「古代北ユーラシア人」の版間の差分
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[[File: Dispertion日本語.jpg |upright=2.1|thumb| 古代の北ユーラシア人(ANE)ネットワークは、いくつかの旧石器時代のシベリアのサンプルで構成され、ユーラシア大陸の多種多様な集団に祖先をもたらした。]] |
[[File: Dispertion日本語.jpg |upright=2.1|thumb| 古代の北ユーラシア人(ANE)ネットワークは、いくつかの旧石器時代のシベリアのサンプルで構成され、ユーラシア大陸の多種多様な集団に祖先をもたらした。]] |
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[[File: Ancient_North_Eurasian_and_Native_American_admixture_graph日本語.jpg |thumb| 古代北ユーラシア人の形成と、その後のアメリカ先住民の形成への寄与を示すMaierら(2023)によるqpGraph<ref>{{Cite journal |last1=Maier |first1=Robert |last2=Flegontov |first2=Pavel |last3=Flegontova |first3=Olga |last4=Işıldak |first4=Ulaş |last5=Changmai |first5=Piya |last6=Reich |first6=David |date=2023-04-14 |editor-last=Nordborg |editor-first=Magnus |editor2-last=Przeworski |editor2-first=Molly |editor3-last=Balding |editor3-first=David |editor4-last=Wiuf |editor4-first=Carsten |title=On the limits of fitting complex models of population history to f-statistics |journal=eLife |volume=12 |pages=e85492 |doi=10.7554/eLife.85492 |pmid=37057893 |issn=2050-084X|pmc=10310323 |doi-access=free }}</ref>。]] |
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ジェニファー・ラフによれば、古代北ユーラシアの集団は、2万5千年ほど前に古代東アジアの娘集団と遭遇して混血し、それがアメリカ大陸の先住民の祖先集団の出現につながったという。しかし、混血が起こった正確な場所は不明であり、2つの集団を統合した移動の動きについても議論の余地がある<ref name="Raff188">{{cite book |last1=Raff |first1=Jennifer |title=Origin: A Genetic History of the Americas |date=8 February 2022 |publisher=Grand Central Publishing |isbn=978-1-5387-4970-8 |page=188 |url=https://books.google.com/books?id=C5jrDwAAQBAJ&pg=PT188 |language=en}} 「現在の推定では、先住民族の祖先の約63%は東アジア系で、残りは古代北シベリア系である。この相互作用がどこで起こったのかは定かではない。一部の考古学者は、この相互作用は東アジアで起こったと考えており、シベリア人がLGMの間に移動した場所であることを示唆している。」…「しかし、他の考古学者や遺伝学者は、アメリカ先住民の2つの祖父母集団の出会いは、[[最終氷期極大期]]に対応して人々が南ではなく北に移動したために起こったと主張している。」</ref>。 |
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一説によると、古代の北ユーラシア人は南下して東アジア、または南シベリアに移動し、そこで古代の東アジア人と遭遇して混血したと考えられている。モンゴルのバイカル湖から得られた遺伝学的証拠は、この地域が混血が起こった場所であることを支持している<ref>{{harvnb|Raff|2022|p=188|ps=: 「マリタ遺跡の集団--古代の北シベリア人--は、2万5千年ほど前に、この章の冒頭で述べた東アジアの娘と遭遇し、彼らと交雑したようだ。」…「この相互作用がどこで起こったのかは定かではない。考古学者の中には東アジアで起こったと考える者もいる。」…「遺伝的証拠からも、この相互作用がシベリアのバイカル湖周辺で起こったとする説もある。本章で前述したように、古シベリア人は約25,000年前にアメリカ先住民の東アジアの祖先から分かれた。彼らは、UKYとして知られるバイカル湖地方の後期旧石器人と、コリマ1として知られる約9800年前のシベリア北東部の人のゲノムから知られている。」}}</ref>。 |
