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'''シラミ目'''（シラミもく。{{Lang-en-short|order Phthiraptera}}）は、かつて使われていた[[目 (分類学)|目]]。シラミ目と訳された分類群には2つあり、それぞれ現在の分類では以下のとおり。
'''シラミ目'''（シラミもく　{{Lang-en-short|order Phthiraptera}}）は、かつて使われていた[[目 (分類学)]]。系統学研究の発展の結果、かつてあったこの目は[[目 (分類学)|下目や小目]]など様々に認識されており<ref name="deMoya2021"/><ref name=Johnson2021/><ref name=catlife/>、2016年時点で便宜上この[[分岐群]]を'''シラミ類(Phthiraptera)'''と呼んでいる{{Sfn|吉澤|2016|p=114}}。


==形態==
* '''Phthiraptera''' - [[咀顎目]]（カジリムシ目）コナチャタテ亜目フトチャタテ下目に内包される{{Sfn|吉澤|2016|pp=116-117}}。
シラミ類は2つのグループに分けられる。宿主の皮脂分泌物および体液から栄養を得る吸血性の[[シラミ]]と、宿主の体表にある皮膚の破片や体毛や羽毛を食べる咀嚼性の[[ハジラミ]]である。一般的に彼らは宿主から除去されると長く生存できず<ref name=IIBD>{{cite book | vauthors = Hoell HV, Doyen JT, Purcell AH |year=1998 |title=Introduction to Insect Biology and Diversity |edition=2nd |publisher= [[Oxford University Press]] |pages= 407-409|isbn= 978-0-19-510033-4}}</ref>、例えば[[ヒトジラミ]]は人から離れると吸血できずに2-3日で餓死する（気温により若干伸びる）<ref>[[アース製薬]]「[https://www.earth.jp/gaichu/knowledge/shirami/ シラミを知る]」2022年3月20日閲覧。</ref>。
* '''Anoplura''' - [[シラミ|シラミ亜目]]。上記の一部。
<!-- 各々の形態や特徴は、リンク先の記事に譲るため割愛-->


== 分類 ==
==進化==
シラミ類は、咀顎目の分岐群を指す。咀顎目内でシラミ類は[[コナチャタテ亜目]](Troctomorpha)内にあり、[[コナチャタテ科]](Liposcelididae)と最も密接した姉妹群関係にある{{Sfn|吉澤|2016|p=117}}。確認された最古のシラミ類化石は、ドイツ<!-- Eckfelder Maar-->で発見された約4400万年前の[[始新世]]にさかのぼるハジラミMegamenopon rasnitsyniである<ref>{{cite journal | vauthors = Light JE, Smith VS, Allen JM, Durden LA, Reed DL | title = Evolutionary history of mammalian sucking lice (Phthiraptera: Anoplura) | journal = BMC Evolutionary Biology | volume = 10 | issue = 1 | pages = 292 | date = September 2010 | pmid = 20860811 | pmc = 2949877 | doi = 10.1186/1471-2148-10-292 }}</ref> 。
2014年時点で作成された分類上の系統関係としては以下のような物になる{{Sfn|吉澤|2016|p=114}}。


咀顎目におけるシラミ類の位置を示す2021年の[[クラドグラム]]は次の通り<ref name="deMoya2021">{{Cite journal|last1=de Moya|first1=Robert S|last2=Yoshizawa|first2=Kazunori|last3=Walden|first3=Kimberly K O|last4=Sweet|first4=Andrew D|last5=Dietrich|first5=Christopher H|last6=Kevin P|first6=Johnson|date=2021-06-16|editor-last=Buckley|editor-first=Thomas|title=Phylogenomics of Parasitic and Nonparasitic Lice (Insecta: Psocodea): Combining Sequence Data and Exploring Compositional Bias Solutions in Next Generation Data Sets|url=https://academic.oup.com/sysbio/article/70/4/719/5912026|journal=Systematic Biology|language=en|volume=70|issue=4|pages=719-738|doi=10.1093/sysbio/syaa075|pmid=32979270|issn=1063-5157}}</ref><ref>日本分類学会連合「[http://www.ujssb.org/biospnum/search.php?Kingdom=Animalia&Phylum=Arthropoda&Subphylum=Mandibulata&Class=Insecta&Order=Psocoptera&Suborder=Troctomorpha　コナチャタテ亜目 Troctomorpha]」、 日本産生物種数調査、2022年3月20日閲覧。クラドグラムにおける亜目や科の名称はこれに準拠。</ref>。
* '''シラミ類''' Phthiraptera
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** マルツノハジラミ亜目
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**** ホンツノハジラミ亜目ケモノハジラミ科
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**** （名称未設定）
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===分類===
シラミ類は明らかに[[単系統群]]であり{{Sfn|吉澤|2016|p=117}}、構成種は恒温脊椎動物への寄生や、単一の腹側神経接合部を形成する中胸部神経節と腹部神経節の組み合わせを含む多くの特徴的な統一がある。シラミ類（当時は目）は伝統的に2つの亜目、吸血性のシラミ亜目(Anoplura)と、咀嚼性のハジラミ目(Mallophaga)に分けられていた。しかし、その後の分類でハジラミ目 は[[側系統群]]であることが示唆され、4つの亜目が認識された<ref name=info>{{cite web |url=http://phthiraptera.info/ |title=Phthiraptera.info | vauthors = Smith V |publisher=International Society of Phthirapterists |access-date=25 October 2015}}</ref>。

