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幾何学における対象:長い直線(long line)に関する記事。en:Long line (topology) (00:08, 2 April 2009 UTC) を翻訳
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2009年4月2日 (木) 22:11時点における版

トポロジーにおいて長い直線(long line , またはアレキサンドロフ直線)とは、実数直線の類似したある位相空間のことをいう。 長い直線は距離付け不可能な一次元多様体の例をあたえている。(距離付け可能な一次元多様体はRS1のみである)[1]

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定義

長い閉半直線(closed long ray) Lは、非可算な最初の無限順序数 ω1区間[0, 1) の直積空間に、辞書式順序による順序位相をいれた位相空間として定義される。

長い開半直線(open long ray)は、Lから最小元(0,0)を除いて得られる位相空間である。

長い直線(long line)は、直感的には二つの長い半直線を端でつなげてできる。厳密には、長い開半直線双対順序空間に長い閉半直線を付け加えた(前者の元は後者の元よりも小さいとして順序付ける)順序空間について順序位相を入れることで得られる。別の方法として、二つの長い半開直線のコピーをとり、双方の開区間{0} × (0, 1)の各点に次の同値関係を入れる。長い半直線の点(0, t)ともう一方の長い半直線の点(0,1 − t)は同値となる(ここで0 < t < 1とする)。この同値関係による商空間により長い直線を定義する。

関連する空間として、(閉)拡張された長い直線(extended long ray),L*,はL一点コンパクト化した空間として定義される。すなわち、Lに最大元を追加して得られる空間である。別の構成としては、長い直線に最大元と最小元を二つ追加して得られる空間としても定義できる。

性質

長い閉半直線 L = ω1 × [0,1) は、[0,1)の非加算個のコピーを'端でつなげる'ことで構成される。一方、高々可算個の[0,1)を'端でつなげる'操作を行っても、依然として[0,1)と同相かつ順序同型である。ゆえに、非加算個の[0,1)のつなぎ合わせであるLは、Rとの局所同相である。

任意のLの元の増大列は、Lの元に収束する。これは次の事実による。 (1) ω1の元は、可算順序数からなる。 (2) 可算な可算順序数から成る集合は、ある可算順序数を上限にもつ。 (3) 実数の有界増大列は収束する。 このことから、強単調増大関数LRは存在しない。

順序位相として、(拡張された)長い半直線と長い直線は正規ハウスドルフ空間である。両者ともに、濃度は実数直線の濃度に等しいが、より長い空間である。また、局所コンパクトかつ距離付け不可能である。これは、長い半直線が点列コンパクトだが、コンパクトでなくリンデレフですらないことからわかる。

長い直線と長い半直線はパラコンパクトでない。弧状連結かつ局所弧状連結かつ単連結であるがcontractibleでない。一次元位相多様体であり、長い半直線については境界を伴う。第一可算公理を満たすが、第二可算公理満たさず、可分性を持たない。ここで、多様体の定義では可分性を要求する場合があるが、その場合には長い直線は多様体ではない。

長い直線と長い半直線は、(可分でなくてもよい)微分多様体の構造(半直線については境界を伴う)をもつ。しかし、位相構造は一意的であるのに対し可微分構造は一意的でない。実際、任意の自然数kと与えられた長い(半)直線のCk級構造に対し、無限に多くのCk+1,C級構造が存在する。[2] これは通常のCk級構造(k≥1)がC級構造を一意に定める可分多様体の状況と著しい対比をなしている。

すべての長い空間は次の事実から上に挙げた空間について考えればよい。空でない連結一次元(可分でなくてよい)位相多様体(境界も考える)は、つぎのどれかに同相である。円、閉区間、開区間(実数直線)、半開区間、長い閉半直線、長い開半直線、長い直線。

長い(半)直線は実解析多様体(境界を伴う)をもつ。しかしながら、これは可微分構造のときよりも複雑である。与えられたC級構造に対し、無限におおくのCω級構造(=実解析的)が存在することが知られている。[3]

長い(半)直線にはリーマン計量は入らない。なぜなら、リーマン多様体はパラコンパクトの仮定のもと距離づけ可能なことが示されるからである。[4]

拡張された長い半直線L*は、コンパクトである。これは長い閉半直線Lの一点コンパクト化であるが、同時にでもある。したがって、長い半直線から実数直線への任意の連続関数は本質的に定数である。L*は、連結だが弧状連結でない。なぜなら、長い直線は長過ぎて区間の連続像で覆うことができない。L*は多様体でなく、第一可算公理も満たさない。

参考

  1. ^ Steen, Lynn Arthur; Seebach, J. Arthur Jr. (1995) [1978], Counterexamples in Topology (Dover reprint of 1978 ed.), Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-0-486-68735-3, MR507446 
  2. ^ Koch, Winfried & Puppe, Dieter (1968). “Differenzierbare Strukturen auf Mannigfaltigkeiten ohne abzaehlbare Basis”. Archiv der Mathematik 19: 95–102. doi:10.1007/BF01898807. 
  3. ^ Kneser, H. & Kneser, M. (1960). “Reell-analytische Strukturen der Alexandroff-Halbgeraden und der Alexandroff-Geraden”. Archiv der Mathematik 11: 104–106. doi:10.1007/BF01236917. 
  4. ^ S. Kobayashi and K. Nomizu (1963). Foundations of differential geometry. I. Interscience. pp. 166