花園メリーゴーランド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

花園メリーゴーランド』(はなぞのメリーゴーランド)は、柏木ハルコによる日本漫画。『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2001年24号から2002年48号まで掲載された。

ストーリー[編集]

漫画家・柏木ハルコの知人である、相浦基一(仮名)は春休みを利用して、相浦家に先祖代々伝わる刀「烏丸」(からすまる)を探しに旅に出たが、自身の不注意で目的地を通り過ぎてしまい、露頭に迷っていたところを少女・澄子に助けられ、一晩のご厄介になる。だが、そこは民宿だったため、宿泊費を請求された基一は財布をなくしたことに気づく。仕方なく実家から書留でお金を送ってもらい、到着するまでの間、この民宿にもうしばらくお世話になることとなった。そして、基一は「柤ヶ沢」での奇妙な性的風習に巻き込まれていく。

登場人物[編集]

相浦基一(あいうらきいち)※仮名
15歳。中学三年生 。家に伝わる「烏丸」の現在の行方を探すために旅に出たが、道に迷い柤ヶ沢(けびがさわ)にたどり着く。柤ヶ沢の風習「オコモリ」で半ば無理矢理に童貞を卒業する。セックスは見込みがあるらしい。ザ・ブルーハーツのファン。
澄子(すみこ)
中学生。基一と同様、ザ・ブルーハーツのファンで基一が家に帰ったらライブのビデオを送ってもらう見返りにブルーハーツのテレホンカードを手渡している。
無口で愛想は悪いが美人。家は民宿まさがやを経営している。口下手で行動が先に出るタイプ。そのため、色々と問題を拗れさす。
ツンデレで相浦に好意を寄せているものの、敵対的な態度をとったりもする。柤ヶ沢の風習により、近所のお兄さんから「村の女」としての手ほどきを受けながら処女喪失した。
基一とハルコが再び村を訪れた際、「民宿まさがや」は既に廃業しており、その近くにある「食堂はなぞの」を切り盛りしながら、小学生の長男を筆頭とした1女2男の子供を育てる26歳の母親となっていた。
みづえ
澄子とマサシの母親。33歳の大厄で村の風習である厄落としのために、度々相浦に迫ってくる。相浦が好みのせいもあるらしい、セックスを楽しむタイプ。
マサシ
みづえの息子で澄子の弟。顔に似合わず男性器が相浦より立派。
澄子との関係に悩む相浦に「夜這いして襲っちゃえば?」と無神経すぎるアドバイスをしたり、幸枝の妹に夜這いをかけたりする。
澄子の祖母
風習を護りたい一心で、基一に「早く村から出ろ」と煩く言う。
澄子の父
長い間家を空けているが、村の祭り事には必ず顔を出している。
サキ
不良中年の1人。雑貨屋で働く美人な28歳。「おこもり」で相浦の筆下ろしをする。
ヤエ
不良中年の1人。下品で豪快に笑う。顔はイマイチ。「おこもり」でマサシの筆下ろしをする。
カナエ
不良中年の1人。村の手伝いをし始めた相浦を強引に誘い畑でセックスをする。
幸枝
埼玉県のある中学で教師をしており、祭りのために帰省していた。良識があり、村の風習を嫌っている。マサシに間違って夜這いをかけられそうになる。
幸枝の妹
19歳。マサシが夜這いに来ると聞くと、笑って流す。祭りの時に相浦が父親と鉢合わせしないよう気を付けてくれる。
村の男達
杜氏をしている人が多く、酒造りの時期は村を空けている。
春子
相浦の友人の達郎の双子の妹。
わざわざ柤ヶ沢まで迎えに来るが、変わり果てた基一の姿にショックを受け、基一を連れて村を出ようとするも、澄子や村人たちの妨害に遭い、怖い体験をもすることとなる。
無事に村を脱出してから十数年後、漫画家・柏木ハルコとなった彼女は、この出来事を漫画として描くため、基一と再び村を訪れる。

用語[編集]

柤ヶ沢(けびがさわ)
山奥にある集落。当時の城主がこっそり作っておいた隠れ里。
殿様が美人をさらってきて村に隠していた事から、美人が多いとも言われている。
ハルコと基一が再び村を訪れると、大規模なスキー場ができて開けていた。人の出入りも増えたためか古い風習などは廃れており、かつての村人の一部はさらに山の奥に引っ込んでいるという。
民宿まさがや
宿と言っても看板もなく、お客も電話業者などが主で普段は農業をして牛を飼ったりして暮らしている。宿泊費は一泊4,500円。
なお、ハルコと基一が再び村を訪れた時点で廃業している。
雑貨屋
不良中年がよく集まってお茶会を開いている。タオルや歯ブラシ、テレカなどを売っている。
公民館
村の神社の傍にある施設。シャワー付き。行事の時に使われる。ハルコと基一が再び村を訪れた際にも残っており、当時の祭りの写真が飾られていた。
神社
村のお祭りで中心になる場所。奥は洞窟になっており、御神体が祀られている。
谷竹村
相浦の本来の目的地。父親の故郷。烏丸を探しにお寺に行く。
烏丸(からすまる)
相浦家に先祖代々伝わる日本刀で祖父が脳溢血で倒れた際、お寺の住職に「この刀に祟りがあるからお祓いする」と持って行かれ、そのまま行方不明となる。何とか澄子の協力で取り戻したものの、澄子の手で橋の上から投げ落とされたり、澄子の手元に置くなど、相浦を引き留めるための手段に使われた。
刃の切れ味は悪いが、相浦が村を逃げる時に大活躍する。
サクラタケ
殿様の好物。裏切って殿様を殺した側近はサクラタケを食べられない体質だったことから、客人に振る舞い、食べられるか食べられないかで信用できるかどうかを占うようになったという風習が残っている。
おこもり
セックスで童貞を喪失したことで「村の男」と認められる儀式でいわゆる集団形式の「筆下ろし」である。
幸枝曰く、児童福祉法など現行の法律では「違法」とされている行為であるため、村人たちはこの風習の存在が外に漏れるのを非常に恐れている。
そのため、澄子や一部の村人のように基一を柤ヶ沢の村人に仕立てようとしたり、澄子の祖母から「早くこの村から出ろ」「部屋から一歩も出るな」と厳命されるほどである。

書誌情報[編集]

  • 柏木ハルコ 『花園メリーゴーランド』 小学館〈ビックスピリッツコミック〉、全5巻[1]
    1. 暗闇の向こう側(2001年11月1日初版発行)、ISBN 4-09-186361-2
    2. トップシークレットの夜(2002年2月1日初版発行)、ISBN 4-09-186362-0
    3. 今は雪の中(2002年5月1日初版発行)、ISBN 4-09-186363-9
    4. 祭の朝(2002年8月1日初版発行)、ISBN 4-09-186364-7
    5. 宴(2003年1月1日初版発行)、ISBN 4-09-186365-5

脚注[編集]

  1. ^ 絶版。電子書籍として入手可能ではあるが、第5巻の巻末に掲載された民俗学者の岩田重則による解説は収録されていない。