埋込フォトダイオード

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埋込フォトダイオードとは、電荷蓄積部が半導体表面に露出し浮遊状態にある表面型受光素子に対して、電荷蓄積部が半導体表面には 露出されていない構造を持つ埋め込み型受光素子であり、NPN接合または PNP接合のトランジスタ構造を持つフォトダイオードのことである。 受光面に直接露出していないベース領域が埋め込み層として光電荷蓄積部となる構造を持つ。

埋込フォトダイオード(または埋め込みフォトダイオード)の構造や動作原理については多くの解説があるが、一例として「電子情報通信学会「知識ベース」8 群-4 編-1 章」のP46[1]などがある。


埋め込み型フォトダイオード[編集]

最初のNPNP接合型の埋め込みフォトダイオードは、1975年10月23日にソニーから特許出願が行われている。[2]

その構造は、コレクタ端子を受光面とし、エミッタ端子を過剰電荷の掃き出し端子とし、ベース領域を電荷蓄積部とするPNP接合のトランジスタ構造を示していた。 ベース領域に蓄積された信号電荷はリセット時に、隣接する電荷転送電極を通して受け皿となる電荷転送装置に信号電荷を転送するPNP接合、またはNPN接合のダイナミック・フォトトランジスタ構造をしていた。

1975年6月7日にはオランダのフィリップスが PNP接合型の埋め込みフォトダイオード受光素子構造をInterline Transfer (ILT)CCDイメージセンサ として考案しているが、これは表面がピン留めされていない埋め込みフォトダイオードであった。[3]

また、1980年10月2日にNECから出願された特許[4]でも同様の内容が提案されているが、この受光素子も Pinned Photodiodeではない。

フィリップス社とNECのPNP接合型受光素子は、高抵抗基板と導通する構造になり、RC遅延があり残像が生じ高速電子シャッターなどの用途には適合できない問題があった。受光面の電位が固定されピン留めされていることが残像特性をなくす必要条件であるとまだSONYの萩原以外は世界でだれも理解していなかった。SONYに続いて1984年にはKODAKがその事実を悟りIEDM1984でPinned Photodiodeと命名した。


英文のWikepadiaの記述は英文しか理解できない投稿者による間違いと誤解がある記述である。そもそののこの誤解は寺西氏が英語圏の学会で埋め込みダイオードのすばらしい改良努力の内容をIEDM1982で報告する時の、先行者の仕事を報告せなかったこと、今でいうなりすまし詐欺(犯罪に相当)を犯したことである。当時の常識として部下や他人も成果をピンはねする横行が古い日本企業や大学では公然と行われていた時代で、日本が国際社会から非難を受けた時でもあった。SONY自身も問題があった。1975年出願の3件の特許も1977年と1978年の世界最初の日本国内学会発表も英語圏には伝達されていなかったことが最大の問題であった。SONYは2020年6月26日に初めて社外に萩原良昭氏の1975年の3件の出願特許と1978年のPNP接合型のPinned Photodiodeの原理試作が世界発のオリジナル論文であったことを公式にSONYは公開開示した。これでは静かに努力する発明者や開発技術者が浮かばれない不幸な過去の出来事であった。これは氷山の一角であり、多くの日本の半導体の開発技術者が企業から使い捨てにあい過少評価された結果である。これでは努力しても報われない日本の半導体電子部品産業に若者は関心をもつことがなく、日本の半導体産業の衰退は避けることができないと憂慮されている。

Pinned Photodiode[編集]

Pinned Photodiode(PPD)はピン留めフォトダイオード[5] とも呼ばれる、埋め込み型フォトダイオードの一種で、受光面が外部電圧によりピン留め固定さ れた受光素子である。ピン留めされる事が残像のない受光素子として機能するために必要条件となる。

往々にして"PINダイオード (p-intrinsic-n Diode)"と混同されることがあるので注意が必要である。

Pinned Photodiodeは必ず埋め込み型フォトダイオードであるが、埋め込み型フォトダイオードは必ずしも Pinned Photodiodeではない。Pinned Photodiodeは必ず受光面の電圧が固定される必要があり、それが残像のない特性を実現する為の必要条件となる。