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しかし、第三の説である「ベーリンジアン行き詰まり仮説」は、東アジア人が代わりに北から北東シベリアに移動し、そこで古代北ユーラシア人(ANE)と混血し、後にベーリンジアで分岐し、そこで明確なアメリカ先住民の系統が形成されたというものである。この説はmtDNA(母系)と核DNAの証拠によって支持されている<ref>{{harvnb|Raff|2022|pp=188–189|ps=:「しかし、他の考古学者や遺伝学者は、アメリカ先住民の2つの祖父母集団の出会いは、LGMに対応して人々が南ではなく北に移動したために起こったと主張している。このシナリオでは、UKYのような古シベリア人の子孫は、ベリンギアからシベリアに南下して再定住した結果である可能性がある。その理由は、アメリカ先住民のミトコンドリアゲノムと核ゲノムの両方が、彼らが長期にわたって他のすべての集団から隔離されていたことを示しており、その間にアメリカ先住民の集団にのみ見られる遺伝的形質が形成されたからである。この発見は、当初は古典的な遺伝マーカーとミトコンドリアの証拠に基づいていたが、ベーリンジアン孵化、ベーリンジアン停止、ベリンジアン行き詰まり仮説として知られるようになった。」}}</ref>。グレベニュクによれば、2万年前以降、古代東アジア人の一派がシベリア北東部に移動し、古代北ユーラシア人(ANE)の子孫と混血した結果、極東アジアの極限の地に{{日本語版にない記事リンク|古代古シベリア人|en|Ancient Paleo-Siberian}}とアメリカ大陸の先住民が出現したという<ref>{{cite book |last1=Grebenyuk |first1=Pavel S. |last2=Fedorchenko |first2=Alexander Yu. |last3=Dyakonov |first3=Viktor M. |last4=Lebedintsev |first4=Alexander I. |last5=Malyarchuk |first5=Boris A. |series=Springer Geography |title=Humans in the Siberian Landscapes |date=2022 |publisher=Springer International Publishing |isbn=978-3-030-90060-1 |page=96 |chapter-url=https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-030-90061-8_4 |language=en |chapter=Ancient Cultures and Migrations in Northeastern Siberia|doi=10.1007/978-3-030-90061-8_4 |quote=「最新の古遺伝学的データによると、東アジアの集団はおよそ20,000~18,000年前にシベリア北東部に移住した。この移動は、ヤナRHS遺跡出土人骨とマリタ遺跡出土人骨のゲノムに代表される "古代北シベリア人 "の子孫との混血を伴っていた。このようなプロセスは、ベーリンジアの伝統がこの地域で広く普及したことに反映され、極東アジアにいくつかの祖先系統(図1)を出現させた:ドゥバニー・ヤールの個体のゲノムに代表される古代古シベリア人と、アメリカ先住民の祖先である。後者のタイプはその後、古代ベーリンジアンとその他のすべてのアメリカ先住民に分かれた(Moreno-Mayarら(2018)、Sikoraら(2019))」}}</ref><ref name="Springer International Publishing">{{Citation |last1=Grebenyuk |first1=Pavel S. |title=Ancient Cultures and Migrations in Northeastern Siberia |date=2022 |url=https://doi.org/10.1007/978-3-030-90061-8_4 |work=Humans in the Siberian Landscapes: Ethnocultural Dynamics and Interaction with Nature and Space |pages=89–133 |editor-last=Bocharnikov |editor-first=Vladimir