イルディコ

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『アッティラの死』ペシカ・フェレンツハンガリー語版

イルディコ(Ildikó、Ildoco、fl. 453年ころ)は、フン族の王アッティラの最後の妻。彼女の名は、東ゲルマン語群のものであり、ゴート族出身であった可能性がある。プリスクス英語版によるとしてヨルダネスの『ゲチカ (Getica)』が伝えるところでは、アッティラは、453年にイルディコとの結婚の祝宴を開いた後、重篤な鼻血を引き起こして呼吸困難に陥り、昏睡状態となって絶命したという。

歴史家プリスクスによれば、死の直前、既に何人もの妻をもっていた彼は、イルディコという名の非常に美しい少女と、部族のしきたりに従って結婚式を挙げた。結婚式の場で、彼は喜び過ぎているように振る舞い、ワインを飲みすぎて仰向けになって寝込んだが、大量の鼻出血を起こし、普通なら鼻から下る出血が、そのように流れ出ることができずに喉に回って窒息を引き起こし、彼を死に至らしめた。こうして、泥酔が、戦場に名を馳せた王に不名誉な死をもたらしたのである。翌日、午前中の遅い時刻になってから、何らかの災いを懸念した宮廷の者たちが大きな声をあげ、さらにドアを破って部屋に入った。すると、アッティラは既に大量の血の海の中で死んでおり、傷はどこにもなく、顔を伏せた少女がベールを被って涙を流していた。[1]

一部の著作家たちは、イルディコを『ニーベルングの指環』の伝説に登場するクリームヒルトと結びつけて、イルディコが意図してアッティラを殺し、同族を殺されたことに復讐したのではないかと考えている[2][3]

脚注[編集]

  1. ^ JORDANES. THE ORIGIN AND DEEDS OF THE GOTHS. translated by Charles C. Mierow. Transcribed by J. Vanderspoel, Department of Greek, Latin and Ancient History, University of Calgary. [1]
  2. ^ Ludlow, John Malcolm (1865). Popular epics of the middle ages of the Norse-German and Carlovingian cycles.. Macmillan & C. pp. 93–4. OCLC 834760550 
  3. ^ Tolkien, J. R. R. (John Ronald Reuel), 1892-1973. (2009). The legend of Sigurd and Gudrún. Tolkien, Christopher.. Boston: Houghton Mifflin Harcourt. pp. Appendix A, S1. ISBN 9780547504711. OCLC 619981939 

関連項目[編集]

  • en:Gudrun - ドイツや北欧の伝説で、アッティラを殺害したとされる妻