画像誘導放射線治療

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画像誘導放射線治療英語: image-guided radiatiotherapy (IGRT))とは、2方向以上の二次元画像、三次元画像、または三次元患者体表面構造を利用して、治療計画時の基準位置からの患者位置変位量を三次元的に計測し位置補正することで、治療計画で決定した照射位置を可能な限り再現する照射技術である[1]

概要[編集]

強度変調放射線治療などの高精度放射線治療を体幹部腫瘍の治療に応用する場合には、呼吸性変動や周囲臓器の変化などによる腫瘍の位置移動に対する対策が大きな課題となる[2]。IGRTは高精度放射線治療を高い精度で行うもので、リアルタイムに得られた画像により、患者の呼吸状態・体動その他の位置変化を修正し的確な放射線照射を確保するものである[3]

IGRTの例としては、コーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)を治療計画時のコンピュータ断層撮影(computed tomography: CT)と照合することが挙げられる。また、IGRTには、キロボルト(kV)X線画像またはメガボルト(MV)X線画像を、治療計画時のCTから得られたデジタル再構成X線写真(digital reconstructed radiographs: DRR)と照合することも含まれる。これら2つの方法は、現在採用されているIGRTの大部分を占めている。

このプロセスは、放射線治療の計画プロセスにおいて、ターゲット(腫瘍)や臓器を特定するための画像利用とは異なっている。しかし、IGRTは患者の位置を特定するための基準座標として、計画から画像モダリティに直接依存しているため、画像処理プロセスの間には明らかに関連性がある。計画立案に使用される医用画像技術には、CT、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission Tomography)など様々なものがあるが、IGRTの精度は非常に高い。画像技術の進歩と、分子レベルでの人間の生物学的理解の進展により、IGRTが放射線治療に与える影響は進化し続けている。

脚注[編集]

  1. ^ 日本放射線腫瘍学会編 画像誘導放射線治療臨床施行のためのガイドライン2019(略称:IGRTガイドライン2019)http://www.jsmp.org/wp-content/uploads/igrt2019.pdf
  2. ^ がん・放射線療法2017 学研メディカル秀潤社; 改訂第7版 P11
  3. ^ 上紺屋 憲彦 放射線治療の進歩と展望 兵庫医科大学医学会雑誌 (0385-7638)44巻1号 Page15-19(2019.09)