ジェリコ・マイル/獄中のランナー

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ジェリコ・マイル/獄中のランナー」(原題:The Jericho mile) は1979年のアメリカのテレビ映画。マイケル・マンの監督デビュー作品である。

ジェリコ・マイル/獄中のランナー
The Jericho Mile
原作 パトリック・J・ノーラン
脚本 パトリック・J・ノーラン
マイケル・マン
監督 マイケル・マン
出演者 ピーター・ストラウス
ジェフリー・ルイス
ブライアン・デネヒー
音楽 ジミー・ハスケル
言語 英語
製作
撮影地 フォルサム刑務所
撮影監督 レックスフォード・L・メッツ
編集 アーサー・シュミット
制作 ABCサークルフィルム
製作 トム・ジンネマン
配給 ABC
製作費 $1,100,000
放送国・地域アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
1979年3月18日
放送時間97分
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ストーリー[編集]

第一級殺人で終身刑の身であるマーフィー(ピーター・ストラウス)は自由時間になるとひたすら運動場を走り続けていた。彼の見事な走りっぷりに興味を持ったカウンセラー(ジェフリー・ルイス)は、陸上コーチ(エド・ローター)を呼んでタイムを計測する。陸上競技選手並みの高記録を出すマーフィーに、カウンセラーはロサンゼルスオリンピックの選考会に挑戦してみないかと提案するが、彼は非協力的だった。

マーフィーの唯一の友人は隣の房にいる黒人のスタイルズ(リチャード・ローソン)だった。そのスタイルズに娘が生まれたと妻からの手紙が届いた。スタイルズは刑務所内で顔が利く白人グループのリーダー、ドクターD(ブライアン・デネヒー)に掛け合い、面会の順番を早めてもらえないかと頼み込む。マーフィーはドクターDを信用するなと忠告するが、娘の顔を早く見たい一心からスタイルズは友人の忠告を聞き入れなかった。

案の定、面会の場でマーフィーの前に現れたのは知らない女だった。スタイルズはドラッグの持ち込みに利用されたのだった。看守は2人の異変に気付き、女を拘束しドラッグを没収する。逆恨みされたスタイルズは白人グループに刺し殺されてしまう。

マーフィーはカウンセラーを呼び出し、選考会に出てやるから代わりに白人グループが仕切っている作業場で30分間1人にさせてくれと頼み込む。マーフィーは作業場を破壊し、隠してあった大量の現金を見つけ出してドクターDの目の前で燃やした。これが彼に出来る復讐だった。

一方、黒人グループのコットン(ロジャー・E・モーズリー)はマーフィーを呼び出し、スタイルズを死なせたという理由で殴り倒す。だが本当の目的はマーフィーの本心を聞き出すことだった。殴られながらも「あいつとは兄弟同然だった」と呟やくマーフィーを信じ、彼への協力を約束するのだった。

コーチのもとでマーフィーの特訓が始まった。黒人とヒスパニックのグループは協力し合って運動場から白人グループを追い出すと、マーフィーのために運動場を整備した。食堂では皆がミルクや果物、パンを分けてくれた。何の見返りもないのに自分のために尽くしてくれるコーチやカウンセラー、囚人たちの心遣いにマーフィーは心を打たれる。彼はカウンセラーに心を開き、なぜ自分が終身刑を受け入れたのか話し始めた。

そして完成したトラックでオリンピック選考会が始まった。

作品概要[編集]

ABCは「女刑事ペパー」の1エピソード[1]を監督したマイケル・マンの演出力を高く評価し、テレビ映画の監督を依頼した。マンはABCが所有する脚本の中から「白銀に賭ける恋」を選び、脚本を書き直してプリプロダクションに取り掛かった。主演とプロデューサーにデヴィッド・ソウルが決定したが、製作が始まる直前になってソウルが脊髄を損傷してしまったため企画を中断[2]。代わりにABCが提案したのが「ジェリコ・マイル」だった[3]。(白銀に掛ける恋は1980年にジェリー・ロンドン監督により映画された)

マンと原作者のパトリック・J・ノーランは脚本を書くため何度もフォルサム刑務所を訪ねた。刑務所に入ると白人・黒人・ヒスパニックがそれぞれ小さな社会を構築していることにまず驚かされたという。また囚人の房の壁に貼られていた妻と赤ん坊の写真が非常に印象に残った。この体験は刑務所を描く際に大いに役立った。

撮影期間は延べ21日間で、そのうち19日間が刑務所だった[4]。刑務所では暴力事件が日常的に起きていたが、撮影中に騒ぎが起きないようマイケル・マンと面識のあるエドワード・バンカーが各グループのリーダーに事前に声をかけてくれた。撮影時は28名の囚人が役者として参加しており、マン監督らは2時間毎に囚人の数を確認しなければならなかった[5]。囚人たちは協力的で最後まで順調に行われた。しかしこの期間に刑務所内の離れた場所で1件の殺人事件があり、囚人同士の傷害事件は毎日のように発生していたという[6]

本作は1979年のエミー賞の作品賞にノミネートされ、主演男優賞、脚本賞、編集賞を受賞した。マイケル・マンには20作品以上の監督のオファーが来たが全て断り、次作「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」に着手した。

出演[編集]

登場人物 俳優
ラリー"レイン"・マーフィー ピーター・ストラウス
R.C.スタイルズ リチャード・ローソン
コットン・クラウン(黒人グループのリーダー) ロジャー・E・モーズリー
ドクターD(白人グループのリーダー) ブライアン・デネヒー
ルビオ(ヒスパニックグループのリーダー) ミゲル・ピニェロ
ビル・ジャノウスキー(カウンセラー) ジェフリー・ルイス
ジェリー・ベロイト(陸上コーチ) エド・ローター
ウォーデン・アール・ガリヴァー(所長) ビリー・グリーン・ブッシュ
ジョーカー・ギブ リチャード・モール
オリンピック選考委員 ウィリアム・プリンス

脚注[編集]

外部リンク[編集]