生成 (数学)

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数学における生成(せいせい、generate)とは、与えられた対象と条件に対して、その条件を満たし与えられた対象を全て含むような最小の構成物を求めることである。生成に使われる与えられた対象のことを生成系という。また、ある種の生成された構成物はしばしば閉包(へいほう、closure)と呼ばれる(—閉包、—包のように接尾辞として用いられることもある)。生成系に対して、与えられた条件を満たすために必要十分な操作が知られているならば、生成とは、生成系にその操作を繰り返し行う手続きの極限であると理解される。生成系は特にそれが極小であるとき、しばしばあるいは基底とよばれる。

生成元を平易な言葉で言い直せば、それは「ある集合の中のモノが、複数の部品を組み合わせて作ることが出来るようなとき、そのために必要な最も小さな部品はなにか?」ということである。「現実世界」がモノの集合であるとしたら、その生成元は、ある時代までは分子だと考えられており、自然科学の研究が進むに連れて、原子、電子・陽子・中性子、そして今ではクォークであると考えられるようになった。現実世界の物理的物体はすべてそれを組み合わせることで作ることが出来る。

第二の例は、人の書く文章である。例えば英語は、アルファベットが大文字と小文字で26字ずつあり、これにスペース、「; : , . ! ? " '」など、おおよそ100個程度の記号を組み合わせれば全ての文章を組み立てることが出来る。「生成」という言葉にはこの「組み立て」の作業の意味が込められており、100個程度の文字のそれぞれが生成元である。日本語は、50個の平仮名、片仮名、句読点などの記号、そして漢字によって生成できる。

レゴブロックで巨大なオブジェを作成するときは、その生成元は一つ一つのブロックである。バケツいっぱいのブロックから 基底 のみがほしいならば、最低何個のブロックが必要だろうか。基底を得るためには、以下の操作をする。

  • まず、同じ形のブロックが2つ以上無いように選び出す。
  • 2つのブロックを組み合わせて作ることが出来るようなブロックは取り除く。(1x2x6/5 のブロックは 1x1x6/5 のブロック2つで作り出せる。)
  • そうすると、最後に残るのは、1x1x2/5 [単位:stud] のサイズのブロック一つである。

数学における生成は、これらの例から「ブロック」「文字」などの個別の要素を排し、操作を記号的操作に限定することで、 集合一般に適用できる性質を指し示している。

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  • 幾何学において、ある集合のいくつかの部分集合が与えられているとき、与えられた部分集合族を含む最小の開集合系を与えられた部分集合族を開基とする開集合系と言う。また、この開集合系を与えることにより与えられた集合を位相空間と見たとき、その位相空間の位相を与えられた部分集合族の生成する位相という。これは与えられた部分集合族に (i)空集合・全体集合を加えること (ii)有限個の共通部分をとること (iii)和集合をとること(無限個でもよい)という操作を繰り返し行うことにより得られる集合族を求める操作である。
  • 線型代数学において、いくつかのベクトルが与えられているとき、それらのベクトルを全て含む最小のベクトル空間を、与えられたベクトルが生成するベクトル空間という。これは、(i)与えられたベクトルたちの和をとる (ii)与えられたベクトルをスカラー倍する という二つの操作を繰り返し行うことにより得られる。
  • 代数学において、あるが与えられているとき、その代数拡大であってそれ自身代数閉体であるものを代数閉包(だいすうへいほう、algebraic closure)という
  • 幾何学においてある図形が与えられているとき、「その図形を含む」という条件を満たす最小の閉集合を、与えられた図形の閉包という。これは、与えられた図形を含む閉集合の全体からなる集合族に共通部分をとる(必ずしも有限個の集合の共通部分であることを課さない)という操作のみを条件として与えるとき、この閉集合族の生成する図形であると見ることもできる。
  • 幾何学においてある図形が与えられているとき、その図形を含む最小の凸集合凸包(とつほう、convex hull)という。これも閉包と同様に、その図形を含む全ての凸集合に対して共通部分をとる操作で得られる図形とみることができる。