N. |place=Cham |publisher=Springer International Publishing |language=en |doi=10.1007/978-3-030-90061-8_4 |isbn=978-3-030-90061-8 |access-date=2023-01-09 |last2=Fedorchenko |first2=Alexander Yu. |last3=Dyakonov |first3=Viktor M. |last4=Lebedintsev |first4=Alexander I. |last5=Malyarchuk |first5=Boris A. |series=Springer Geography |editor2-last=Steblyanskaya |editor2-first=Alina N.}}</ref>。しかし、ベーリンジア行き詰まり仮説はY-DNA(父系)のDNA証拠によって支持されていない。これはアメリカ先住民における父系と母系の異なる集団史を反映している可能性があり、これは珍しいことではなく、他の集団でも観察されている<ref>{{cite journal |last1=Hoffecker |first1=John F. |title=Beringia and the global dispersal of modern humans: Beringia and the Global Dispersal of Modern Humans |journal=Evolutionary Anthropology: Issues, News, and Reviews |date=4 March 2016 |volume=25 |issue=2 |pages=64–78 |doi=10.1002/evan.21478 |pmid=27061035 |s2cid=3519553 |url=https://www.researchgate.net/publication/301252212 |language=en}} 「TammらによるmtDNAのデータで観察されたパターンは、Y-DNAや常染色体DNAではまだ明確に現れていない。Y-DNAデータに同様のパターンが見られないのは、父系と母系の歴史が異なることを反映していると考えられるが、これは世界の他の地域(例えば南アジア)で見られるパターンであり33、常染色体DNAにおける停止仮説は、9番染色体上のマイクロサテライト遺伝子座(D9S1120)における対立遺伝子の分布が、mtDNAのデータに見られるパターンと類似していることから、いくらか裏付けられるかもしれない34"。」</ref>。 |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
2023年11月11日 (土) 09:51時点における版
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考古遺伝学では、古代北ユーラシア人(ANE)という用語は、マルタ・ビュレット文化(c. 24,000 BP)の人々や、シベリアのアフォントヴァ山遺跡の後期旧石器時代の人々のような、彼らに近縁の集団の系統を表す祖先構成要素に与えられる名前である[6][7]。遺伝学的研究によると、ANEはヤナRHS遺跡(英語: Yana Rhinoceros Horn Site)(c. 32,000BP)に先行する2つの古代標本に代表される古代北シベリア人(ANS)と近縁である。古代北シベリア人(ANS)は、それ以前の古代北シベリア人(ANS)集団の子孫と考えることもできるし、古代北シベリア人(ANS)と古代北ユーラシア人(ANE)の両方が、分化はしているものの密接に関連した姉妹系統であり、どちらも初期の西ユーラシア狩猟採集民(代表的なものとしてはコステンキ遺跡(英語: Kostyonki–Borshchyovo)c. 40,000 BP),[8]古代東ユーラシア人集団との混交から生まれたと考えることもできる。古代北ユーラシア人(ANE)も古代北シベリア人(ANS)も、その祖先の約1/3は初期東ユーラシアの系統に由来し、約2/3は初期西ユーラシアの系統に由来する。[注釈 1][注釈 2][9][10][11]
2万年から2万5千年前頃に、古代北ユーラシア人の一派が古代北東アジア人と混血し、古代ネイティブアメリカン(英語: Paleo-Indians)、古代ベリンジア人(英語: Ancient Beringian)、古代古シベリア人の集団が出現した。この集団の混血がどこで起こったのかは正確にはわかっておらず、2つの対立する説が、古代北ユーラシア人と古代東アジア人の集団を結びつける異なった移動シナリオを提唱している[12]。
