TWI研修

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TWI研修(ティーダブルアイけんしゅう、: Training Within Industry)とは、企業内教育の手法の一つで、主に、監督者向けのものである。

概要

TWI研修は、TWIとはTraining(訓練)Within(内の)Industry(企業)for supervisors(監督者の方々のための)の頭文字をとったものである。

日本では、労働省(現在の厚生労働省)によって輸入された。2010年(平成22年)現在、日本産業訓練協会(日産訓)や都道府県職業能力開発協会などを中心に、広く行なわれている。

内容は、決められたシーケンスに従って行うような仕事、例えば工場従業員のような人たちを想定したものある。従って、営業マンなどホワイトカラーの仕事には講習の内容が必ずしもそぐわないこともある。

歴史

TWI研修は、チャールズ・R・アレンがヨハン・フリードリヒ・ヘルバルトの4段階教授法と職業分析を適用したものが元になっている[1]第二次世界大戦当時、米国技術者たちにより広められた。

日本では、下記の歴史をたどり、実施されている[2]

  • 1950年(昭和25年)、日本に導入される。
  • 1973年(昭和48年)、現在も使用されている手引書が発行される。
  • 1982年(昭和57年)、手引書の内容が一部改定される。
  • 1992年(平成4年)、改定増補版の手引書が発行される。(2002年現在も使用されている)

内容

JI(Job In-struction)仕事の教え方
JM(Job Methods)改善の仕方
JR(Job Relations)人の扱い方
JS(Job Safety)安全作業のやりかた
1968年(昭和43年)に、日本産業訓練協会によって追加された[1]

日本での実施例

以下に、日本におけるTWI研修の実施例をあげる。TWI研修を行う講師(トレーナー)養成のための訓練コースも、ここで述べる。

TWI研修を受ける対象者

各職場で指導者、監督者的な立場にある人。職場のリーダー的な人が対象である。

テキスト

厚生労働省職業能力開発局監修のテキストが「社団法人 雇用問題研究会」から発行されており、それが使用される。JI、JM、JRが1冊ずつ(合計3冊)である。ISBNコードも付されているが、一般の書店では発売されていないようである。テキストに「TWI訓練についてのご照会は、当研究会および各都道府県職業能力開発主管課ならびに職業能力開発協会、(社)日本産業訓練協会にお問い合わせください」と記されているので、自分の会社でTWIを行ないたい場合は最寄りの協会に問い合わせればよいだろう。

TWIトレーナー

TWIトレーナーとはTWI研修を行なう講師(トレーナー)のことであり、各職場で指導者的立場にある人たちに対して「TWI研修」を行う。

TWIのトレーナー(講師)は下記の1.または2.のいずれかとなる。

  1. 外部に委託し、講師を派遣してもらう。
  2. 自社の社員をトレーナーとして訓練し、その社員がTWI研修のトレーナー(講師)となる。

ある程度以上の規模の企業では、自社の社員がトレーナー役を務めることが多い。

TWIトレーナー(監督者訓練指導員)の養成

TWI研修を行う講師役をTWIトレーナーという。日産訓から派遣してもらうこともできるが、自分の会社の社員をTWIトレーナーとして養成し、自社でTWI研修を実施することもできる。一定以上の規模の企業の場合、自社社員をトレーナーとして養成し自社内でTWI研修を実施することが多い。

トレーナーとなるためには、外部で専門の講習を受ける。東京周辺の場合、渋谷の日産訓で行なわれ、通常6日間程度である。このトレーナー養成訓練は非常にきびしいことで知られ、参加者には「宿題」や「予習」が課せられる。与えられた課題ができなければ容赦なく叱咤される。全国どこでも同じ内容、同じ水準の知識を伝授することがTWIトレーナーに求められる。自分の会社に帰ったTWIトレーナー達が我流の講習をしてしまったらTWIの大原則(決められたマニュアルの通り講習する)が崩壊してしまう。

  • 課題ができなかったらどうする?
    • 課題ができなかった場合に修了証が与えられないのかどうかは不明である。「できるまでやる」のが大原則なので、急病等で修了できなかった場合を除き、修了するはずである。というより習得するまで修了させてもらえないといったほうがよいのかもしれない。
  • 講習の内容は、TWI研修の指導員になるためのものである。内容は原則として自己流にアレンジしたりしてはいけない。教えられたとおりにやらなければならない。
  • TWIトレーナーは、トレーナー用教本を見ながら講習をする。トレーナー用の教本には、ほぼ全ページに「手順に従え。記憶に頼るな」と記載されており、教本を見ながらその教本のとおりに教えないといけない。したがって教本の内容を丸暗記する必要はない。逆に「記憶によって」教えてはならず「教本の手順に従い」教えなければならない。したがって内容の暗記は不要ではあるものの、どこに何が書いてあるのかは頭にいれておかないとならないのである。

電気コード結び

TWI-JIでおなじみなのが、「電気コード結び」である。内容は、まず、講師が「電気コード結び」という作業のやり方を受講者に教える。そして受講者がそれをやってみて、そしてさらにその受講者が他の受講者に、「電気コード結び」を教えるというものである。 電気コード結びという作業を題材にして、仕事の教え方について学ぶわけである。

アメリカ合衆国での扱い

アメリカ合衆国での、政府によるTWI研修の提供は1945年(昭和20年)に終了した。一説には、アメリカ合衆国でTWI研修が忘れ去られたのは、第二次世界大戦後、アメリカ産業が少しも深刻な競争に直面しなかったという、単純な事実によるものと言われている。効率のいい産業に競争が無かったことにより、改善を継続する必要性は、ほとんど省みられなかった。

同じ頃、諸外国の産業は戦争により壊滅状態であった。第二次世界大戦の敗戦国は、古い文化を排除し、新しい産業を確立する必要があった。この目的のため、TWIトレーナーが、ヨーロッパ諸国には占領軍によって送り込まれ、日本には、占領中にダグラス・マッカーサーによって送り込まれた。

脚注

  1. ^ a b 寺田盛紀『日本の職業教育』晃洋書房,p158
  2. ^ 厚生労働省監修『TWI活用の手引』社団法人 雇用問題研究会

参考文献

  • 寺田盛紀『日本の職業教育』晃洋書房,2009年

関連項目

外部リンク