デーヌカ

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デーヌカと戦うバララーマ。1585年から1590年頃。

デーヌカ: धेनुक, Dhenuka)は、インド神話に登場するラークシャサもしくはアスラである[1]。『バーガヴァタ・プラーナ英語版』によるとデーヌカはロバの姿をしており、バララーマによって退治されたと伝えられている[2][3]

神話[編集]

クリシュナとバララーマが少年時代を過ごしたゴークラの近くには、椰子の生い茂る大きな森があり、その場所はいつも多くの果実であふれていた。デーヌカはその果実を守り、さらにたくさんのロバがデーヌカを取り囲んで守っていた。デーヌカは人肉を食べたため、人々は怖がって近づかなかった[4]。少年だったクリシュナとバララーマは友人のシュリーダーマーからデーヌカのことを聞き、果実を食べたがる友人のために森へと向かった。彼らが森にやって来て、木々の枝から果実を落していくと、デーヌカは激しく怒り、後足でバララーマを激しく蹴り上げた。しかしバララーマはそれをものともせず、片手で悪魔の足を掴んで振り回した。振り回されるうちに悪魔は息絶え、バララーマが椰子の木に投げつけると、椰子の木は大きく曲がりながら隣の木を揺らしていき、しまいにはその振れで森全体が揺れ動いた。デーヌカが殺されるのを見た他のロバたちは憤慨し、クリシュナとバララーマに突進したが、2人はいともたやすく返り討ちにした[5]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『インド神話伝説辞典』p.218「デーヌカ」の項。
  2. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻15章23。
  3. ^ 上村勝彦、p.309。
  4. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻15章21-24。
  5. ^ 『バーガヴァタ・プラーナ』10巻15章26-40。

参考文献[編集]

  • 『バーガヴァタ・プラーナ 全訳 下 クリシュナ神の物語』美莉亜訳、星雲社・ブイツーソリューション、2009年。ISBN 978-4434131431 
  • 『インド神話 マハーバーラタの神々』上村勝彦訳、ちくま学芸文庫、2003年。ISBN 978-4480087300 
  • 菅沼晃編 編『インド神話伝説辞典』東京堂出版、1985年。ISBN 978-4490101911