある。
大気遠近法の効果については、レオン・バッティスタ・アルベルティやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの博学者によって、正確さの度合いはさまざまであるが説明が記録されている。レオナルド・ダ・ヴィンチは、「受胎告知」、「モナ・リザ」、「最後の晩餐」など、多くの絵画で空気遠近法を使用し、効果を正確に描く技法を紹介した。これは、彼の弟子であるレオナルド・デスキによって採用された。美術史家は、ラファエロなど同時代の一部の芸術家の作品には空気遠近法が欠けていると指摘している。ただし、ラファエロは、レオナルドが同時期に導入したスフマート法を採用した。
空気遠近法は15世紀のオランダの絵画でも使用された。
光学
[編集]空気遠近法は科学的にはレイリー散乱という物理現象で説明される。日中の物体の外観に影響を与える主な要素は、観察者の視線に届く光の散乱、つまり天空光である。散乱は空気の分子から発生するほか、水蒸気や煙などの大気中の大きな粒子からも発生する。散乱により、天空光が物体からの光にベールのような明るさとして加わり、背景の天空光とのコントラストが低下する。天空光には通常、他の波長よりも短波長の光が多く含まれる (これが空が通常青く見える理由である)。そのため、遠くにある物体は青みがかって見える。