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エビングハウス錯視

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2つのオレンジ色の円は、全く同じ大きさである。しかし、左側のほうが小さく見えるだろう。

エビングハウス錯視(Ebbinghaus illusion)とは、相対的な大きさ知覚(size perception)に関連する錯視の一種である。この錯視のうち最もよく知られているのは、同じ大きさの円が2つあり、それぞれ大きな円か小さな円で囲まれている、というものである。前者の円は小さく見え、後者の円は大きく知覚される。

この錯視は、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスにちなんで命名された。

エビングハウス錯視は、知覚と行動(perception and action)のそれぞれに異なる処理経路が存在するかについて検討した近年の議論で、重要な役割を果たした(詳細は視覚野を参照)。エビングハウス錯視は大きさの知覚をゆがめるが、把握(grapsing)のような行動で被験者が応答した場合には、大きさのゆがみは生じなかったという(Goodale & Milner, 1992)。しかしながら、近年の研究(Franz et al., 2005)は、もとの実験に不備があったことを指摘している。もとの刺激は把握行動の誤差が生じにくいようになっていたため、把握による応答が精確になった可能性があった。また、周辺刺激の大きさが異なる2つの刺激をそれぞれ別々に提示していたために、参照刺激としてはたらくはずの2つめの中心円盤が存在せず、このことにより錯覚が生じなくなっていた可能性があった。Franz et al.は、行動系と知覚系はともにエビングハウス錯視を生じると結論している。

参考文献

  • V. H. Franz, F. Scharnowski and K. R. Gegenfurtner (2005). “Illusion effects on grasping are temporally constant not dynamic”. J Exp Psychol Hum Percept Perform 31 (6): 1359–1378. doi:10.1037/0096-1523.31.6.1359. http://www.allpsych.uni-giessen.de/karl/pdf/51.dynamo.pdf. 
  • M. A. Goodale & David Milner (January 1992). “Separate pathways for perception and action”. Trends in Neuroscience 15 (1): 20–25. doi:10.1016/0166-2236(92)90344-8. PMID 1374953.