距離測定装置

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距離測定装置(きょりそくていそうち)は距離を測定するあらゆる装置を指すが、本項目では航空機用の航法支援用二次レーダー設備であるDME(航空用DME)について説明する。

距離測定装置 (DME, Distance Measuring Equipment) は、無線通信により航空機地上局との距離を航空機から測定する装置である。DMEは「ディーエムイー」の他に「デメ」と発音されることがある。

日本の電波法施行規則では「「航空用DME」とは、960MHzから1,215MHzまでの周波数の電波を使用し、航空機において、当該航空機から地表の定点までの見通し距離を測定するための無線航行業務を行う設備をいう」と定義されている(電波法施行規則2条1項51の2号)。

仕組み

DME/VOR地上施設の概要
航空機上のインタロゲータは質問信号を送信する。地上のDME施設が質問信号を受信すると、自動的に応答信号を返信する。
1.DMEアンテナ 2.VORアンテナ 3.VOR送信機 4.DME受信/送信機 5.質問信号波 6.応答信号波 7.VOR信号波[1]
DME/VOR機上装置
1.DMEイントロゲータ/受信機 2.DME距離信号 3.VOR受信機 4.VOR方位信号

DMEは地上施設と航空機上の電子装置から構成される。

航空機上のインタロゲータがイントロゲータ用周波数の1つのチャンネルを使い、電波によって個別の特徴をもった一連のパルスによりなる質問信号を送出し続ける。地上のトランスポンダは、それらを受信すると対応するチャンネルでそれぞれにパルス対の応答信号として50マイクロ秒後に送出し続ける。

機上のインタロゲータは50マイクロ秒以上遅れて到達する応答信号を対応するトランスポンダ周波数内のチャンネルで受信を試みるが、距離ゲートと呼ばれる特定時間遅れたパルスだけを通過させる仕組みによって、自ら発した質問信号より50マイクロ秒から少しずつ遅らせながら距離ゲートと呼ばれる時間フィルタによって応答パルスを選別することで、自機に向けて返信された信号だけを捜索する。この捜索状態 (Search mode) のために少し時間が必要となり、距離ゲートを通過して70%以上と安定的に自機向の信号が受信できるようになると追跡状態 (Track mode) に移る。追跡状態では自機の移動に合わせて距離ゲートを調整しながら距離を算出し続ける。

航空機が別のDME周波数チャンネルに切り替えたり、地上に降りて機上の装置を停止することで質問信号が発信されなくなるまで、またはDME局から遠く離れて電波が到達しなくなるまで、非常に混雑してDME局が返答できなくなるまで、質問信号に対して応答信号は自動的に返され続ける。

インタロゲータは電波の伝播速度が一定であることを利用して、質問信号送出から応答信号受信までの時間差から自機と地上局との斜め距離を算出する[出典 1]

使用チャンネル

DMEチャンネルは1Xから始まって1Y, 2X, 2Y, 3Yと数字とXとYの組み合わせによる126Yまでの126×2チャンネルが用いられ、17XからはVOR/ILSにも同じチャンネル番号が割り振られている。

  • 波長: UHF帯を使用
  • 周波数: インタロゲータとトランスポンダは常に63 MHz差で応答する
    • インタロゲータ: 1,025 - 1,150 MHz
    • トランスポンダ: 962 - 1,213 MHz
  • チャンネル幅: 100 kHz

通常トランスポンダはVORに併設され、同じ位置に配置されたVORが選択された場合DMEのインタロゲータは自動的に対応するようになっている。このような施設はVOR/DME(ヴォルデメ、ボルデメ)と呼ばれる。 また、滑走路接地点までの距離を測定するために計器着陸装置(ILS)のGPアンテナに併設するDMEもある。このようなDMEはターミナルDME(T-DME)と呼ばれる。

1つのDME地上局では最大100機ほどの航空機に距離情報を提供することができる[出典 1] が、これを上回る量のアクセスがあった場合には弱い電波、即ち遠くにいる機体を無視することによって負荷がかからないようにする。

DME設備では電波見通距離内の200-300nmほどの範囲に対して、0.5nm程度の精度で距離を測定できるが、航空機がDME局に近い場合は高度の影響があることを考慮しなければならない。たとえば航空機がDME局の真上にいる場合、DME計器が示す距離は0ではなくその航空機の高度ということになる。

DMEの距離情報から対地速度と地上局までの到達時間を導くことができる。

アンテナ諸元

電波型式 アンテナ型式
VXX スタックアレー

脚注

  1. ^ DMEとVORの地上局は2つが1つの施設に収容されていることが多く、図ではそういった共用局を示す。

出典

  1. ^ a b 日本航空技術協会編、『航空電子・電気設備』、社団法人日本航空技術協会、2008年3月31日第2版第2刷発行、ISBN 9784902151305

関連項目

外部リンク