後方支援連隊

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後方支援連隊(こうほうしえんれんたい)は、陸上自衛隊の各師団に置かれた師団に直隷する諸職種混成後方支援部隊で、第1から第4、第6から第10後方支援連隊が、各旅団については、同様の編制を小型化した第5、第11から第15の後方支援隊(こうほうしえんたい)が編成されている。1等陸佐が指揮を執る。

概要[編集]

師団各部隊に対する兵站及び衛生・輸送支援を任務としている。連隊の編制は連隊本部・本部付隊・第1整備大隊・第2整備大隊・補給隊輸送隊衛生隊からなる。各師団・旅団に1個しかないことから、部隊名には師団・旅団番号を冠称している。

かつては、各師団の後方支援職種部隊(武器隊、補給隊、輸送隊、衛生隊)は師団の直轄部隊としてそれぞれ編成されていたが、それら各部隊を統合して1981年(昭和56年)3月の第7後方支援連隊の新編を最初に逐次編成された。1996年(平成8年)3月に武器隊は武器大隊へ、さらに現在は、第1整備大隊・第2整備大隊へと改編されている[注釈 1]

部隊の一覧[編集]

後方支援連隊
後方支援隊

後方支援連隊の編制[編集]

  • 後方支援連隊本部
  • 後方支援連隊本部付隊
    • 付隊本部
    • 連隊本部勤務班
    • 通信小隊
  • 第1整備大隊[注釈 2]
    • 第1整備大隊本部
    • 第1整備大隊本部付隊
      • 大隊本部勤務班
      • 通信班
    • 火器車両整備中隊
    • 施設整備隊
    • 通信電子整備隊
      • 工作回収小隊(第7後方支援連隊は隊編成。)
  • 第2整備大隊
    • 第2整備大隊本部
    • 第2整備大隊本部付隊
      • 大隊本部勤務班
      • 通信班
    • 即応機動直接支援中隊(第2、第6および第8後方支援連隊のみ。)
    • 第1~3普通科直接支援中隊(第7後方支援連隊は1個中隊編成。)[注釈 3]
    • 戦車直接支援中隊(一部は小規模の隊編成、第7後方支援連隊は3個中隊編成。)[注釈 4]
    • 特科直接支援中隊(一部は小規模の隊編成。)[注釈 5]
    • 高射直接支援隊(第7後方支援連隊は中隊編成。)
    • 偵察戦闘直接支援隊(偵察戦闘大隊に対応する第1、第3、第4後方支援連隊のみ。)
    • 偵察直接支援小隊(第7後方支援連隊は中隊規模の隊編成。)
    • 対舟艇対戦車直接支援隊(第2・第8後方支援連隊のみ。)[注釈 6]
  • 補給隊
    • 補給隊本部
    • 補給隊本部付隊
    • 補給小隊(補給物品の管理)
    • 業務小隊(補給物品の整備等担当)
  • 輸送隊
    • 輸送隊本部
    • 第1~3輸送小隊(トレーラー小隊や人員輸送小隊等が編制)
    • 自動車教習所(人員は小隊規模)
  • 衛生隊
    • 衛生隊本部
    • 衛生隊本部付隊
    • 治療中隊(一部の部隊は隊編成)
    • 救急車小隊

後方支援隊の編制[編集]

師団から旅団化に伴い人員規模が減少した経緯から、後方支援部隊も小型化され、師団後方支援連隊と違い限定的な支援に留まる。直接支援部隊に割り振られる人員が小隊規模となる点から各種整備業務は原則として高段階整備のみを担当している。第15後方支援隊は、整備中隊が1個のみ。水陸機動団後方支援大隊も衛生中隊を除き、旅団後方支援隊とほぼ同等の編成を取る。

  • 後方支援隊本部
  • 後方支援隊本部付隊
    • 付隊本部
    • 隊本部勤務班
    • 通信小隊
  • 即応機動直接支援中隊(第5、第11および第14後方支援隊のみ)
  • 第1整備中隊
  • 第2整備中隊
    • 中隊本部
    • 第1~3普通科直接支援小隊[注釈 10]
    • 戦車直接支援小隊[注釈 11]
    • 特科直接支援小隊
    • 高射直接支援小隊
    • 偵察直接支援小隊
    • 偵察戦闘直接支援隊(偵察戦闘大隊に対応する第12後方支援隊のみ。)
  • 補給中隊[注釈 12]
    • 中隊本部班
    • 補給小隊(補給物品の管理)
    • 業務小隊(補給物品の整備等担当)
  • 輸送隊
    • 隊本部班
    • 2個輸送小隊(トレーラー小隊及び輸送小隊等が編制)
    • 自動車教習所(人員は班規模で構成)
  • 衛生隊[注釈 13]
    • 隊本部班
    • 治療小隊
    • 救急車小隊

部隊の解説[編集]

後方支援連隊本部付隊[編集]

連隊本部の支援、連隊の通信に関する業務を担任する。

整備大隊[編集]

整備大隊は、師団の各部隊における装備品・機器の回収や整備等を行う。各整備大隊は2等陸佐が指揮を執る。第1整備大隊は、航空関係を除く師団全般整備支援を実施し、第2整備大隊への増援を行う。第2整備大隊は戦闘部隊等(普通科部隊・特科部隊・高射特科部隊・戦車部隊・偵察部隊)に対する直接整備支援を行う。即応機動直接支援中隊は即応機動連隊への整備支援を行う。普通科・戦車・特科部隊への直接支援部隊は中隊規模、偵察部隊は偵察戦闘大隊へは中隊規模、偵察隊へは小隊規模の直接支援隊が編成されている。旅団後方支援隊は、師団後方支援連隊より小規模であり、各整備大隊は整備中隊となり、直接支援部隊は小隊規模となっている。

