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「次世代行列」の版間の差分

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2020年4月21日 (火) 01:00時点における版

疫学において、次世代行列(じせだいぎょうれつ、: next-generation matrix)は、感染症の流行に関するコンパートメントモデル英語版基本再生産数を得るのに用いられる。個体群動態においては、構造化個体群モデルの基本再生産数を計算するのに用いられる[1]。マルチタイプの分岐過程でも、同様の計算に用いられる[2]

次世代行列を用いて基本再生産数を計算する方法は Diekmann et al. (1990)[3] と van dern Driessche and Watmough (2002)[4] によって与えられた。次世代行列を用いて基本再生産数を計算するために、集団全体を n 個のコンパートメントに分割し、はじめの m 個を感染集団のコンパートメントとする。時刻 t におけるコンパートメントの個体数を とおき、流行モデル

を考える。ここで i 番目のコンパートメントにおける新規感染の発生率を表しており、 は他のコンパートメントから i 番目のコンパートメントへの遷移率を、i 番目のコンパートメントから他のコンパートメントへの遷移率を表している。このとき

とおけば、上のモデルは

と書くこともできる。いま x0 を感染症のない定常状態とする。このとき ヤコビ行列x0 において

となる。ここで FV

で定義される m 次正方行列である。このとき K = FV −1 は次世代行列と呼ばれる。その最大固有値、すなわちスペクトル半径 R0 = ρ(K) がこのモデルの基本再生産数である。

参考文献

  1. ^ Zhao, Xiao-Qiang (2017), “The Theory of Basic Reproduction Ratios”, Dynamical Systems in Population Biology (Springer International Publishing): pp. 285–315, doi:10.1007/978-3-319-56433-3_11, ISBN 978-3-319-56432-6 
  2. ^ Mode, Charles J. (1971). Multitype Branching Processes: Theory and Applications. New York: American Elsevier Pub. Co. ISBN 0-444-00086-0. OCLC 120182 
  3. ^ Diekmann, O.; Heesterbeek, J. A. P.; Metz, J. A. J. (1990). “On the definition and the computation of the basic reproduction ratio R0 in models for infectious diseases in heterogeneous populations”. Journal of Mathematical Biology 28 (4): 365–382. doi:10.1007/BF00178324. hdl:1874/8051. PMID 2117040. 
  4. ^ van den Driessche, P.; Watmough, J. (2002). “Reproduction numbers and sub-threshold endemic equilibria for compartmental models of disease transmission”. Mathematical Biosciences 180 (1–2): 29–48. doi:10.1016/S0025-5564(02)00108-6. PMID 12387915. 

出典