ソニーから1975年10月23日にソニー萩原良昭により出願されたもう1件のNPN接合の発明特許 [6] と、その発展形として1975年11月10日に出願されたPNP接合の発明特許[7]の受光素子構造は、受光面の電圧がピン留め固定された Pinned Photodiode の発明であった。CCDと同様の完全電荷転送能力、残像のない特徴を持ち、かつ、In-pixel Anti-blooming 機能、高周波数電子シャッター機能とCMOSイメージセンサーには不可欠な、Gloabal Shutter 機能を装備した受光素子の発明であった。それが1975年の発明から44年後の2019年になり初めてSONYは実用量産化に成功した。ソニーのホームページにも「裏面照射型CMOSイメージセンサーに採用されたPinned Photodiode」[8] と題してCMOSイメージセンサーの発明の歴史がより詳細に解説されている。

また、「戦後日本のイノベーション100選」には「1979年には寺西信一(当時 NEC)が、白傷や暗電流を大幅に低減し、残像や転送ノイズを解消する埋込フォトダイオード(Pinned Photodiode)を発明した」[9] と改良開発努力が進められてきた経緯が示されているが、あくまで改良であり、発明とは言えない。この発明協会の記載は事実誤認記載MISLEADINGな記載である。日本の恥をさらけ出している。

参考文献(年代順)[編集]

  • Y. Hagiwara, Japanese Patent App 50-134985, 1975.
  • T. Yamada, H. Okano, and N. Suzuki. “The evaluation of buriedchannel layer in BCCD’s,” IEEE Trans. Electron Devices, vol. 25, no. 5, pp. 544–546, May 1978.
  • Y. Daimon-Hagiwara, M. Abe, and C. Okada, “A 380Hx488V CCD imager with narrow channel transfer gates,” Japanese J. Appl. Phys., vol. 18, supplement 18–1, pp. 335–340, 1979.
  • N. Teranishi, A. Kohono, Y. Ishihara, E. Oda, and K. Arai, “No image lag photodiode structure in the interline CCD image sensor,” in Proc. IEDM, Dec. 1982, pp. 324–327.
  • B. C. Burkey et al., “The pinned photodiode for an interline-transfer CCD image sensor,” in Proc. IEDM, Dec. 1984, pp. 28–31.
  • N. Teranishi, Y. Ishihara, and H. Shiraki, Japanese Patent JP 1,728,783, 1990.
  • E. R. Fossum, “Ultra low power imaging systems using CMOS image sensor technology,” in Proc. SPIE Adv. Microdevices Space Sci. Sensors, vol. 2267. 1994 pp. 107–111.
  • Y. Hagiwara, “High-density and high-quality frame transfer CCDimager with very low smear, low dark current and very high blue sensitivity,” IEEE Trans. Electron Devices, vol. 43, no. 12, pp. 2122–2130, Dec. 1996.
  • K. Yonemoto, H. Sumi, R. Suzuki, and T. Ueno. “A CMOS image sensor with a simple FPN-reduction technology and a hole accumulated diode,” in Proc. ISSCC, Feb. 2000, pp. 102–103.
  • Y. Hagiwara, “Microelectronics for home entertainment,” in Proc. ESSCIRC, Sep. 2001, pp. 153–161.
  • E.R. Fossum, D.B. Hondongwa, "A Review of the Pinned Photodiode for CCD and CMOS Image Sensors," IEEE J. Electron Device Soc. 2014, 2, 33–43.

出典[編集]

  1. ^ 埋め込みフォトダイオード”. 2022年3月14日閲覧。
  2. ^ 「固体撮像装置」特願昭50-127646/特開昭52-51815
  3. ^ 「映像感知装置」特願昭51-065705/特開昭51-150288
  4. ^ 「固体撮像装置とその駆動方法」特願昭55-138026/特開昭57-062557
  5. ^ イメージセンサ用フォトダイオードの改良”. 2022年3月15日閲覧。
  6. ^ 「固体撮像装置」特願昭50-127647/特開昭52-51816
  7. ^ 「固体撮像装置」特願昭50-134985/特開昭52-58414
  8. ^ 積層型多機能CMOSイメージセンサーを支える代表的なソニー発明について”. 2022年3月15日閲覧。
  9. ^ イメージセンサー(CCD・CMOS)”. 2022年3月19日閲覧。