黒船屋の女

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黒船屋の女』(くろふねやのおんな)は、栗本薫によるミステリ小説。

概要[編集]

竹久夢二の絵を思わせるような退廃的な雰囲気を漂わせる女性を巡って起こる殺人事件を題材としたミステリ。

オール讀物』1982年5月号から8月号に連載されたのち、同年12月10日に文藝春秋から単行本(ISBN 4-16-307220-9)として刊行された。のち、1985年11月25日に文春文庫版(ISBN 4-16-729006-5)が刊行されている。表紙には、単行本版、文春文庫版ともに竹久夢二の「黒船屋」の一部を使用している。

あらすじ[編集]

深夜の町を散歩していたイラストレーター寺島次郎は、明治の頃を思わせる古びた洋館での殺人事件に遭遇した。そこで彼は、画家として理想としていた竹久夢二の描く女のような、退廃的な雰囲気を漂わせる女性と出会った。それは、事件の被害者となった高名な画廊の主の内妻、北川紫乃であった。

たちまち彼女に強い興味を引かれた寺島は、彼女が生きてきた数奇な人生を知ることになる。それは、戦前から戦時中にかけての画壇を舞台とした生々しい愛憎劇そのものであった。やがて紫乃の周囲で再び事件が起こる。そしてその影から、過去の愛憎劇が再び浮かび上がってくる。

主要な登場人物[編集]

寺島次郎
イラストレーター。36歳独身。竹久夢二の絵のような女を追い求めていた。
北川紫乃
退廃的な雰囲気を漂わせる女性。千藤雄吉の内妻。
千藤雄吉
高名な画廊主。最初の殺人事件の被害者。
千藤晃
千藤雄吉の先妻の息子。
鷹取周生
夭折した画家。紫乃の最初の夫。
佐草公一郎
高名な美術評論家。