古代北ユーラシア人(ANE)は、後期旧石器時代以来、様々な移動の中でユーラシア大陸とアメリカ大陸に広がっており、今日の世界人口の半分以上は、そのゲノムの5〜40%が古代北ユーラシア人に由来している[13]。多くの古代北ユーラシア人(ANE)はアメリカ大陸の先住民族や北ヨーロッパ、南アジア、中央アジア、シベリアの地域に見られる。彼らの神話には、インド・ヨーロッパ語族とネイティブ・アメリカンの寓話に見られる、死後の世界への道を犬が守るという物語が含まれている可能性が示唆されている[14]。
遺伝子研究
定義
古代北ユーラシア人(ANE)の系統は、1920年代に発見された中央シベリアのマリタ遺跡から出土した2万4千年前の最終氷期極大期に生きていた少年の個体の遺骨:MA-1との関連によって定義される。ヤナRHS遺跡(英語: Yana Rhinoceros Horn Site)のサンプル、アフォントヴァ山遺跡の個体とともに「古代北シベリア人」と総称される[15][16]。
古代北ユーラシア人は、旧石器時代および中石器時代のヨーロッパの狩猟採集民と深い関わりを持つ、より大きなユーラシア遺伝子プールの遺伝的多様性の中で、明確なクラスターを代表している[18]。現生人類の集団に見られる祖先としての古代北ユーラシア人(ANE)は、マリタ遺跡の個体やヤナRHS遺跡の個体ではなく、アフォントヴァ山遺跡の個体につながる集団からもたらされたものが大部分であることが示唆されている[19]。
形成
古代北ユーラシア人の遺伝子プールの形成は、ヨーロッパの狩猟採集民に深く関係する西ユーラシア初期の後期旧石器時代(UP)の系統と、古代東ユーラシア人の系統の合併によって、非常に早い時期に起こった可能性が高い。後期旧石器時代の初期(IUP)系統は、現代の東アジアや東南アジアの集団の基底にある。北東シベリアのヤナRHS遺跡(31,600BP)、マルタ・ビュレット文化、およびアフォントヴァ山遺跡の古代北ユーラシア人(ANE)/古代北シベリア人(ANS)関連サンプルは、祖先の約2/3が初期西ユーラシア人(約38kya)に由来し、初期東ユーラシア人(>40kya)の寄与が22-50%と、ばらつきはあるが大きい。西ユーラシアの祖先はロシアのコステンキ-14、ロシアのスンギル、ルーマニアの Peștera Muierilor など[21]のヨーロッパの狩猟採集民に見られる祖先と関連付けることができ、東ユーラシアの祖先は東ユーラシアの深い系統と関連付けることができる、その一方で、彼らの東ユーラシアの祖先は東ユーラシアの深い系統に関連付けることができる。例えば、現代の東/東南アジア人の祖先である旧石器時代の田園洞人だけでなく、すべての古代東ユーラシア人(オーストラリア人など)の祖先である初期のウスト・イシム人など、複数の初期の東ユーラシアの標本との親和性を示している。古代北ユーラシア人の中の東ユーラシア人の構成要素の正確な起源はまだ明らかにされていないが、田園洞人の姉妹系統として最もよく表されている[22][23][24][25][26][27][注釈 3][注釈 4] [28]。
グレベニュクらは、古代北ユーラシア人は古代北シベリアのヤナRHS遺跡の出土人骨の属する集団の子孫であり、それは初期後期旧石器時代の狩猟民族であり、同時代の南シベリアの遺跡に関連する同様の集団と結びついていたとまとめている。これらの南シベリアと中央アジアの狩猟民族のコミュニティは、解剖学的な現生人類がシベリアに移動した初期の波のひとつに属していた。著者らは、「解剖学的に現生人類による北東アジアへの最初の人口移動は、西から東へ、あるいは南から北へ起こった可能性がある」とまとめている[29]。シコラらは、古代北ユーラシア人(マリタ遺跡とアフォントヴァ山遺跡の個体)は古代北シベリアのヤナRHS遺跡の集団の直接の子孫である可能性は低いと指摘し、むしろ両者は共通の祖先を共有する姉妹系統であると主張している。シコラらによれば、マルタのサンプルはさらに初期のコーカサス狩猟採集民(英語: Caucasus hunter-gatherer)の遺伝子流入も受けている可能性がある(約11%)[16]。しかし、このシナリオはMaierら2023年によって疑問視されており、この結論は他の発表論文と矛盾しており、古代北ユーラシア人(ANE)集団とコーカサス狩猟採集民(CHG)集団の間で観察された親和性と同様に遺伝子流動の方向性も混血グラフの分析では証明できず、さらなる調査が必要であるとしている[30]。
リプソンとライヒ(2017)は、マルタのサンプルをモデル化して、西ユーラシアを祖先とし、東アジア人の基底系統(アミ族に代表される)からの混血を追加した。また、マルタから東アジア人への逆遺伝子流入の可能性にも言及したが、これは利用可能なデータではあまり支持されなかった[28]。Yangら(2020a,b)は、マルタ標本とヤナ標本の両方が、ヨーロッパの狩猟採集民であるKostenki-14の姉妹系統と、基原東アジア人である田園洞人の基原系統または同時代の系統の合併から形成されたことを裏付けた。 その一方で、古代北ユーラシア人(ANE)から田園洞人や現代の東アジア人への遺伝子の逆流を示す証拠は見つかっていない[31][32]。他の研究では、古代北ユーラシア人(ANE)と田園洞人(または他の上部旧石器時代の東/東南アジアの標本)との間の共通の親和性を再現することができ、また、田園洞人と少なくない量の古代北ユーラシア人(ANE)祖先系統を受け取った東ヨーロッパ狩猟採集民との間のより高い親和性も確認された[33]。