第1整備大隊 主要装備品
  • 重装輪回収車
  • 化学重整備車
  • 火砲修理車
  • 施設工作車
  • 通信修理車
  • 重レッカ 等
第2整備大隊 主要装備品
  • 戦車回収車・装軌車回収車
  • 装輪装甲車
  • 重レッカ
  • 短SAM器材整備車
  • 火砲修理車
  • 武器電子修理車 等

補給隊[編集]

水、燃料、糧食の補給等を担当している。洗濯や入浴支援も任務としている[1]

輸送隊[編集]

人員、装備、補給品の輸送等を行う。

衛生隊[編集]

健康管理の支援、傷病者の治療や後方への輸送、衛生関連物資の補給等を行う。

編制の変遷[編集]

後方支援連隊の変遷[編集]

後方支援連隊 編成前
  • 師団司令部
    • 武器隊
    • 補給隊
    • 輸送隊
    • 衛生隊
後方支援連隊 編成後
  • 師団司令部
    • 後方支援連隊
      • 武器隊(後に武器大隊)
      • 補給隊
      • 輸送隊
      • 衛生隊
整備大隊 改編後
  • 師団司令部
    • 後方支援連隊
      • 第1整備大隊
      • 第2整備大隊
      • 補給隊
      • 輸送隊
      • 衛生隊

武器大隊時の編制[編集]

後方支援連隊の武器大隊は、後に2個整備大隊へと改編され、全て廃止されている。武器大隊の2個整備大隊への改編時は、第1中隊を母体として第1整備大隊が新編[注釈 14]、第2中隊の通信機材の整備を担任する小隊が通信大隊整備小隊と統合し通信電子整備隊に増強改編、施設機材の高段階整備を担当していた施設野整備班が施設大隊の整備小隊と統合し施設整備隊として増強改編しそれぞれ第1整備大隊に編入となるなど、機能がコンパクトにまとめられ、かつ増強された編制になっている。

  • 武器大隊
    • 武器大隊本部
    • 武器大隊本部付隊
    • 第1中隊(火器・誘導武器・通信・施設機材等のC整備)
    • 第2中隊(車両整備、回収、師団直轄部隊の直接支援)

廃止された部隊[編集]

  • 第13後方支援連隊(海田市駐屯地):1999年(平成11年)3月28日:第13師団の旅団改編に伴い第13後方支援隊に縮小改編のため廃止。
  • 第12後方支援連隊(相馬原駐屯地):2001年(平成13年)3月26日:第12師団の旅団改編に伴い第12後方支援隊に縮小改編のため廃止。
  • 第5後方支援連隊(帯広駐屯地):2004年(平成16年)3月28日:第5師団の旅団改編に伴い第5後方支援隊に縮小改編のため廃止。
  • 第11後方支援連隊(真駒内駐屯地):2008年(平成20年)3月25日:第11師団の旅団改編に伴い第11後方支援隊に縮小改編のため廃止。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 第1整備大隊は師団直轄部隊の支援、第2整備大隊を各師団隷下部隊の整備小隊を統合し増強改編している
  2. ^ 方面直轄に不発弾処理部隊を持たない部隊で師団隷下担当区域にて不発弾処理を行う場合、第1整備大隊火器車両整備中隊および工作回収小隊が不発弾回収の任に就く。方面後方支援隊が担当する場合、当該地域の担当全般支援大隊がその任を受ける
  3. ^ 車両整備小隊と火器整備班、通信電子整備班、誘導武器整備班等を隷下。
  4. ^ 車両整備小隊(装輪整備班と装軌車整備班含む、部隊によっては装輪整備と装軌整備を小隊規模に分割)、火器整備班及び通信電子整備班等を隷下
  5. ^ 車両整備小隊(装輪整備班と装軌車整備班含む、部隊によっては装輪整備と装軌整備を小隊規模に分割)、火器整備班、通信電子整備班を隷下)
  6. ^ 第2後方支援連隊は小隊編成、第8後方支援連隊は300番台を冠する小規模の隊編成。これは平時師団隷属の被支援部隊が有事の際、方面隊直轄に戻る運用を受けるため。
  7. ^ 小隊本部の他には人員約30名の車両整備班と数名の火器整備班で編成、原則として師団隷下の後方支援連隊と違い人員規模も限定されていることから高段階整備のみを担当する。オイル交換など小規模の車両整備やタイヤ交換など特別な技術を必要としない整備作業等は武器大隊時代と同様に車両の所属部隊が人員を差し出して担当する
  8. ^ 師団編成と比べ人員規模が劣ることから作業内容は高段階整備のみ対応する
  9. ^ 師団編成と比べ人員規模が劣ることから、原則として高段階整備のみを担当する
  10. ^ 原則として各駐屯地に分派されることから、小隊本部には通常置かれない車両や火器の事務作業担当者が常駐。整備も少人数で多数の車両を整備することから、原則として高段階整備のみを担当し軽微な車両整備やタイヤ交換などは車両の所属部隊から人員の派遣を受けての作業となる
  11. ^ 原則として高段階整備を主に担当し、軽微な作業等は車両の所属部隊が担当
  12. ^ 師団部隊においては隊本部が本部付隊であったが、旅団部隊においては班編制となり中隊編成に縮小となっている
  13. ^ 師団部隊においては隷下の治療隊も30名の隊編成に対して旅団隷下は20名の小隊規模となることから、全体的に中隊規模に縮小となっている
  14. ^ 第1中隊の火器整備小隊と2中隊の車両整備小隊および直接支援小隊が統合して火器車両整備中隊に増強改編、回収班が工作回収小隊として独立

出典[編集]

  1. ^ 補給隊”. 陸上自衛隊第6師団. 2020年12月20日閲覧。

関連項目[編集]