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2016年5月29日 (日) 15:00時点における版

根圏[1] A=細菌を捕食するアメーバ;BL=根からの炭素源を受け取らない細菌。エネルギーが制限されている;根から炭素源を受け取る細菌。エネルギーの制限を受けない;RC=根から供給される炭素源;SR=脱落した根毛細胞;F=真菌の菌糸;N=線形動物

根圏(こんけん、rhizosphere)とは、植物の根の分泌物と土壌微生物とによって影響されている土壌空間である[2]。根圏に含まれない土壌空間をbulk soil(bulkは大部分の意)と呼ぶ。根圏には多くの微生物が生息している。これらの微生物は、根から脱落した植物細胞(rhizodeposition、depositionは堆積物の意)および、根から放出されたタンパク質と糖を摂取する。それら細菌を捕食する原生動物線形動物の数はさらに多い。このため、植物が必要とする栄養循環や病害抑制の多くは根のすぐ隣で発生する。[3]

分泌物

植物は根から多くの化合物を分泌する。これら分泌物は根圏中の他の生物との相利共生に役割を果たす。


  • 寄生植物ストライガ属はストリゴラクトンの存在を検出し、それらを検出したときに発芽する。その後、根へと移動し、栄養素源として利用する。


  • リゾビウム属といった共生的な窒素固定細菌は、マメ科植物の根が分泌するフラボノイド様の化合物を検出する。検出すると、根粒形成因子(ノッド因子)を産生し、植物へとシグナルを送り、根粒の形成を促す。これら根粒菌は植物からの栄養素によって生きながらえ、植物が利用できる形態へと窒素ガスを変換する。


  • 非共生的(または自由生活)な窒素固定細菌は、特定の植物(多くの草本を含む)の根圏の外で生育でき、根圏では共生的な窒素固定細菌と同様に窒素ガスを固定する


根圏微生物と植物との関連は緩いと考えられているにもかかわらず、根圏微生物は植物の状態に非常に強く応答する。例えば、イネの根圏における窒素固定細菌の日内周期は植物の挙動を模倣したものである。また、イネの成長段階では窒素固定細菌は窒素をより多く固定して供給する傾向にある。成長段階ではイネは窒素をより多く要求する。
[4]

一方で、いくつかの植物は、他の生物の増殖を阻害するアレロパシー物質を根から分泌する。例えば、北米の中湿性の温帯林のガーリックマスタードはアレロパシー物質を分泌する。この物質は、ガーリックマスタードの樹や菌根菌との間で形成される相利共生を妨害すると考えられている。[5]

関連項目

  • Bulk soil
  • Mucigel
  • Soil respiration
  • Stratification (vegetation)

脚注

  1. ^ Giri, B.; Giang, P. H.; Kumari, R.; Prasad, R.; Varma, A. (2005). “Microbial Diversity in Soils”. Microorganisms in Soils: Roles in Genesis and Functions. Soil Biology. 3. pp. 19–55. doi:10.1007/3-540-26609-7_2. ISBN 3-540-22220-0 
  2. ^ Microbial Health of the Rhizosphere”. 2007年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年5月5日閲覧。
  3. ^ The Soil Food Web”. USDA-NRCS. 2006年7月3日閲覧。
  4. ^ Sims GK, Dunigan EP; Dunigan (1984). “Diurnal and seasonal variations in nitrogenase activity (C2H2 reduction) of rice roots”. Soil Biology and Biochemistry 16 (1): 15–18. doi:10.1016/0038-0717(84)90118-4. 
  5. ^ Stinson KA, Campbell SA, Powell JR, Wolfe BE, Callaway RM, Thelen GC, Hallett SG, Prati D, Klironomos JN; Campbell; Powell; Wolfe; Callaway; Thelen; Hallett; Prati et al. (2006). “Invasive plant suppresses the growth of native tree seedlings by disrupting belowground mutualisms”. PLoS Biology 4 (5): e140. doi:10.1371/journal.pbio.0040140. PMC 1440938. PMID 16623597. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1440938/ 

参考文献