分布
3万2千ya頃までには、古代北ユーラシア人(ANE)に関連する祖先を持つ集団がユーラシア大陸北東部に広く分布していたと考えられる。彼らはアラスカやユーコンまで拡大した可能性があるが、最終氷期極大期により厳しい気候条件が到来したため、高緯度地域を放棄せざるを得なくなった[35]。
マリタ遺跡から出土した人骨であるMA-1とアフォントヴァ山遺跡から出土した人骨に遺伝的に類似した集団は、重要な順にアメリカ先住民、ヨーロッパ人、古代中央アジア人、南アジア人、いくつかの東アジアの集団に遺伝的に重要な一定以上の貢献をした[36]。Lazaridisら(2016:10)は「ユーラシア大陸の東西の範囲にわたるANEの祖先の連続変異」に注目している。2016年の研究によると、古代北ユーラシア人(ANE)の祖先を世界で最大で最も多く受け継いでいるのは現代のケット人、マンシ人、アメリカ大陸先住民、セリクプ人である[6][36]。
古代の青銅器時代のステップヤムナ文化とアファナシェヴァ文化の文化から出土する人骨は、50%程度の有意な古代北ユーラシア人(ANE)の成分を有することが判明した[38][39]。Moreno-Mayarら(2018)によると、アメリカ先住民の祖先の14%から38%は、古代北ユーラシア人(ANE)であるマリタ遺跡出土人骨の集団からの遺伝子流入に由来する可能性がある。この違いは、後発の「ネオ・シベリア系」移住がアメリカ大陸に浸透したことに起因しており、古代北ユーラシア人(ANE)の祖先の割合が最も低いのはイヌイットとアラスカ先住民で、これらのグループはおよそ5,000年前にアメリカ大陸に移住した結果である[40]。第一波のアメリカ先住民におけるANEの祖先の推定[41]は、南アメリカのアンデス地域に属する人々の42%など、より高いパーセンテージを示している[41]。アメリカ先住民におけるもうひとつの遺伝子の流れ(彼らの祖先の残り)は、東アジアに関連した起源であり、具体的には3万年ほど前に他の東アジア人と分岐した[24]。約17,000年前のシベリア中南部の別のアフォントヴァ山遺跡出土人骨(Afontova Gora-2)の遺伝子配列決定から、マリタ遺跡出土人骨(Mal'ta boy-1)と同様の常染色体の遺伝的特徴が明らかになり、この地域が最終氷期最盛期を通じて人類によって継続的に占領されていたことが示唆された[24]。
ゲノム研究はまた、古代北ユーラシア人(ANE)の構成要素は旧石器時代よりずっと後に、ヤムナヤ文化に関連する人々によって西ヨーロッパに持ち込まれたことが示している[38][6]。それは現代のヨーロッパ人でも報告されている(10%~20%)[38][6]。旧石器時代の東ヨーロッパ狩猟採集民との交流を通じて、ヨーロッパの集団に追加的な古代北ユーラシア人(ANE)の祖先系統が見つかっており、そこからスカンジナビアの狩猟採集民のような集団が生まれた[42]。
シベリアのデニソワ洞窟で発見された古代北ユーラシア人(ANE)の時代の女性の遺伝子が染み込んだ鹿の歯のペンダントは、現在から約24,700年前のものである。彼女は、さらに東で発見されたマリタ遺跡やアフォントヴァ山遺跡の出土人骨の標本と近縁である[37]。
古代の田園洞人と現代の東/東南アジアの集団は、後期旧石器時代の西ユーラシアまたはANE関連の混血を欠いていることが判明しており、このことは、「これらの集団が、流入してきた旧石器時代の集団移動に抵抗していた」こと、あるいは、遺伝的に東アジアに類似した集団リザーバーからの再拡大であったことを示唆している[43]。
古代北ユーラシア人から部分的に派生した集団
アメリカ先住民
ジェニファー・ラフによれば、古代北ユーラシアの集団は、2万5千年ほど前に古代東アジアの娘集団と遭遇して混血し、それがアメリカ大陸の先住民の祖先集団の出現につながったという。しかし、混血が起こった正確な場所は不明であり、2つの集団を統合した移動の動きについても議論の余地がある[12]。
一説によると、古代の北ユーラシア人は南下して東アジア、または南シベリアに移動し、そこで古代の東アジア人と遭遇して混血したと考えられている。モンゴルのバイカル湖から得られた遺伝学的証拠は、この地域が混血が起こった場所であることを支持している[45]。
