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「叙景詩」の版間の差分

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'''叙景詩'''とは自然の風景を歌った詩<ref>精選版 日本国語大辞典「叙景詩」[https://kotobank.jp/word/%E5%8F%99%E6%99%AF%E8%A9%A9-2050929]</ref>のこと。
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== 概要 ==
== 概要 ==
日本の中学校では詩の三分類として[[叙情詩]]、[[叙事詩]]とともに指導されるが、叙景詩(仮訳:scenic poetry)という分類カテゴリは西欧では一般的ではない<ref>津城寛文によれば「日本オリジナルのターム」であり「翻訳語に紛れて流通し」たものであって「管見の限り・・・ヨーロッパ語にはオリジナルが存在しない」とされる。津城寛文「日本オリジナルの人文社会系キーワード」(2016 Journal of International and Advanced Japanese Studies Vol. 8, February 2016, pp. 93–108)[https://japan.tsukuba.ac.jp/content/uploads/sites/43/2022/02/JIAJS_8_Tsushiro.pdf]</ref>。「叙景」という言葉は[[正岡子規]]の造語とされ、1892年(明治25年)10月に出された論考「我邦に短篇韻文の起りし所以を論ず」(『早稲田文学』)において初めて用いられたことが確認されている<ref>内藤まりこ「詩的言語と人称」(日本文学,14-24,2011,日本文学協会)[https://ci.nii.ac.jp/naid/130005665428][https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonbungaku/60/7/60_14/_pdf/-char/ja]</ref>
日本の中学校では詩の三分類として[[叙情詩]]、[[叙事詩]]とともに指導されるが、叙景詩(仮訳:scenic poetry)という分類カテゴリは西欧では一般的ではない<ref>{{Harv|津城寛文|2016}}によれば「日本オリジナルのターム」であり「翻訳語に紛れて流通し」たものであって「管見の限り・・・ヨーロッパ語にはオリジナルが存在しない」とされる。</ref>。「叙景」という言葉は[[正岡子規]]の造語とされ、1892年(明治25年)10月に出された論考「我邦に短篇韻文の起りし所以を論ず」(『早稲田文学』)において初めて用いられたことが確認されている{{Sfn|内藤まりこ|2011}}


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明治期の国民国家形成期において<日本>の輪郭は中国や西洋との差異の中から描き出されていき、他国との比較のなかで<日本>の独自性として創出されたのが「自然を昵愛(ジツアイ)する特性」であり、「叙景」はそのような特性をもつ<日本>ならではの表現方法として特筆されたのである<ref>内藤,P.P.17-18</ref>。
明治期の国民国家形成期において<日本>の輪郭は中国や西洋との差異の中から描き出されていき、他国との比較のなかで<日本>の独自性として創出されたのが「自然を昵愛(ジツアイ)する特性」であり、「叙景」はそのような特性をもつ<日本>ならではの表現方法として特筆されたのである<ref>内藤,P.P.17-18</ref>。
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「叙景」のカテゴリは詩的言語においてのみ見られるのではなく、[[柄谷行人]]は明治30年代に著された[[国木田独歩]]の「武蔵野」や「忘れ得ぬ人々」のなかに「風景の発見」があるとした<ref>内藤,P.22脚注(3)</ref>。
「叙景」のカテゴリは詩的言語においてのみ見られるのではなく、[[柄谷行人]]は明治30年代に著された[[国木田独歩]]の「武蔵野」や「忘れ得ぬ人々」のなかに「風景の発見」があるとした<ref>内藤,P.22脚注(3)</ref>。


== 文献情報 ==
== 参考文献 ==
*内藤まりこ詩的言語と人称」(日本文学,14-24,2011,日本文学協会)[https://ci.nii.ac.jp/naid/130005665428][https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonbungaku/60/7/60_14/_pdf/-char/ja]
* {{Cite journal|和書|author=内藤まりこ |title=詩的言語と人称 |url=https://doi.org/10.20620/nihonbungaku.60.7_14 |journal=日本文学 |ISSN=03869903 |publisher=日本文学協会 |year=2011 |volume=60 |issue=7 |pages=14-24 |doi=10.20620/nihonbungaku.60.7_14 |naid=130005665428 |ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|author=津城寛文 |title=<研究ノート>日本オリジナルの人文社会系キーワード |url=https://doi.org/10.15068/00146744 |journal=国際日本研究 |ISSN=21860564 |publisher=筑波大学人文社会科学研究科国際日本研究専攻 |year=2016 |volume=8 |pages=93-108 |doi=10.15068/00146744 |hdl=2241/00146744 |ref={{harvid|津城寛文|2016}}}}


== 脚注 ==
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[[Category:詩のジャンル]]
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2022年8月5日 (金) 14:30時点における版

叙景詩とは自然の風景を歌った詩[1]のこと。

概要

日本の中学校では詩の三分類として叙情詩叙事詩とともに指導されるが、叙景詩(仮訳:scenic poetry)という分類カテゴリは西欧では一般的ではない[2]。「叙景」という言葉は正岡子規の造語とされ、1892年(明治25年)10月に出された論考「我邦に短篇韻文の起りし所以を論ず」(『早稲田文学』)において初めて用いられたことが確認されている[3]

明治30年代になると叙景は短歌の創作方法として積極的に支持されるようになり[4]、古典詩歌の解釈にも採用されるようになった[5]品田悦一によれば「叙景」という方法は<日本>という共同体を創造するナショナリズムの動きとの関わりで論じることができるとし[5]、また藤岡作太郎によれば自然を愛し尊び、自然に親しむことの深さは日本国民の特性であるとした[5]

明治期の国民国家形成期において<日本>の輪郭は中国や西洋との差異の中から描き出されていき、他国との比較のなかで<日本>の独自性として創出されたのが「自然を昵愛(ジツアイ)する特性」であり、「叙景」はそのような特性をもつ<日本>ならではの表現方法として特筆されたのである[6]

「叙景」のカテゴリは詩的言語においてのみ見られるのではなく、柄谷行人は明治30年代に著された国木田独歩の「武蔵野」や「忘れ得ぬ人々」のなかに「風景の発見」があるとした[7]

参考文献

  • 内藤まりこ「詩的言語と人称」『日本文学』第60巻第7号、日本文学協会、2011年、14-24頁、doi:10.20620/nihonbungaku.60.7_14ISSN 03869903NAID 130005665428 
  • 津城寛文「<研究ノート>日本オリジナルの人文社会系キーワード」『国際日本研究』第8巻、筑波大学人文社会科学研究科国際日本研究専攻、2016年、93-108頁、doi:10.15068/00146744hdl:2241/00146744ISSN 21860564 

脚注

  1. ^ 精選版 日本国語大辞典「叙景詩」
  2. ^ (津城寛文 2016)によれば「日本オリジナルのターム」であり「翻訳語に紛れて流通し」たものであって「管見の限り・・・ヨーロッパ語にはオリジナルが存在しない」とされる。
  3. ^ 内藤まりこ 2011.
  4. ^ 内藤,P.15
  5. ^ a b c 内藤まりこ 2011, p. 17.
  6. ^ 内藤,P.P.17-18
  7. ^ 内藤,P.22脚注(3)