浸炭

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。でんでん (会話 | 投稿記録) による 2012年1月17日 (火) 02:26個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎関連用語)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

浸炭(しんたん、英語:carburizing)とは、金属(特に低炭素鋼)の加工において、表面層の硬化を目的として炭素を添加する処理のことである。 主に耐摩耗性を向上させるために行われる。

この処理により、金属の表面のみを硬化させ、内部は柔軟な構造を持たせることができる。従って耐摩耗性と靭性を両立させることが可能である。 また浸炭後の後処理によって表面層と内部の間に応力が生じ、これが割れに対する抵抗性を与える。主に重機や機械部品などに行われる。

処理法など

手法として、固体浸炭、ガス浸炭、液体浸炭、真空浸炭(真空ガス浸炭)、プラズマ浸炭(イオン浸炭)などが存在する。

固体浸炭
木炭を炭素源とする。加工する金属を炭素と共に密閉し同時に加熱することによって発生する一酸化炭素が炭素源となる。このとき、反応促進剤として炭酸塩を添加することがある。簡易であるが、加工品質のばらつきが生ずるために現在では廃れている。
液体浸炭
シアン化ナトリウムを主成分とする無機塩を、高温で溶融させた塩浴によって浸炭を行う。シアン化ナトリウムが猛毒性である欠点があり、代替薬剤の開発が行われている。
ガス浸炭
二酸化炭素水素メタン水蒸気などを主成分とするガスによって浸炭を行う。現在ではこの方法が主流である。
真空浸炭(真空ガス浸炭)
真空引きした後、浸炭用のガスを注入して加熱する方法。
プラズマ浸炭(イオン浸炭)
真空引きした後、浸炭用のガスを注入した後に高電圧をかけ、グロー放電によってガスをプラズマ化して浸炭を行う方法。

なお、浸炭を行った後の処理として、焼入れ焼戻しが必要である。この際、処理に伴って発生したオーステナイト組織が存在していると変形・耐摩耗性の低下が発生し有害であるため、深冷処理などによってオーステナイト組織をマルテンサイト組織に変化させる必要がある。

浸炭の失敗例としては、浸炭が進行しすぎる「過剰浸炭」や、粗大な結晶の発生による欠陥などがある。

関連用語