直接数値シミュレーション

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直接数値シミュレーション(ちょくせつすうちシミュレーション、: Direct Numerical Simulation、DNS)とは、流れ(層流乱流)を数値的に解析するCFD手法の1つであり、以下の基礎方程式をそのまま(モデル化なしで)解き、流れに含まれる全ての大きさの渦をシミュレートすることである。

\frac{\partial \rho }{\partial t } + u_i \frac{\partial \rho }{ \partial x_i } = 0
\rho \frac{ \partial u_i }{ \partial t } + \rho u_j \frac{ \partial u_i }{ \partial x_j } + 
\frac{ \partial p }{ \partial x_i } - \mu \frac{\partial ^2 u_i}{\partial {x_j}^2}
-(\lambda + \mu ) \frac{\partial^2 u_i}{\partial x_i \partial x_j} = F_i

ここでp圧力、ρは密度、νは粘性係数、λは第2粘性係数である。各項はそれぞれ、

  • 左辺 - 第1項 : 時間項、第2項 : 移流項、第3項 : 圧力項、第4, 5項 : 粘性項
  • 右辺 - 第1項 : 外力項

である。

特徴[編集]

一般にDNSは、全ての大きさの渦を解像できるように十分細かい計算格子を用意する必要とするため、必要となる計算格子は膨大なものとなり、実用上は解析困難な場合が多い。特に、高レイノルズ数の流れにおいては最小渦のスケールが微細となるためDNSの適用は困難である。そのため、実際には乱流モデルを用いて解析されることが多い。

格子スケールとレイノルズ数の関係[編集]

DNSを行うには、全ての渦を計算できるように細かい計算格子を必要とする。実際に必要な格子点数は、次元解析から調べることができる。乱流の最小渦の大きさは、コルモゴロフ(Kolmogorov)のマイクロスケールηと呼ばれ、DNSではこの大きさまで細かく解像する必要がある。ここで、格子点の間隔をl と表すと次式となる。

 l \simeq \eta

ここで次元解析より、

 \eta =  \left( \frac{\nu^3}{\epsilon} \right) ^{1/4} = \left( \frac{\nu^3 L}{U^3} \right) ^{1/4}

と与えられる。粘性散逸率ε [m2/s3] は次式から与える。

 \epsilon = \frac{U^3}{L}

これらより格子点数N を求めると、

 N = \left[ O  \left( \frac  {L}{l} \right) \right] ^3 = O(Re^{9/4})

と表される。

ここでRe は、流れを特徴付ける無次元数のレイノルズ数であり、次式で表される。

 Re={UL\over (\mu /\rho)}={UL \over \nu}

ここで、U は代表速度 [m/s]、L は代表長さ [m] であり、流れ場のスケールとして平均速度と物体の大きさで表される。レイノルズ数Re は流れの乱れ具合を表すもので、この値が大きい程流れは強く乱れたものである。上式より、レイノルズ数が大きいほど、計算に必要な格子点数は増える。

たとえば、人が速度 1 m/s程度で歩くことを考えれば、必要な格子点数はN 109 程度となり[1]、その数値解析は容易ではない。

参考文献[編集]

  1. ^ 白樫正高; 増田渉; 高橋勉 『流体工学の基礎』 丸善、2006年、34頁。ISBN 4-621-07779-1 
  • 『数値流体力学シリーズ3 乱流解析』 東京大学出版会、1995年 
  • 梶島岳夫 『乱流の数値シミュレーション』 養賢堂、1999年 
  • 村上周三 『CFDによる建築・都市の環境設計工学』 東京大学出版会、2000年 
  • 社団法人 土木学会 応用力学委員会編 『いまさら聞けない計算力学の常識』 丸善、2008年