チャールズ・ホケット

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チャールズ・フランシス・ホケットCharles Francis Hockett1916年1月17日2000年11月3日)は、アメリカ合衆国言語学者人類学者

アメリカ構造主義言語学の代表的な学者のひとりで、チョムスキーの批判者であった。また、人間の言語が動物のコミュニケーションとどう違うかを指摘したことでも知られる。

生涯[編集]

ホケットはオハイオ州コロンバスで生まれた。1932年に16歳でオハイオ州立大学に入学した。大学では出版されたばかりのレナード・ブルームフィールドの『言語』を教科書として言語学を学び、その強い影響を受けた。20歳で修士の学位を取得した後にイェール大学に進み、エドワード・サピアフランクリン・エジャートンらに学んだ。1939年にポタワトミ族の研究によって人類学の博士の学位を取得した[1]。同年ポタワトミ語の文法に関する論文を『Language』に発表している[2]

太平洋戦争中には陸軍の外国語(主に中国語)教育を担当し、中国語の教科書と辞典を編纂した。戦後は東京で米軍兵士に対する日本語の訓練を行った。

帰国後、1946年にコーネル大学に新設された現代語学部の助教に就任し、中国語を担当した。1957年には人類学も担当し、後に言語学・人類学両方の教授に昇任した。1982年に同大学を退官した。1986年以降はライス大学の特例教授(adjunct professor)に就任し、没するまでその職にあった。

ホケットは1964年にアメリカ言語学会の会長をつとめた。

主な著書[編集]

初期の著作は中国語に関するものが多い。

  • Hockett, Charles F; Fang, Chaoying (1944). Spoken Chinese: Basic Course. New York: Holt 
戦時中に書かれた中国語教科書。
  • Dictionary of Spoken Chinese. Yale University Press. (1966) 
1945年に陸軍用に作られたホケットらの辞書を、のちにロイ・アンドリュー・ミラーらの手で編集出版したもの。
  • Peiping Phonology”. Journal of American Oriental Society 67: 253-267. (1947). 
  • Peiping Morphophonemics”. Language 24: 17-131. (1950). JSTOR 410408. 

ほかにアメリカ先住民の言語に関する研究も多い。

1950年代以降多くの一般言語学の著作を発表している。ノーム・チョムスキーについては1965年に『文法理論の諸相』が出現して以降批判的になった。

  • A Manual of Phonology. Baltimore: Waverley Press. (1955) 
  • A Course in Modern Linguistics. New York: Macmillan. (1958) 
言語学の教科書だが、ホケットの独創的な考えが多く見られる。後に有名になる人間の言語の特徴もここではじめて出現する。
人間の言語が動物の言語と異なる特徴13か条を列挙した。一般向けの記事として書かれ、現在も非常によく知られる。
  • The State of the Art. Mouton. (1968) 
チョムスキー批判として有名な本。
  • Man's Place in Nature. McGraw-Hill. (1973) 
人類学の教科書。
  • The View from Language: selected essays, 1948-1974. University of Georgia Press. (1977) 
過去に書いた14の文章を集めたもの。1955年に『Astounding Science-Fiction』誌に載せたSF仕立ての火星語研究に関する文章を含む。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Hockett, Charles Francis (1939). The Potawatomi language : a descriptive grammar (Ph.D. thesis). Yale University. OCLC 456429991
  2. ^ Potawatomi Syntax”. Language 15 (4). (1939). JSTOR 409107. 

外部リンク[編集]