しかし、第三の説である「ベーリンジアン行き詰まり仮説」は、東アジア人が代わりに北から北東シベリアに移動し、そこで古代北ユーラシア人(ANE)と混血し、後にベーリンジアで分岐し、そこで明確なアメリカ先住民の系統が形成されたというものである。この説はmtDNA(母系)と核DNAの証拠によって支持されている[46]。グレベニュクによれば、2万年前以降、古代東アジア人の一派がシベリア北東部に移動し、古代北ユーラシア人(ANE)の子孫と混血した結果、極東アジアの極限の地に古代古シベリア人とアメリカ大陸の先住民が出現したという[47][29]。しかし、ベーリンジア行き詰まり仮説はY-DNA(父系)のDNA証拠によって支持されていない。これはアメリカ先住民における父系と母系の異なる集団史を反映している可能性があり、これは珍しいことではなく、他の集団でも観察されている[48]。
関連項目
- [[西ヨーロッパ狩猟採集民]]
- 東ヨーロッパ狩猟採集民
- [[先史シベリア(英語: Prehistory of Siberia)]]
脚注
注釈
- ^ Vallini et al. (2022) Kostenki14と田園洞人の姉妹グループ間での様々な割合での混血を想定できるTreeMixモデルを作成しており、この観察を実際に説明することができる。(図1A, 紫の葉; 補足図. S5 およびセクション3.6 補足物オンライン)".
- ^ Sikora et al. (2019) ヤナ遺跡からの個体を22%が東ユーラシア人、残りが西ユーラシア人としてモデル化(「混血グラフと混血比率のアウトグループを基にした推定を使用すると、古代北シベリア人(ANS)は初期東アジア人からの寄与が約 22% ある初期西ユーラシア人としてモデル化できることが分かる。」)。 Massilani et al. (2020)ヤナ遺跡からの個体を約1/3が東ユーラシア人、2/3が西ユーラシア人としてモデル化Vallini et al. (2022) ヤナ遺跡からの個体を50%西ユーラシア人、50%東ユーラシア人としてモデル化
- ^ Vallini et al. (2022) Kostenki14と田園洞人の姉妹グループ間での様々な割合での混血を想定できるTreeMixモデルを作成しており、この観察を実際に説明することができる。(図1A, 紫の葉; 補足図. S5 およびセクション3.6 補足物オンライン)".
- ^ Sikora et al. (2019) ヤナ遺跡からの個体を22%が東ユーラシア人、残りが西ユーラシア人としてモデル化(「混血グラフと混血比率のアウトグループを基にした推定を使用すると、古代北シベリア人(ANS)は初期東アジア人からの寄与が約 22% ある初期西ユーラシア人としてモデル化できることが分かる。」)。 Massilani et al. (2020)ヤナ遺跡からの個体を約1/3が東ユーラシア人、2/3が西ユーラシア人としてモデル化Vallini et al. (2022) ヤナ遺跡からの個体を50%西ユーラシア人、50%東ユーラシア人としてモデル化
出典
- ^ Bednarik, Robert G. (2013). “Pleistocene Palaeoart of Asia”. Arts 2 (2): 46–76. doi:10.3390/arts2020046 .
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- ^ Jeong et al. 2019: 「南シベリアのマリタ遺跡とアフォントヴァ山遺跡から得られた後期旧石器時代のゲノムから、しばしば「古代北ユーラシア人(ANE)」と呼ばれる遺伝子プロファイルが明らかになった。」
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- ^ Villalba-Mouco, Vanessa; van de Loosdrecht, Marieke S.; Rohrlach, Adam B.; Fewlass, Helen; Talamo, Sahra; Yu, He; Aron, Franziska; Lalueza-Fox, Carles et al. (2023-03-01). “A 23,000-year-old southern Iberian individual links human groups that lived in Western Europe before and after the Last Glacial Maximum” (英語). Nature Ecology & Evolution 7 (4): 597–609. doi:10.1038/s41559-023-01987-0. ISSN 2397-334X. PMC 10089921. PMID 36859553 . "これは、マリタ遺跡およびアフォントバ山遺跡の個体にから見つかる祖先 (古代北ユーラシアの祖先) が後期旧石器時代の東アジア/東南アジアの個体群54から祖先を受け取っており、これがその後東ヨーロッパ狩猟採集民(EHG)55 に大きく寄与したためである。"
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