放蕩息子のたとえ話
放蕩息子のたとえ話(ほうとうむすこのたとえばなし)は新約聖書ルカの福音書15章に登場する、イエス・キリストが語ったたとえ話である。父と二人の息子が登場するので、「二人の息子のたとえ」とも言われる。
このたとえ話は、「完全なる小品、短編物語中の最高傑作、福音書の中の真珠」[1]とも言われる。
内容
ある人に二人の息子がいた。弟の方が[2]親が健在なうちに、財産の分け前を請求した。そして、父は下の息子の要求通りに与えた。[3]そして、下の息子は遠い国に旅立ち、そこで放蕩に生きて散財した。大飢饉が起きて、その放蕩息子はユダヤ人が汚れているとしている豚の世話の仕事をして生計を立てる。豚のえささえも食べたいと思うくらいに飢えに苦しんだ。
我に帰った時に、帰るべきところは父のところだと思い立ち、帰途に着く。父は帰ってきた息子を走りよってだきよせる。息子の悔い改めに先行して父の赦しがあった。
父親は、息子のために祝宴を開く。しかし、兄はそれを妬んで父親に不満をぶつけ、弟を軽蔑する。兄は父親にたしなめられる。
この物語の主題は、差別されている者を受け入れて、神に逆らった罪人を、迎え入れてくださる神の愛である。登場する父は神を、「弟」(放蕩息子)は罪人である人間(異邦人、取税人、遊女たち)「兄」はパリサイ派、ユダヤ人を指しているといわれる。
脚注
- ^ 『実用聖書注解』1115ページ
- ^ 弟は独身で推定17-20歳と考えられる。『実用聖書注解』1115ページ
- ^ 申命記21章17節の規定によると、兄2に対して弟は1の割合で相続できることになっている。
参考文献
- 榊原康夫『新聖書注解』いのちのことば社、1973年
- 『新聖書辞典』いのちのことば社、1985年
- 『実用聖書注解』いのちのことば社、1994年
- 鈴木英昭『ルカの福音書』(新聖書講解シリーズ3)、いのちのことば社、1983年