コン氏
コン氏(ワイリー方式:'khon; 蔵文拼音:འཁོན་)とは、中央チベットツァン地方を根拠地とする氏族の一つ。コン氏が建設したサキャ寺はチベット仏教四大宗派の一つサキャ派を形成し、コン氏は代々サキャ派座主を輩出した。特に13世紀から14世紀にかけては、モンゴル帝国の後ろ盾を得たコン氏=サキャ教団が実質的にチベットを支配し、「サキャパ政権時代」と呼ばれる時代を築いたことで知られる。クン氏とも。
概要
チベット語史書『サキャ世系譜』の伝承によると、天界には三人の「光の神」がいて、そのうちの一人が地上に現れてコン氏の始祖になったという。実際にコン氏はチベットの中でも古い氏族の一つで、吐蕃のティソン・デツェン王の時期にコン氏のコン・ペルポチェが宮廷の大臣になったとされる[1]。
コン・ペルポチェの子孫であるコンチョク・ギェンポは、1073年にチベット南部のシガツェにあるポンボ山(dPon po ri)に寺院を設立し、サキャ派を創設した。以後、サキャ派座主の地位はコンチョク・ギェンポの子のサチェン・クンガ・ニンポ、その子のソナム・ツェモとジェツン・タクパ・ギェンツェンらに引き継がれ、クンガ・ニンポの孫のサキャ・パンディタの代にモンゴルの後ろ盾を得たことでコン氏=サキャ派は飛躍的な発展を遂げることになる。
世系
脚注
- ^ 今枝2005,73-74頁
参考文献
- 乙坂智子「サキャパの権力構造:チベットに対する元朝の支配力の評価をめぐって」『史峯』第3号、1989年
- 佐藤長/稲葉正就共訳『フゥラン・テプテル チベット年代記』法蔵館、1964年
- ロラン・デエ 『チベット史』 今枝由郎訳、春秋社、2005年