全会一致の幻想

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全会一致の幻想(ぜんかいいっちのげんそう、: Illusion of Unanimity)は、集団思考において、グループの結束を乱したくないという感情からくる自己検閲および「異論が無い事とは賛成を意味する」という間違った認識により全会一致の状況が作られていくこと。

解説[編集]

全会一致の幻想とは、集団思考(集団で意思決定を行おうとする際、集団の結束を乱したくないという心理作用を原因として、客観的で批判的な思考および判断が妨げられる現象)に陥る際の兆候の1つである。

自己検閲(集団の結束を乱したくないという心理作用から、疑問や反論を自ら控える心理的傾向)および「異論が無い事とは賛成を意味する」という間違った認識により、各個人としては異論や意見があるにも拘らず、全会一致の状況が作られていく兆候を指す。

対処法[編集]

こうした状況に陥らないための対処法として、以下のものが考えられる。

  • 批判的な意見を歓迎する環境作り
  • 結論を先に提示しない
  • 少人数のグループに分けて議論を行う
  • 会議において異議申立担当(Devil's advocate)を最低1人設定する
  • 全員が賛成、あるいは全員が反対、という事例は存在しないとの原則に立ち、もし全会一致が起きた場合、誰かが議論の過程で意見の表明を控えた可能性があると考え、採決を無効にし、議論を振り出しに戻す

関連文献[編集]

  • Irving L. Janis, "Victims of Groupthink," 1972; Houghton Mifflin Company; ISBN 0-395-14044-7
  • 深堀元文『心理学のすべてがわかる本』119頁、日本実業出版社、2007年、ISBN 978-4534041821

関連項目[編集]

外部リンク[編集]