* [[シラミ亜目]]: 吸血性シラミで哺乳類だけに発生
* [[ゾウハジラミ亜目]]: ゾウと[[イボイノシシ]]の寄生虫
* [[ホソツノハジラミ亜目]]: 主に鳥類の咀嚼性ハジラミで、一つは哺乳類に寄生する
* [[マルツノハジラミ亜目]]: 咀嚼性ハジラミの原始的な亜目で、鳥類に広く普及し、南米とオーストラリアでは哺乳類にも発生

シラミ類が咀顎目に内包されていることを発見すると、2021年に吉澤らはシラミ類の階級を下目<!--(infraorder)-->に、4つの亜目を小目<!--(parvorder)-->に下げることを提案した<ref name="deMoya2021"/>。これらの変更はPsocodea Species Fileなどに受け入れられたが、シラミ類をフトチャタテ下目(Nanopsocetae)の下に置き、小目としてその下に4つの部分群を配置した。これらの分類は、進行中の系統学的研究の結果により将来的に変更される可能性がある<ref name=Johnson2021>{{Cite web| access-date = 2021-11-03
| title = Psocodea species file online, Version 5.0
| date = 2021| last1 = Johnson | first1 = Kevin P.| last2 = Smith | first2 = Vincent S.
| url = http://psocodea.speciesfile.org/}}</ref><ref name=catlife>{{Cite web| title = Catalogue of Life, Phthiraptera Haeckel, 1896
| url = https://www.catalogueoflife.org/data/taxon/8MP8P| access-date = 2021-11-03
| date = 2021}}</ref>。

== 関連項目 ==
*[[害虫]]
*[[シラミ]]
*[[ハジラミ]]
*[[トコジラミ]] - 吸血性でこの名がついているが、分類上は[[カメムシ目]]の昆虫。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 参考文献 ===
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* {{Cite journal|和書|journal=昆蟲．ニューシリーズ|author=吉澤和徳|year=2016|title=昆虫学概論・各目解説（1）咀顎目（カジリムシ目）の系統的位置と高次体系
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== 参考文献 ==
== 外部リンク ==
{{Commons category|Phthiraptera}}
⚫
* {{Cite journal|和書|journal=昆蟲．ニューシリーズ|author=吉澤和徳|year=2016|title=昆虫学概論・各目解説（1）咀顎目（カジリムシ目）の系統的位置と高次体系|volume=19|issue=3|pages=112-120|publisher=一般社団法人 日本昆虫学会|DOI=10.20848/kontyu.19.3_112|ref={{Sfnref|吉澤|2016}}}}
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2022年3月21日 (月) 01:36時点における版

シラミ目（シラミもく　英: order Phthiraptera）は、かつて使われていた目 (分類学)。系統学研究の発展の結果、かつてあったこの目は下目や小目など様々に認識されており[1][2][3]、2016年時点で便宜上この分岐群をシラミ類(Phthiraptera)と呼んでいる[4]。

形態

シラミ類は2つのグループに分けられる。宿主の皮脂分泌物および体液から栄養を得る吸血性のシラミと、宿主の体表にある皮膚の破片や体毛や羽毛を食べる咀嚼性のハジラミである。一般的に彼らは宿主から除去されると長く生存できず[5]、例えばヒトジラミは人から離れると吸血できずに2-3日で餓死する（気温により若干伸びる）[6]。

