二百万ドルの死者

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二百万ドルの死者
Dead Man's Tale
著者 エラリー・クイーン
発行日 アメリカ合衆国の旗1961年
日本の旗1967年
発行元 アメリカ合衆国の旗pocket books
日本の旗早川書房
ジャンル 推理小説
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
ウィキポータル 文学
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二百万ドルの死者』(にひゃくまんドルのししゃ、Dead Man's Tale )は、1961年に刊行されたエラリー・クイーン推理小説(犯罪小説)。クイーンのハウスネームによる、ペーパーバック書き下ろしの最初の長編。

クイーンのマネージャーが、出版社に売り込んでスタートした企画で、代筆者が執筆し、リーが監修・キャラクター原案などを担当したとされる(「青の殺人」はダネイが監修)[1]

クイーン名義だが、実際にはSF作家のスティーヴン・マーロウが執筆した作品である。

内容[編集]

  • エラリー・クイーンのペーパーバック描き下ろし[2]作品の一つ。
  • クイーンの本格ものとは全く作風の異なる作品。犯罪組織の内紛から東欧のスパイ戦に発展し、唐突に物語が終わる。

主な登場人物[編集]

  • バーナード(バーニー)・ストリート - 裏世界の顔役。表向きは労働争議の仲裁などを専門にしている「事件屋」。
  • エステル・ストリート - バーナードの妻。バーナードの遺言書に立腹する。
  • スティーヴン(スティーヴ) - バーナードの子分。エステルに弱みを握られている。インテリの弟が内心自慢に思う。
  • アンドリュー(アンディ) - スティヴンの弟。大学で文学を収め、学寮のなかで名門クラブのOB。眼鏡をかけ学究肌だが、殺し屋とも対等にやりあうなど兄に似て大胆。
  • ミロ・ハーハ - バーナードの遺産二百万ドルの相続人。大戦時にバーナードの命を救ったチェコパルチザン。現在は行方不明。
  • ゲルトレーデ(トルーディ)・オーレンドルフ - ミロ・ハーハの元恋人。
  • ハインツ・ケムカ - 音楽家。ゲルトレーデの現在の同棲相手。
  • ロナルド(ロン)・ハーレイ - 弁護士。
  • ルー・グッディ - エステルに雇われた殺し屋。
  • ファン・ヒルファサム - オランダ・オースタダイク市長。
  • ヨハンナ - オランダ・オースタダイク市長夫人。ハーハと浮気をしていた過去がある。
  • ヨースト - オランダの農園主。探りに来た訪問者を殺し埋める。
  • ミュラー - 運転手。チェコ潜入に雇われる。
  • ミラドール教授 - 社会主義運動の指導者。演説中にハーハに化けた狙撃手に撃たれ死亡。
  • リブセ・ミラドール - 教授の娘。入国したアンドリューとともにチェコから脱出をはかる。
  • ローリンホーフェン - チェコのスパイ。
  • オットー・ザンダー - チェコの警察庁長官。社会主義者を取り締まろうとしている。

物語[編集]

「事件屋じつは組織暴力の親玉」として裏世界に君臨するストリート一家のボス・バーナードは、新たに遺言書を作る。「命の恩人であるチェコ人のミロ・ハーハに、二百万ドルを譲り、妻には残りのはした金のみ残す」というのだ。

突飛な遺言にたまったものでは無い妻エステルは、組織の幹部スティーヴンに相談する。スティーヴンはハーハの所在を確認しに弟アンドリューとヨーロッパに旅立つ。ところが、留守中にバーナードが殺し屋に殺されてしまう。オランダでは、アンドリューがハーハの恋人だった娘ゲルトレーデに接近する。そしてハーハの生存を確認しチェコに潜入したが、彼は政争の道具にされようとしていた。

日本語訳書[編集]

備考[編集]

  • 本国のpocket books社では、本作を含め、1966年までに15作品をエラリー・クイーン名義のペーパーバックで出版している。日本でも丸善や紀伊国屋など大手書店の洋書コーナーで販売されていたという[3]。しかし、次の翻訳は2000年に『青の殺人』が出版されるまで、30年以上経過している[4]

脚注[編集]

  1. ^ 「チェスプレイヤーの密室」飯城勇三・解説
  2. ^ クイーンの『ローマ帽子の謎』に始まる作品群はハードカバーで発売
  3. ^ 『青の殺人』(2000年3月 原書房)有栖川有栖・解説
  4. ^ 早川書房HMMで『摩天楼のクローズドサークル』が『夜の帳が下りる時』の訳題で紹介されたが、単行本の出版は原書房になった。