抗躁薬
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(気分調整薬から転送)
抗躁薬(こうそうやく、英:antimaniac drug[1])とは、躁病に効果がある医薬品のことである[1]。この医薬品の分類は、日本において抗精神病薬と抗躁薬にしか分類が発達していなかった時代の名残である[2]。
後に気分安定薬と呼ばれるようになったのは、躁うつ病(現在の双極性障害)のうつ状態にも有効であるためである[1]。
1949年に、ジョン・ケイドによって躁病患者にリチウム塩が試された[1]。この発見をもって、精神薬理学の誕生とされる[3]。しかしながら、リチウムは安価で商業的な関心を生まず、1952年のクロルプロマジンの発見と誕生年とすることもある[3]。
ジョン・ケイドは、躁病は体内物質の中毒によって起こると考え、患者の尿をモルモットに注射し毒性が強いことを見出し、含まれる有害物質が尿酸であると考え、このため水溶性の高い尿酸塩として尿酸リチウムをモルモットに投与したところ、今度はモルモットを静穏させたため、患者へリチウムの投与を試み症状の改善を見出いしたのである[1]。
カルバマゼピンは、1960年代には抗てんかん薬として用いられたが、日本の研究者である竹崎と花岡は1971年に抗躁作用を持つことを日本の論文雑誌にて公表し、その結果試験が増え、1979年には大熊が英文で発表、1984年にはポストらが躁病に有効であるという追試を行った[1]。その後カルバマゼピンは双極性障害のうつ状態の側面にも有効であるとされ、リチウムと共に気分安定薬という新たなカテゴリーが登場した[1]。なお2012年の日本うつ病学会の診療ガイドラインは、カルバマゼピンを双極性障害のうつ病エピソードには推奨していない[4]。
→「気分安定薬」も参照
出典
[編集]- ^ a b c d e f g 松下正明(総編集) 編『精神医療の歴史』中山書店〈臨床精神医学講座S1〉、1999年9月、290-291頁。ISBN 978-4521492315。
- ^ 姫井昭男『精神科の薬がわかる本』(1版)医学書院、2008年、106-110頁。ISBN 978-4-260-00763-4。
- ^ a b デイヴィッド・ヒーリー 2012, p. 127.
- ^ 日本うつ病学会; 加藤忠史; 神庭重信; 寺尾岳; 山田和夫『日本うつ病学会治療ガイドライン I.双極性障害 2012』(pdf)(レポート)(第2改訂)日本うつ病学会、2012年3月31日、17頁 。2013年1月1日閲覧。
参考文献
[編集]- デイヴィッド・ヒーリー 著、江口重幸監訳、坂本響子 訳『双極性障害の時代―マニーからバイポーラーへ』みすず書房、2012年11月。ISBN 978-4-622-07720-6。、MANIA: A Short History of Bipolar Disorder, 2008