進化

シラミ類は、咀顎目の分岐群を指す。咀顎目内でシラミ類はコナチャタテ亜目(Troctomorpha)内にあり、コナチャタテ科(Liposcelididae)と最も密接した姉妹群関係にある[7]。確認された最古のシラミ類化石は、ドイツで発見された約4400万年前の始新世にさかのぼるハジラミMegamenopon rasnitsyniである[8] 。

咀顎目におけるシラミ類の位置を示す2021年のクラドグラムは次の通り[1][9]。

咀顎目
 
コナチャタテ亜目
 
 
シラミ類(Phthiraptera)
 
 

チョウカクハジラミ科(Philopteridae)

 
 
 
 

シラミ亜目(Anoplura)

 
 

ゾウハジラミ亜目(Rhynchophthirina)

 
 
 

ケモノハジラミ科(Trichodectidae)

 
 
 
 

マルツノハジラミ亜目(Amblycera)

 
 
 

コナチャタテ科(Liposcelididae)

 
 
 
 

フトチャタテ科(Pachytroctidae)

 
 

Sphaeropsocidae

 
 
 
 

ウロコチャタテ科 (Amphientometae)

 
 
チャタテ亜目
 

以下略

 
 
 
コチャタテ亜目
 

以下略

 
 
 

分類

シラミ類は明らかに単系統群であり[7]、構成種は恒温脊椎動物への寄生や、単一の腹側神経接合部を形成する中胸部神経節と腹部神経節の組み合わせを含む多くの特徴的な統一がある。シラミ類（当時は目）は伝統的に2つの亜目、吸血性のシラミ亜目(Anoplura)と、咀嚼性のハジラミ目(Mallophaga)に分けられていた。しかし、その後の分類でハジラミ目 は側系統群であることが示唆され、4つの亜目が認識された[10]。

シラミ類が咀顎目に内包されていることを発見すると、2021年に吉澤らはシラミ類の階級を下目に、4つの亜目を小目に下げることを提案した[1]。これらの変更はPsocodea Species Fileなどに受け入れられたが、シラミ類をフトチャタテ下目(Nanopsocetae)の下に置き、小目としてその下に4つの部分群を配置した。これらの分類は、進行中の系統学的研究の結果により将来的に変更される可能性がある[2][3]。

関連項目

脚注

  1. ^ a b c de Moya, Robert S; Yoshizawa, Kazunori; Walden, Kimberly K O; Sweet, Andrew D; Dietrich, Christopher H; Kevin P, Johnson (2021-06-16). Buckley, Thomas. ed. “Phylogenomics of Parasitic and Nonparasitic Lice (Insecta: Psocodea): Combining Sequence Data and Exploring Compositional Bias Solutions in Next Generation Data Sets” (英語). Systematic Biology 70 (4): 719-738. doi:10.1093/sysbio/syaa075. ISSN 1063-5157. PMID 32979270. https://academic.oup.com/sysbio/article/70/4/719/5912026. 
  2. ^ a b “Psocodea species file online, Version 5.0” (2021年). 2021年11月3日閲覧。
  3. ^ a b “Catalogue of Life, Phthiraptera Haeckel, 1896” (2021年). 2021年11月3日閲覧。
  4. ^ 吉澤 2016, p. 114.
  5. ^ Introduction to Insect Biology and Diversity (2nd ed.). Oxford University Press. (1998). pp. 407-409. ISBN 978-0-19-510033-4 
  6. ^ アース製薬「シラミを知る」2022年3月20日閲覧。
  7. ^ a b 吉澤 2016, p. 117.
  8. ^ “Evolutionary history of mammalian sucking lice (Phthiraptera: Anoplura)”. BMC Evolutionary Biology 10 (1): 292. (September 2010). doi:10.1186/1471-2148-10-292. PMC 2949877. PMID 20860811. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2949877/. 
  9. ^ 日本分類学会連合「コナチャタテ亜目 Troctomorpha」、 日本産生物種数調査、2022年3月20日閲覧。クラドグラムにおける亜目や科の名称はこれに準拠。
  10. ^ “Phthiraptera.info”. International Society of Phthirapterists. 2015年10月25日閲覧。

参考文献

外部リンク

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