紅牙撥鏤尺

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紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく[1][2])は、象牙でつくられた尺(ものさし)であり、東京国立博物館が所蔵する法隆寺献納宝物のひとつである。国の重要文化財に指定されている。

資料の特徴[編集]

名前が示す通り、赤く染めた象牙でできており、撥鏤(撥ね彫り)の技法によって文様がつけられている。表面には宝相華と蓮の花に乗った鴛鴦(おしどり)が、裏面には草花の文様と鴛鴦が描かれている[1][2]

長さは約29.6cm、幅は約2.2cm、厚さは約0.8cmであり[1][2]、重量は88.6gである[3]。全体がやや湾曲しており、経年によるものとみられるが、製作当初から曲がっていたとする意見もある[3]

作者および年代[編集]

正倉院宝物に含まれる同種の資料(「関連する資料」の節を参照)と比較して素朴なつくりであることから、中国より輸入された品をもとに日本で製作されたと考えられる。加えて長さが中国の唐大尺の1尺にほぼ一致しており、この値は大宝律令(701年)によって国内でも使用されるようになったことから、奈良時代・8世紀のものと推定されている[1][2][3]。ただし、中国で唐の時代につくられたとする見解もある[3]

来歴[編集]

本尺はもとは法隆寺に伝来したもので、寺の伝承によれば、聖徳太子が仏像や袈裟を作ったときに用いたとされる[1]

1878(明治11)年に皇室に献納された一群の宝物のひとつであり、1882(明治15)年に、新たに開館した東京・上野の博物館(東京国立博物館の前身、1890(明治22)年に帝室博物館となる)に移された。戦後の1949(昭和24)年に所蔵が東京国立博物館となり、現在に至る(以上の記述は項目「法隆寺献納宝物」に基づく)。同館での管理番号(列品番号)はN-58である[1][2][3]

1957(昭和32)年6月18日付で重要文化財に指定された。種別は工芸品、指定番号は787である[4]

関連する資料[編集]

正倉院宝物には同名の資料が計6点含まれており、それぞれ「甲」[5]「乙」[6]「第1号」[7]「第2号」[8]「第3号」[9]「第4号」[10]と称されている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 紅牙撥鏤尺|ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システム”. 国立文化財機構. 2023年4月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e 紅牙撥鏤尺|e国宝:国立文化財機構所蔵 国宝・重要文化財”. 国立文化財機構. 2023年4月1日閲覧。
  3. ^ a b c d e 東京国立博物館 編『法隆寺献納宝物特別調査概報22 計量器』東京国立博物館、2002年、9-10頁。 
  4. ^ 紅牙撥鏤尺|国指定文化財等データベース”. 文化庁. 2023年4月1日閲覧。
  5. ^ 紅牙撥鏤尺 甲|正倉院宝物検索”. 宮内庁. 2023年4月1日閲覧。
  6. ^ 紅牙撥鏤尺 乙|正倉院宝物検索”. 宮内庁. 2023年4月1日閲覧。
  7. ^ 紅牙撥鏤尺 第1号|正倉院宝物検索”. 宮内庁. 2023年4月1日閲覧。
  8. ^ 紅牙撥鏤尺 第2号|正倉院宝物検索”. 宮内庁. 2023年4月1日閲覧。
  9. ^ 紅牙撥鏤尺 第3号|正倉院宝物検索”. 宮内庁. 2023年4月1日閲覧。
  10. ^ 紅牙撥鏤尺 第4号|正倉院宝物検索”. 宮内庁. 2023年4月1日閲覧。